【JMS2023】モビリティ時代に輝くディテイリングサービス・技術

JMS2023
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東京モーターショー(TMS)から名称を変更した国内最大の自動車展示会「JAPAN MOBILITY SHOW 2023(ジャパンモビリティショー、JMS/主催:日本自動車工業会)」が10月26日、開幕しました。一般公開は28日からで、東京ビッグサイト(江東区・有明)を会場に11月5日まで開催。名称の変更とともに、他産業やスタートアップ企業なども加わるなど自動車業界の枠を超えたイベントとなり、前回のTMS2019の192社を大きく上回る475社が出展・参加。その中には、自動車メーカーらが注力する次世代EV車をはじめとした未来のモビリティもさることながら、構成技術が複合化するモビリティでも重宝される美装サービス・技術も多数出展。当編集部が注目したブースをご紹介します。

JMSにもディテイリングアイテム多数!

ディテイリングブランドの有名どころがブースを連ねたのが南展示棟。日本スーパーカー協会が主体となった共同出展エリアには複数企業が集い、フェラーリやランボルギーニなど、海外メーカーの出展が少なくなった近年のTMSにおいてことさらに貴重な“見るだけで心踊るようなクルマ”が多数展示。その一角には、ペイントプロテクションフィルム(PPF)のリーディングブランド「XPEL(エクスペル)」や、欧米のプロディテイラーからも支持を集める日本発ディテイリングブランド「KAMIKAZE COLLECTION(カミカゼコレクション)」、老舗カーケアブランド「SurLuster(シュアラスター)」などのブースが並びました。

またその隣には、東京オートサロン(TAS)がカスタマイズカーを展示。TAS2023でドレスアップカー部門最優秀賞を受賞したヴェイルサイド・FFZ400など、スーパーカー同様“クラシックなクルマ好き”が楽しめる空間を演出しました。

  • JMS2023・日本スーパーカー協会のブース
    JMS2023・日本スーパーカー協会のブース
  • JMS2023・東京オートサロンのブース

日本スーパーカー協会を中心とした南館は、JMSの中心である“モビリティ”やその将来像とは少し離れた、どちらかというと“古き良きクルマ”を堪能できる空間。古き良きを「旧態依然」と捉えるか「温故知新」として楽しむかは人それぞれですが、トミカやキッザニアブースも連なるこの南館は、1970年代後半に子どもたちの眼差しを集めたTMSなどのスーパーカーさながら、「クルマの楽しさ」を伝えているように感じました。

次世代に機能で貢献 進化する窓

その南館と隣接する西展示棟ホールは、部品・機械器具の展示エリア。中でも美装にまつわる観点から注目したのがウインドウ関連の先端技術です。

豊田自動織機のブースでは樹脂ウインドウを展示。重量がガラスの約2分の1と軽量化が図れる上に割れにくい樹脂ウインドウは1990年代から提案され、近年の自動車素材関連の展示会でもよく見かけるアイテム。一方で、紫外線による変質・劣化(耐候性)やワイパーによる傷つき(耐傷付性)の点でクリアすべき技術課題が多く、製造コストも相まって実際のクルマへの採用はプリウスαのルーフやLFAのクォーターウインドウなどごく一部に留まってきました。
その中で今回同社が展示したポリカーボネート製ウインドウは、運転視界に関わるフロントウインドウに要求される耐傷付性(国際規格UN-R43のクラスL)を備えながら、従来よりもコストを大幅に削減したもの。その鍵が新開発のUV硬化型1層のハードコートで、従来の計3層コートに比べてコーティング工程におけるコストを約40%、CO2を約80%削減。車両の軽量化を通じた低炭素化に資する素材技術として今後実用化に向けた技術開発を進めていくそうです。

一方、日本板硝子(NSG)のブースでは従来のガラス素材ながら高機能化を果たした様々なガラスウインドウを展示。実際の販売車両でも普及が進むUV・IRカットガラスをはじめ、スイッチ1つで遮光と透過を切り替えられる調光ガラス、ガラス越しに情報投影するHUD用フロントウインドウなど、電費や車内の快適性、運転時の視認性と幅広く役立つ先端のウインドウ機能が並びました。

また、カー用品でお馴染みのカーメイトのブースにも運転者の視界確保をサポートするアイテムが展示。新開発の「ゼロワイパー・超撥水フィルム」は、ヘルメットバイザーやサイドミラーに貼る用途の撥水フィルム。現時点ではフロントウインドウなどの大きくかつ曲面が強い面への貼付は難しいものの、従来から販売する液剤塗布タイプに比べて大幅な耐久性向上を実現したそうです。

