【業界の本音?的こぼれ話vol.02】プロでも“磨きのの差”はある?

コーティング

当メディア記者がカーオーナー目線で気になった、編集会議や取材時の記事にはできないこぼれ話”の一端をお届け。今回はコーティング専門店を調べたらよく出てくる「磨きの品質/レベル」。「うちの高い技術力を〜」といったコピーもよく見かけますが、本当に差があるのか、あるなら見極める方法は? 当メディア長南代表に教えてもらいました。あくまで業界界隈で繰り広げられた他愛のない雑談としてご賞味ください…。

オートサロン行ってきました!
洗車用品やラッピング系も盛り上がっていましたが、ディテイリングという世界を描いていた点ではカミカゼさんなどのブースがうちのメディア的にはドンピシャな感じだったのかなぁと
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今年は行けなかったんだよなぁ

ああいうイベントの展示車両は全てキレイに仕上がっていますが、そういった裏方もディテイラーさんのお仕事の1つですよね?

うん。カミカゼさんのようにペーパーまで当てているのは少ないだろうけど、展示車両を磨いたり艶出ししたりはプロディテイラーが請け負っているケースも少なくないよ

そのいわゆる施工技術とか磨きの「レベルの差」、よくコーティングは下地処理が8割とか9割、なんていうのも聞きますが、プロの中でもその差は実際あるんですか?

うん、あるね。
ただ、その差は2種類あると思っていて、1つは高い施工価格で時間をかけて丁寧に磨く、安い価格で短時間で磨きも簡素、といったような「サービス区分」としての差

「松竹梅的なメニューの違い」といった感じですね。高級旅館とビジホ、高級レストランとファミレスのような感じですかね

そう。でもそれはショップごとの色でもあるから全然いいと思うんだけど、問題なのは「本当にそれでプロを名乗っているの?」と僕が感じてしまうような粗悪なサービスもあるということ。区分というより「品質の差」っていうのかな

確かに「区分」による差は「どっちが正解!」というのではなく、顧客の予算や希望で選択するもの…。ただ粗悪な品質はどのような見方をしても利点がないですもんね。でも、その「明らかに品質の劣ったサービス」っていうのは実際にあるんですか?


僕も長年ディテイラーとして仕事をする中で色々同業者さんの話が耳に入ることもあるけれど、「そのレベルの知識・作業内容でお金もらっているの?」と正直思ってしまうことはある。その仕上がりでお客さんに納車できるんだ、と

なるほど…。確かに僕も「文章を書く」のを専門にしていて、あまり人のことを言える立場ではありませんが同様の想いを抱いた経験はあります。工業製品などと違って成果物に明確な品質差が表出しづらいというのもありますよね。その「磨きの品質差」は、自分では磨かない一般カーオーナーでも分かる差ですか?

分かりづらくはあるけれど、傷やバフ目を消しきれない、っていうものなどは全然プロでなくても分かってしまうレベルだよね

プロでもその品質があるんですね。昔に比べるとポリッシャーなど磨きの資機材の性能が進化しているとも聞きますが…

だからこその部分もあるんじゃないかな。昔はスクールで一通りの講習を受けて開業とか、どこかのショップで修行してから独立、というのが多かったけど、最近だとYouTubeやSNSなどインターネットで情報収集してゼロから全て独学という人もいるみたい。独学でもヤル気に満ち溢れて徹底的に追求するならまだしも、ネットで得た情報と片手に持ったダブルアクションポリッシャー1本でセミプロ感覚に副業、なんていうのもいるんじゃないかなぁ

まぁ一昔前と違って「脱サラ・独立開業を支援します!」的なスクールビジネスも少し落ち着いていますもんね。今は脱サラというより、副業が一種のブームになっているような感じですし…。しかも磨き・コーティングに資格もいらないですもんね

確かに低予算で参入しやすい事業なんだけど、一応でもプロを名乗るからには自動車塗装や磨き方、資機材、コーティングのことなど最低限は知っておかないと…って思ってしまうんだよね

愛車を預けたオーナーが「こんなもんか(泣)」って一度思ってしまうと、ディテイリングというサービス自体を見限ることに繋がりかねないですもんね。コーティングにおける「粗悪な品質」を見極めるポイントってありますか?できればクルマを預ける前に分かるもので…

資格とか認証制度が確立されていないから断定できる材料はないんだけど、強いて挙げるならこの3点は少し目安にはなるかも

  • 1:施工車両写真のビフォー・アフターで照明の当て方や撮影角度が異なる
  • 2:使用している資機材の種類が少なそう
  • 3:同業者同士の繋がりが希薄そう

技術・情報をアップデートし続けるプロ

施工写真は、自分のクルマと同じ施工事例を探したり作業内容の詳細を見たりといった見方をしていましたが、そういう見方があるんですね笑

磨き方が不適切でその人の技量だといくら時間をかけても傷を消しきれない、という場合があるようで、「照明の当て方や写真の撮り方で消しきれない傷を誤魔化しているな」という施工写真は見ることあるよ

なるほど。2点目の使用機材は、確認すること自体が少し難しそうですが、直接聞いたり施工場を覗かせてもらうとかですかね。やっぱり使用機材が少ないとダメなんですか?

塗装面の状況は千差万別で、昔より性能が進化しているとはいえ、全ての塗装面に対応できる資機材はないからね。塗装面の劣化状態はもとより塗装自体もメーカーや車種ごとに異なっていて、例えば磨きやすいトヨタ車や塗装が硬いドイツ車は誰でも一定程度磨けるけれど、塗装が柔らかいといわれているホンダなどの一部軟塗装車両はそれに適したポリッシャー・バフ・コンパウンドの組み合わせを選択する必要性が高いんだ

それをしない自称プロが、傷を消せずに1つ目の“写真で誤魔化す”状況になってしまうんですね…。同業者の繋がりは、そうしたプロのノウハウの共有、勉強といった観点ですかね

そう。同業者同士って競合として敵対する部分もないわけではないけど、地域ビジネスという側面もあるから一部では全国の同業者同士で交流する習慣もあるんだ。公的な組合とかは少ないけど、勉強熱心な人は、ディテイラーで構成された組織やグループなどで情報共有して勉強し続けているよ

資機材のサプライヤーが運営する組織もありますよね。その製品自体がどう、というよりも組織活動の一貫で加盟者同士で情報交換できる点が重宝されていたり…

そうそう。磨きもそうだし、最近だとPPFなどフィルム系でも色々な新商材がどんどん出てきていて、向上心あるショップさんほど新たな情報にアンテナを張って情報収集したり試したりしているね

参入障壁が低く品質差が見えづらいというサービスだと”自称プロ”が生まれやすい…。そう考えると、”しっかりしたプロ”が生き残っていくためにはそうした品質向上への取り組みを続けていくのが大切なんですね。
僕も同じサービス特性がある執筆業のプロとしてその姿勢を見習います!カーデマガジンでも、高級かどうかといった「サービス区分」で別け隔てるのではなく、「品質差」として良質な(粗悪ではない)ショップさんをどんどん紹介していきたいですね

CARDE編集部

90年代前半から東京都下でショップを営むプロディテイラーと元業界紙記者のコンビ。“現場のリアルな視点”と“客観的な情報編集力”でカーユーザー第一の情報をお届...

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