カラーPPFの講習を初開催…日本カーラッピング協会
ラッピングやペイントプロテクションフィルム(PPF)の施工事業者で構成される日本カーラッピング協会(苅谷伊会長、略称:JCWA)が12月13日、初めて「カラーPPF講習会」を東京の施工ショップLAPPS(墨田区、ラップス)で開催しました。
同協会では、カラーPPFが世界的に拡大の機運が高まっているのを受けて今年6月、それまでのラッピング/PPF/WPFの3部門に加えて「カラーPPF部会」を新設(P-Factory井上徳広代表が部会長に就任)。今年9月に開催したラッピングの技能大会「World Wrap Masters JAPAN2024」では、世界に先駆けて競技種目にカラーPPFを採用するなど、カラーPPFの施工者育成・技術向上への取り組みを強化しています。
今回の講習もその一環で、同協会では従来から事業者を対象とした講習会を継続的に実施。初開催となったカラーPPF講習では、未経験者からラッピング、PPF施工の熟練者まで幅広いプロが集まり、全6メーカーのカラーPPFを教材に実践的な施工ノウハウが指南されました。
特色あるフィルムが続々登場
カラーPPFは、カラー装飾と塗装保護を一度に実現できるTPU(熱可塑性ポリウレタン)素材のフィルムです。従来、クルマのボディを装飾する際はPVC(塩化ビニル)素材のラッピングフィルムが主流。カラーPPFはそのラッピングフィルムに比べて弾力・厚みがあり、飛び石などからの保護力、耐候性や見た目の質感などに優れているとされ、次世代の自動車用カラーフィルムとして注目を集めています。
井上部会長によると、「今年11月に米ラスベガスで開催された『SEMAショー(世界最大級の自動車用品の展示会)』でも数多くのフィルムメーカーがカラーPPFを展示していた。2年前ごろから徐々に展示数が増え、今年はアメリカやアジアのメーカー・ブランドを中心に一段と展示数が増えている印象だった」といい、カラーPPFはカーケアの領域で世界的なトレンドの1つとなっているそうです。
カラーPPFのメーカー・商品数が増えてきた中で、協会・講習会でも今回は以下の6メーカーが協賛。メーカーによるデモ実演やサンプルを自由に触れる時間を通じ、各フィルムの特性や施工のポイントがプロ施工者に伝えられました。
- 協賛メーカー
- NKODA(ナコダ/中国)
- TECKWRAP(テックラップ/アメリカ)
- RWF(中国)
- 3M(スリーエム/アメリカ、※日本未発売)
- FlexiShield(フレックスシールド/アメリカ)
- LEGEND(レジェンド/アメリカ)
同じ「カラーPPF」のカテゴリーの中でも、着色方法や接着層の構造がそれぞれ異なり、それに応じて施工方法や見た目の質感、価格などにも差があります。今回の6メーカーの中でも、施工方法がドライ/ウェット施工/兼用と3タイプに別れていたほか、例えば「グロスカーボン」や「マットブラック」といった同じカラーでも色合い・質感が微妙に異なるなど、商品数の拡大とともに様々な特性・特色が出始めてきています。
井上部会長は「ラッピング(ドライ)、PPF(ウェット)それぞれの施工者の技術・設備環境に応じてフィルムを選べる。また細かな形状や作業時間優先だったらドライ型、大きくて平たい面や仕上がりの質感優先だったらウェット型といった使い分けもでき、施工者にとってより扱いやすくなってきている」と、商品供給が市場拡大への後押し材料になっていると捉えています。
優れた耐候性はカラーPPF共通
メーカー・商品ごとに特性差が出てきたカラーPPFですが、TPUが基材なのは共通です。メーカー差はあるものの、全般的にラッピングフィルム(PVC)よりも耐候性に優れているとされているのは、カーオーナーにとって大きなメリットの1つでしょう。
実際、ラッピングフィルムでは耐久性の短さが施工を阻む要因の1つとなっており、施工ショップによっては「屋外駐車のカーオーナーに対しては1年程で劣化するから推奨しない、施工をしない」といった声も。一方で今回の講習受講者からは、「2年前にラッピング施工を希望する顧客に、テストを兼ねてフレックスシールドのカラーPPFを提案した。貼って2年経つけどキレイな状態を維持している」といった声も聞かれました。
また、今回フィルム協賛したNKODAでは、同社含む本国のNALINVグループが24年11月、航空宇宙技術を開発する上海大学発のベンチャー企業と共同で、大型航空機用フィルムの研究・開発・製造を行う新企業を設立。航空産業の低炭素・持続的な発展を目指す取り組みで、クルマが走行する地上とは比べ物にならない過酷な環境においても、その素材技術が活用される程に、TPU素材の耐候性・耐久性は注目されています。
プロもまさに技術研鑽真っ只中!
