保護?色変え? 目的で選ぶPPF/ラッピング

PPF・ラッピング

これまで“カーディテイリング”ではコーティングとカーフィルムの2メニューが中心でしたが、 近年ではボディ外装に施工するサービスとして「ペイントプロテクションフィルム (PPF)」「カーラッピング」の2つが広がりつつあります。 どちらもボディ外装にフィルムを貼り付けるサービスですが、何を目的とするかでマッチするサービスは変わってきます。 

保護目的ならPPF 

走行時の飛び石といった外的損傷からボディ塗装を保護するために誕生したのが「ペイントプロテクションフィルム(PPF)」です。

元々は競技車両やスーパーカーなど一部のクルマの保護アイテムとして活用されていましたが、近年、PPF先進国アメリカのリーディングブランド「XPEL(エクスペル)」を中心に、様々なメーカーがPPF事業に参入。製品も進化・多様化し、急速に普及しつつあります。国内でも施工するショップは増え始めており、スーパーカーに限らず施工するクルマも幅広く広がりつつあります。

PPFは、特殊なポリウレタン(PU)素材をベースとした製品が多く、現在の主流は150μm程度のクリア(透明)なタイプ。
一般的に、普通車の塗装(クリア塗装含む)が150μm程度、ガラスコーティングの被膜が~1μmの水準ということからも、PPFの高い堅牢性が伝わるでしょう。飛び石や生活傷などから守ることで、見た目の美しさを保つだけでなくリセールバリューの維持も期待できます。

近年は、技術進化や各社の開発競争が加速し、単なる飛び石や洗車傷、擦り傷からのボディ保護に加え、自己修復機能(熱を加えることで微細な傷を修復する)を有したり、UVによる黄変防止性能を改善して耐久性を高める、100μm程度の薄型タイプでコストを抑えるなど、メーカーごとの独自の工夫が施された製品がリリースされています。

また、見た目の面では、クリアのほか、クルマのイメージを一新するマット(光沢なし)タイプも広く流通しています。さらにアメリカの「STEK(エステック)」や「FlexiShield(フレックスシールド)」ではカラー・柄付きPPFも展開中。ラッピング程バリエーションは多くないものの、装飾性という後に説明するカーラッピングの要素を持ち合わせており、日本でも徐々に広がり始めています。

一方で、PPFは最先端の技術製品のため材料フィルムが高価で、また施工にも専門の高い技術力を要するため、カーコーティングと比べて施工費用の相場が高いのが現状です。元々スーパーカーなどハイエンド市場で普及が始まったサービスのため、1台フル施工で100万円を超えることも珍しくありません。

また、基本的にPPFは「ボディの保護」を最優先に開発された製品サービスです。製品によっては表面の光沢性が優れていたり、技術力の優れた施工者によっては「フィルムが貼ってあることが分からないレベル」に仕上げてくれるお店もありますが、例えばスマホ表面の保護フィルムなどと同様、「貼った後の見た目を美しくするアイテムではない」ことは認識しておきましょう。

ファッション性求めるならラッピング 

他方、同じボディに貼り付けるフィルムでも、車両の装飾を1番の目的としたのが「カーラッピング」です。元々は企業の宣伝用にトラックやバスなどの商用車を装飾したフリートマーキングがルーツで、高いデザイン性と剥がせるという利便性を持ち合わせているのが特徴です。

PPFとはベース素材が異なり、ポリ塩化ビニル(PVC)が使われています。元々素材として印刷適正に優れ、多彩なデザイン表現に用いられているPVC。そのフィルムの技術進化も目覚ましく、近年は3次曲面が複雑なボディに施工できる伸縮性・接着性と高いデザイン性を両立。その結果、トラックやバスといった商用車の平面ボディにとどまらず、自家用車のカラーチェンジを目的に個人ユーザーが施すカーラッピングが広まりつつあります。

アメリカ大手の3M社製品のほか、各国各メーカーの様々な製品が展開されていますが、デザイン性も年々多彩になってきています。

パッと見では塗装と見間違うレベルのグロス(光沢あり)、クルマのイメージを一新するマット(光沢なし)それぞれで豊富なカラーバリエーションがあるほか、カーボン柄や金属・メッキ調、レザー調などテクスチャの種類も年々豊富に。
ラッピングだからこそ表現できるカラー・柄も少なくなく、車両全面のフル施工のほか、ワンポイントアクセントとして部分施工するケースも増えてきています。

一方で、未施工の状態と比べると一定の塗装面の保護能力はあるものの、PPFと比較するとフィルムが薄く「あくまで装飾するためのアイテム」と捉えておきましょう。
紫外線や経年による劣化にも注意が必要で、例えば年単位で屋外保管したラッピング施工車では、フィルムの剥離が難しくなったり、場合によっては塗膜ごと剥がれてしまうといったリスクも。

また、プロ用の高品質な製品からDIY用の廉価品、海外製造の粗悪品まで、PPF以上に製品バリエーションも豊富。これはPPFも同様ですが、ラッピングにおいても、施工の技術はもとよりフィルム特性について確かな知識、実績を持ったプロに相談するのがオススメです。

希望叶える組み合わせ 

PPFもラッピングも、愛車を守る、彩る上でとても魅力的なアイテムですが、カーオーナーにとってネックとなるのが高い施工費用です。使用するフィルムやボディサイズ、施工ショップなどによっても異なりますが、現在、国内では1台ボディフルセットで100万円を超えるケースも珍しくなく、現状ではスーパーカーや高級車がメインの施工車両となっています。

では、「一般クラスのカーオーナーには関係ないのか」というと、そんなことはありません。必要な部分に必要な量だけフィルムを貼り付け、価格を抑えながらPPF、ラッピングの魅力を堪能できる部分施工というサービスが広がっています。

例えばPPFでは、飛び石の影響を受けやすいフロント周り(バンパーやボンネット、フェンダー、ドアミラー)、紫外線劣化も激しいヘッドライト、生活傷が多いドアカップ、ドアエッジ、トランクエッジなど、むしろ1台フル施工よりもパーツを限定した部分施工が多いのが実情です。最近では、こうした部分施工を中心に、新車ディーラーのオプションとして設定しているケースも徐々に出てきています。

またラッピングでも、クルマのイメージを大きく左右するボンネットやルーフなどに部分施工することで、価格を抑えながら外観の印象を一新することができるでしょう。特にカーボン柄やマットカラーなどはアクセントとしての引きが強く人気です。

どちらも注意したいのが、面積と施工価格は単純に比例しないということです。フィルム施工は平面ほど作業が単調で、曲面が複雑な程、難易度が高くなります。そのため、PPFにしてもラッピングにしても、ドアミラーやヘッドライトなど複雑な形状は、ボンネットなど単調なパーツに比べて面積比あたりの施工費用は高くなりがちです。

そして近年では、PPF、カーラッピングの施工と同時にコーティングを組み合わせるケースも増えています。

コーティングとの組み合わせ例

  1. PPF・ラッピングを施工していない部分をカバーする
    フル施工に比べて費用を抑えながら、クルマ1台の保護、美観維持を図る 
  2. PPF・ラッピングフィルムの上に施工する
    PPFと相性が良かったり、ラッピングフィルムに適合するコーティング剤も出てきているので、「愛車をどうしたいか」といった希望や予算に応じて相談するのが良いでしょう。  

CARDE編集部

90年代前半から東京都下でショップを営むプロディテイラーと元業界紙記者のコンビ。“現場のリアルな視点”と“客観的な情報編集力”でカーユーザー第一の情報をお届...

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