耐候性は2〜3倍? 暑さ増す日本でこそ期待のカラーPPF…米QUAD FILMが日本上陸

PPF・ラッピング

業界でも有数の熟練カーラッピング施工店P.G.D(静岡県島田市)の大塚真代表は10月、新たにアメリカのフィルムブランド「QUAD FILM(クアッドフィルム)」のカラーPPFなどを輸入販売する「QUAD FILM JAPAN(愛知県豊橋市)」を設立。3、4日には、プロ施工者を対象としたワークショップを本社トレーニングセンター(運営:アクセスエボリューション)で開催しました。

大塚代表は、カーラッピングの黎明期から20年以上にわたりカスタムやモータースポーツのシーンでラッピングを提供してきた業界第一人者の1人。豊富な実績とともに高いクオリティの施工法を確立し、同社が販売する独自の施工補助液は、今では多くのラッピング施工者に愛用されています。
それゆえに大塚代表は、すでに多くのペイントプロテクションフィルム(PPF)ブランドからカラーPPFが発売されている中、「ラッピングと同じクオリティで仕上げきれない」という点で、取り扱いには慎重な姿勢を見せてきました。その大塚代表が、中国・武漢にある製造工場まで視察し、「このフィルムならしっかり扱える」と判断したQUAD FILM。そのカラーフィルムとしての高い潜在可能性を教えてもらいました。

  • 豊橋市の本社兼トレーニングセンター

4年経ってもキレイ? 良いことずくめな高機能カラーPPF 

QUAD FILMは、アメリカ・ラスベガスにある老舗のフィルムメーカー。現在はアメリカのほか中国・武漢にも製造拠点を構え、資本統合が進んだ現在のQUAD FILMは、フィルム先進国の実績・信頼と、成長著しい中国の資本・技術のハイブリッド的なブランドとなっています。

各種ペイントプロテクションフィルム(PPF)から高機能ウインドウフィルムまで幅広いフィルムを製造するQUAD FILM。日本総代理店のQUAD FILM JAPANでは、特にカラーPPFを主力商品の1つとして販売します。

  • QUAD FILMのカラーPPF

カラーPPFは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)を基材とした厚み約200μmのカラーフィルム。グロス、マット、メタリックなどそのカラーラインナップは103色と多彩。また、同じカラーチェンジ用フィルムである「塩化ビニル(PVC)素材のラッピングフィルム」と比べ、主に以下の3点で機能的に優れています。

  • 塗装面の保護能力
  • 優れた見た目の質感
  • 高い耐候性

厚みと柔軟性のあるTPUが塗装面を飛び石などから守る、肉厚なフィルムが特にグロス系カラーで美しい光沢を放つなど、塗装保護と優れた質感ももちろん嬉しい機能。ただ、特に注目されるのが「耐候性」で、メーカーの研究や実例によると、PVCフィルム比で2〜3倍の耐候性を誇るそうです。

大塚代表は、「紫外線や熱による褪色・劣化はカーラッピングの弱点の1つ。温暖化の進行のせいもあってか、高温多湿な日本では近年それが顕著になってきており、今夏は例年以上に劣化による相談・トラブルが多かった。最近では1年で著しく劣化するケースもあり、屋外保管のカーオーナーにはラッピング施工を推奨しないという専門店も少なくない」とカーラッピングの耐候性について言及。
その上でQUADのカラーPPFについて、「視察した中国の工場では、ラボでの試験に加えて実際のパネルを使った実地テストでも検証しており、塩化ビニル(PVC)素材に加えて2倍の耐候性と説明された。実際、屋外保管の車両のルーフに貼って4年を経たカラーPPFを見たが、多少の劣化こそあるものの美観的にはとても良好な状態。環境にもよるが、PVC比で実質2〜3倍程の長期耐候性は期待できるのでは」と、新素材の優れた機能性に高い期待を示します。

QUADならではの魅力 施工性と価格

前述したQUAD・カラーPPFの特徴は、自社製造による品質の高さやカラーラインナップの豊富さを除くと、他ブランド製品でも同様の「カラーPPF全般の傾向」でもあります。
その中で大塚代表は、主に以下の点でQUAD FILMのフィルムを高く評価しています。

  • ドライ貼りの優れた施工性
  • 材料価格の安さ
  • ドライ貼りのカラーPPF

特に大塚代表が国内での輸入販売の決め手となったのが「施工性」です。
これまでも一部メーカーからカラーPPFは販売されていましたが、大塚代表の求める仕上がり水準で貼ることが難しいとの判断で、積極的に扱ってこなかったそう。フィルム自体はキレイな艶感でも、貼る段階で艶が退けたり、ラインが浮き出てたり、パネル端の収まりが悪かったり(またはそれらが生じる可能性が高い)など、「フィルムがキレイ」なのと「それをキレイに貼れる」かは別問題であるといいます。

また、カラーPPFの多くは水・施工液を使って貼るウェット施工型が主流。大塚代表を含めたドライ貼りがメインのラッピング施工者では、設備環境・技術的に親和性が低かったというのも理由の1つにあります。

それに対し、QUAD・カラーPPFの潜在能力の高さを如実に体現したのが、業界内で評判の高い神奈川県の施工専門店「EXCEED(エクシード)」新谷公平代表が手掛けた1台。艶やかなメタリックブルーを纏った日産・フェアレディZ(RZ34)は、新素材の検証も兼ねたテスト施工ながら、ボディの面もパネルの際も丁寧に処理され、キレイなフィルムのポテンシャルをいかんなく発揮した美しいフォルムに仕上がっています。

