ジョイボンド古館氏がIDA殿堂に! トラップネンド発明の功績称え

ジョイボンド古館代表がIDE殿堂入り
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アメリカに本部を構えるインターナショナルディテイリングアソシエーション(IDA=国際ディテイリング協会、ボブ・マイヤーズ会長)は1月31日、2023の殿堂入りを発表し、4人の選出者の中にジョイボンド(埼玉県さいたま市)古舘忠夫代表が選ばれました。
IDAの「Hall of fame(殿堂入り)」は業界に大きく貢献した専門家に贈られる栄誉で、協会員の投票で選出。2020年以降、毎年4〜5人が選出されてきた中、日本人が選ばれたのは初めてで、古舘氏が発明したトラップネンドが「決してなくなることのない私たちの業界の定番」と称えられました。

世界的協会が認めた「業界を前身させた発明品」 

IDA殿堂は、国際的なディテイリング業界団体であるIDAが「業界の人に授与できる最高の栄誉」と位置付けている称号。「世界のディテイリング業界への永続的な貢献により、私たちの生活やビジネスに良い影響を与えた人物のために設けられている。古館氏の発明、とりわけトラップネンドの発明は、その全ての条件をクリアする素晴らしい仕事だった」と公式ホームページ上で紹介しています。

トラップネンドは、ボディ表面の鉄粉などの異物を除去することができる粘度型クリーナー。半ば普通名称化(ホッチキスや宅急便のように)されてしまっており粘土型鉄粉除去剤の代名詞的存在になっていますが、元々は古館氏が発明し、1987年に特許を取得しました。
当時の開発背景には、1970年代後半から広く普及し始めたボディのクリアコート塗装(今では当たり前ですが)があったそうです。塗装面の耐久性向上を担うアクリル/メラミン系クリアコートですが、そこに塗料ミストや樹液、虫、その他様々な頑固な汚れが付着することで透明度が低下。そのため、ワックスでクリアコート上に保護層を作る前に、ケミカルやコンパウンドで汚れを除去したり磨いたりという工程が必要でした。その作業工程に着目した古館氏は、様々な形状に対応でき、塗装面へのダメージを抑えながら異物を除去できるクリーナーを開発すべく多様な素材を試行錯誤。その末に弾力性と展延性に優れる粘土型クリーナーの開発に至りました。

IDAは、トラップネンドの功績として「業界に大きな効率性を生み出し、ディテイラーやディーラー、ボディショップの利益を拡大させたと同時に、多くの自動車愛好家がリスクが高い方法を使わずに塗装面をキレイにすることを可能にした。製品と使用手順がシンプルで教われば誰でも使用でき、世界中の多くのプロの作業手順やIDAの認定試験にも採用されている」と高く評価。その上で「プロのディテイリング業界に影響を与えたのみならず、自動車愛好家の市場にも浸透している。代表的な赤と青のトラップ粘土は世界中で販売されており、ほぼ全てのプロのディテイラーやOEMメーカー、ディテイリングサプライヤー、ディテイリング製品ディストリビューターは、今日でもこの32年前の業界を変えた製品をビジネスで使用している」と称賛の言葉を掲げています。

そもそもジョイボンドは、古館氏が1965年に設立したトモエ商会を前身とするディテイリング資機材のメーカーです。今回業績が称えられたトラップネンドよりも以前から、古館氏自身が直接訪問して得た北米市場の知見を基に「中古車商品化」ビジネスを発足。「中古車をキレイにする」こと自体の価値がなかなか世間的に認められていない中、第一号商品となるレザーワックスを開発したり、中古車販売店や新車ディーラーなどに対して提案。85年にはボディや足回り、内装やエンジンルームなどクルマ全体を効率的にクリーニングできる独自のマニュアル「中古車商品化システム」を開発し、社名も今に続くジョイボンドに変更しました。今でこそ、「キレイな中古車」は当たり前の存在ですが、古館氏はその価値観がない時代に「キレイにすることを付加価値にする」カーディテイリングビジネスを提唱、自動車業界で市場を開拓してきた第一人者なのです。

なお、2023年の殿堂入りでは古館氏含めて5人が選出。アメリカやカナダで最初にセラミックコーティングを導入したという化学研究者や、90年代にレクサスやトヨタの認定中古車開発グループの主要メンバーを務めた業界コンサルタント、業界紙・業界展示会の発足・運営者など、いずれも業界に対して多大な影響を与えた人物が選ばれています。

プロの基準設定と教育、認定

IDA(国際ディテイリング協会)はプロディテイラーや資機材メーカー・サプライヤーなどのための業界団体として、グローバルな業界コミュニティの主唱者および情報源となることを目標に2008年に設立。セミナーやオンラインフォーラムを通じた専門知識の共有や専門家同士のネットワーク構築を促進しています。

また、ディテイリング産業が規制されておらず業界を規定する法律などがない一方で、業界が急速に成長する中、適切な教育やトレーニングを受けずにビジネスを始めている実態があるとして、IDA独自の試験・認証制度も設定。1段階目を修了すると「IDA認定ディテイラー(IDA CD」、2段階目を修了すると「スキル検証済・認定ディテイラー(IDA CD-SV)」の2つの称号をプロディテイラーに授与しています。一般カーオーナーにおいても、このIDAの倫理規定を遵守する認定ディテイラーを選ぶことで高い水準のサービスを受けることができるとしており、世界中のIDA認定ディテイラーを探せるウェブサイト「Detailing Nearby.com」も公開しています。

▶︎IDA(国際ディテイリング協会)公式ホームページ(英語)
▶Detailing Nearby.com(IDA認定ディテイラー検索サイト・英語)

CARDE編集部

90年代前半から東京都下でショップを営むプロディテイラーと元業界紙記者のコンビ。“現場のリアルな視点”と“客観的な情報編集力”でカーユーザー第一の情報をお届...

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