  • JMS2023・部品・機械器具展示
    JMS2023・西展示棟を会場とした部品・機械器具の展示

高機能化=触りづらくなるクルマ

ウインドウ自体の性能進化は、一方でカーディテイリングの主要サービスであるカーフィルムにとっては逆風となる面も。カーフィルムを貼る目的は様々ですが、大きくは飛散防止、UVカットや遮熱、目隠し(調光)で、前述のような高耐久樹脂や高機能ガラスのウインドウが実用化されれば、後付けのカーフィルムでこれらの機能を補完する必要がなくなるからです。加えて、未来のモビリティではなくすでに販売中のクルマでさえもフロントガラスには先進運転支援装置(ADAS)用のカメラ類が備わり、近年の一部車両の整備マニュアルや取扱説明書には「フロントガラスへのフィルム装着禁止」が明記されています。

JMS会場内の東展示棟・次世代モビリティ関連のエリアでは、国土交通省がそうしたADASなどを備える先進安全自動車(ASV)の推進を啓蒙。ブース説明員に少し話を聞くと、法規関係は本担当ではなくあくまで一般論との前置きの上で、もしフィルムの貼付がASV搭載装置に何かしらの影響を及ぼした場合、例えばクルーズコントロールや駐車支援システムなど自動車メーカー独自の便利・快適機能であればまだしも、衝突被害軽減ブレーキのような法律で搭載が義務化、規定された装置の場合、単純にカーオーナーの自己責任にとどまらず保安基準不適合となってしまう恐れもある、との1つの見解を示してくれました。

あくまで記者個人の所感ですが、今回モーターショーからモビリティショーに名前が変わったのと同時に、クルマが“個人の所有物”から“より公共性を増した移動システム”へと変化しつつあることを改めて顕著に感じられたJMS。購入した自家用車といえど、カーオーナー(やアフターのショップ)が自由にイジれる範囲は、今まで以上に明らかに減りつつあることも実感します。

  • JMS2023・次世代モビリティエリア
    次世代モビリティエリアに展示された国交省のブース

クルマや消費形態とともに移ろうディテイリングサービス

そんなJMSの次世代モビリティエリアで、一方では後付けカーフィルムを装着した展示車の姿も見られました。
旧いフィアット・500の保存に取り組むチンクエチェント博物館では、高機能フィルムを装着したフィアット500evを展示。元々イタリアに現存する個体を現地でレストアや整備し、輸入・販売する同社。近年、EVコンバート仕様に加え、内装の除菌・消臭コーティングや高性能なUVカット・遮熱を特徴とするコボテクトフィルムの施工を販売車両の設定として加えたそうです。特にカーフィルムは、日焼け防止や遮熱といった搭乗者の快適性向上はもとより、芸術性をも伴うという貴重なクラシックカーの内装劣化を抑える点でも有用といいます。

また、JMSの目玉ともいえる自動車メーカー各社がブースを連ねる東展示棟の主要エリアでは、EVや自動運転を見据えた次世代モビリティが数多く展示される中、カーコーティング大手のKeePer技研のブースが展示されていました。元々同社では、ガソリンスタンドなどを通じて既販車(経年車)への施工を中心に製品・サービスを提供。一方で近年では「ディーラーではなくキーパーでコーティングしたい」という新車購入者のニーズも増えてきているそうで、スバル、トヨタ、ホンダと国内ディーラーでの純正採用も拡大しています。
そして今回のブース展示は、「愛車を美しく!」といったコーティングの宣伝として従来から発信されてきたメッセージではなく、洗車の手間・時間削減による有効時間の創出や使用水量低減による自然環境への貢献といったサービスの利点をアピール。コト消費やエシカル消費など消費スタイルが目まぐるしく変化する昨今、今や広く普及するカーコーティングもまた異なるアプローチでその魅力が発信されていました。

  • JMS2023・次世代モビリティエリア
    次世代モビリティが集う会場内で目を引くフィアット・500(チンクエチェント博物館ブース)

ご紹介したブース以外でも、本丸の自動車メーカー各社の先進的な展示車や、未来の都市・モビリティ構想を形にした主催者プログラム「Tokyo Future Tour」など、クルマからモビリティへの変化を体感できるJMS会場。その中で大手自動車メーカーが連なる一角にコーティング企業が並ぶ光景や、半世紀前の美しい旧車の保全にカーフィルムが活用される姿からは、クルマと同様カーディテイリングの活用領域も、今までからより一層移ろいつつあることが感じられました。
未来のモビリティも日常に近づきつつありますが、現在でもすでに身近なものが多いディテイリングサービス。JMS会場はもちろん、実際の施工ショップなどでもその魅力に触れてみてはいかがでしょうか。

▼画像:各自動車メーカーや次世代モビリティエリアの美しい展示車両

  • JMS2023・自動車メーカーの展示車両
    JMS2023・自動車メーカーの展示車両
  • JMS2023・Tokyo Future Tourエリア
    生活や災害、遊び、食などテーマごとにモビリティの将来像を具現化したTokyo Future Tourエリア
  • JMS2023・次世代モビリティエリア
    大手メーカーに限らず、それぞれに独創的なモビリティが展示された次世代モビリティエリア

CARDE編集部

90年代前半から東京都下でショップを営むプロディテイラーと元業界紙記者のコンビ。“現場のリアルな視点”と“客観的な情報編集力”でカーユーザー第一の情報をお届...

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