  • 新谷氏が手掛けたフェアレディZ

大塚代表がQUAD FILMの輸入販売を最終決断したのも、この1台を目にした時。「細部を含めこの品質水準で仕上げられるフィルムであれば、これまでのラッピングに代わる材料になる」とその可能性を見出し、数々のカラーPPFの施工経験を持ち実際に施工した新谷氏も「フィルム単体ではなく貼って仕上げることまでも踏まえると、カラーPPFの中でも非常に扱いやすくポテンシャルの高いフィルム」と評価します。

また大塚代表は、国内で販売するに当たり専用の施工補助液もリリース。フィルムの粘着力はそのままに、貼り付け位置を決める際の初期粘着のみを大幅に減衰し、位置決めの際に生じやすいトラブルを防ぐ資材で、同氏は元々ラッピング用を販売していたものの、QUAD・カラーPPFに適合させた新ツールとしてゼロから開発しました。
大塚氏は「まだまだ素材も施工法も研究途上のアイテム。剥離を抑える巻き込みの処理、細かい窓モール部分への落とし込み方、ドア内張でのPVCとの併用など、細部までクオリティを求められる日本国内での施工法を今後も独自に追求していくとともに、多くのプロ施工者に共有していきたい」と、フィルムや施工液といったツールに限らず、日本市場に合わせた施工技術とセットで展開していく方針です。

  • 施工補助液を新規開発

そして、カーオーナー視点で最も嬉しいのが、上記の機能性を備えたQUAD FILMのフィルムが価格競争力の面でも優れている点です。

従来のカラーPPFはPVCフィルムに比べて格段に高く、メーカー・商品により異なるものの、メートル単価でPVCフィルムの3倍以上といった商品も珍しくありません。いくら2〜3倍長持ちするといっても、施工価格も2〜3倍では消費者視点では厳しいところ。
一方でQUADのカラーPPFは、PVCフィルムの相場水準に近い材料価格。PVCフィルムのラッピング施工とは工程が異なるので、ラッピング施工よりは高価になる見込みですが、プロ向けワークショップでは「ラッピングを1とした時に、保護目的でラッピングの上にPPFを貼って約2倍の価格で施工する時があるが、カラーTPUでは1回の施工・1.5の価格で十分に提供できる」と、1つの施工価格の参考例が示されました。
あくまで施工メニュー・価格は施工ショップ次第になりますが、カーオーナーとしては「価格が1.5倍だけど2〜3倍長持ちでキレイなフィルム」という1つの選択肢が現実味を帯びてきた状況です。

フリート広告やレーシングカーへの展開も…TPU型インクジェット

一般カーオーナーにはあまり馴染みがありませんが、カーラッピングの主要市場の1つが広告などのインクジェット印刷を貼り付けるフリートマーキング。QUAD FILMでは、カラーPPFに加えて同じくTPU素材のインクジェット対応フィルムもラインナップしています。

  • QUADのTPUインクジェットメディア

カラーチェンジ同様にインクジェットフィルムも、従来は塩化ビニル(PVC)が主流。むしろカラーチェンジではカラーPPFが徐々に台頭してきていることを踏まえると、現時点でTPU型のインクジェットフィルムはカラーPPF以上に珍しい存在で、まだ世界的にも流通がごく限られた商品です。
このTPUインクジェットフィルムは、従来のフィルムと同様にプリンターで任意のデザインを出力でき、その仕上がりはPVCよりも艶やか。カラーPPF同様に耐候性にも優れているため、企業のフリートマーキングや痛車などのカスタム市場での活用が見込まれます。

またレーシングカーでも、昨今は「デザイン印刷したラッピングフィルム」の上に「クリアPPF」を貼る二重施工が一般的とのこと。施工の時間・価格という利点もさることながら、レーシングカーではフィルムの重量増が一重分で済む軽量効果も大きな恩恵として、今後モータースポーツシーンへの提案を進めていくそうです。

カラーチェンジにしてもインクジェット印刷にしても、カーラッピング用フィルムとしてとても高い機能性を誇るTPUフィルム。これまでは「素材としては存在するけど、価格や施工性の面で実用的ではなく、まだまだ普及は限定的」という実情があります。

その中で今回上陸した「QUAD FILMのカラーPPF」はその2つのハードルを大きく下げ、多くのプロ施工者にとって「実用的に使えるカラーPPF」を提案しています。実際、中国を視察して「耐候性をはじめとした機能面でも、製造時の環境負荷の面でもTPUに軍配があり、市場が先行する中国では個人のカラーチェンジでも企業のフリートでも、TPUの普及が進んでいる印象。将来的にTPUフィルムしか製造しないメーカーも出てくるのでは」と感想を漏らす大塚氏。
日本では、一定の長い歴史があるゆえにラッピング施工がまだまだ主流ですが、まずはメリット豊富なカラーPPFが選べる施工専門店が増えることに期待したいところです。

CARDE編集部

90年代前半から東京都下でショップを営むプロディテイラーと元業界紙記者のコンビ。“現場のリアルな視点”と“客観的な情報編集力”でカーユーザー第一の情報をお届...

プロフィール

関連記事一覧