フィルム素材として魅力あるカラーPPFですが、現在のところは今回の講習会のようにプロ施工者が施工方法を模索・習得している最中。今後日本でカーオーナーに広まっていくかどうかは、この取り扱う施工者が増えるかが1つの鍵となりそうです。
今回の講習では、「カラーPPFはモノを見たことあるだけで施工したことはなかった」「パーツの角や端の処理をどのようにするのが正しいのかを見に来た」と、すでにラッピングやPPFを施工しているショップ・施工者が多く参加。メーカーによる施工実演のほか、井上部会長をはじめとした実績豊富なプロ施工者が講師を務め、貼る面の下地処理、フィルムの伸ばし方や熱のかけ方、施工液の分量や使い方、室温・湿度といった施工環境など、細かな施工ノウハウが指南されました。
講習会終盤には、NKODAカラーPPFの実演を担当した川崎市の施工ショップEXCEED(エクシード)のデモカーも披露。熟練の施工者・新谷公平氏を筆頭とするEXCEEDの施工チームが、フィルム材料のテストも兼ねながら施工したそうで、艶感に優れるNKODA・カラーPPFをツートーンデザインでボディ全体にまとった一台。そのキレイな仕上がりの裏には、フィルムの柔軟性・粘着性と各パーツの形状などを熟慮した上での細かい貼り・カットの技術が詰め込まれていて、受講者はそれらを入念にチェックし、参考としていました。
カラーPPFはフィルム自体が新しく、プロでもその貼り方をまだ模索中の部分が少なくありません。そもそも透明なPPFと異なり、ボディ塗装面を完全に覆い尽くさなければ仕上がりが不自然になってしまう(元の塗装色が見えてしまう)ため、透明PPFよりも施工の手間・時間がかかり、フィルム自体もラッピングフィルムや透明PPFよりも高価な傾向。そのため、すでにカラーPPFの施工を手掛けるショップでもカーラッピングの1.5倍程の施工価格の設定が多いのが実情です。
今回の講習受講者の中にも、「すぐにカラーPPFがラッピングに置き換わるかもという懸念があったが、受講して改めてフィルム特性や施工法、価格などを考えると、すぐにラッピングが必要なくなるわけでもないとも感じた」といった見解や、「カラーPPFという名前だけど、用途も貼り方もやっぱりPPF(透明)よりはカーラッピング(カラーチェンジ)に近い技術・サービス。今は透明PPFをメインに施工しているが、パネル端の巻き込みでの塗装面への負荷リスクなどを考えると、カラーPPFはあまり積極的には取り扱いたくないかも」といった慎重な声も聞こえてきました。
一方で、「ルーフのブラックアウトなど、シンプルな形状で耐候性が求められるパーツへの部分施工には積極的に提案していきたい」「通常のPPFを施工するのと合わせて、例えばフロントリップやミラーだけカーボン柄にするなどは全然アリで、耐久性などの面でカーオーナーに勧めやすいという点では施工者にとっても使いやすい」など、コストを踏まえた現実的な活用案も会場内では話し合われていました。
またメーカー・商品数の拡大とともに選べるカラーも増えてきており、「前は貼りたい色が見つからなくてラッピングにしたが、イメージカラーに近い色を見つけやすくなってきた」といった声も。
まだ現状ではカーケアの最先端的材料で、予算的に一部の人が楽しめるアイテム…。ですが、アイテム、施工者ともに徐々にカラーPPFの裾野は広がりはじめているようです。