暑さ・日焼けを防ぎたいなら! 省エネ時代に貼りたいコボテクトフィルム
気象庁によると、今夏(2023年6〜8月)の気温は平年並みまたは高い可能性が高いそうで、そもそも年平均気温も徐々に上昇、特に1990年代以降は高温の年が頻出しているといいます。日本国民にとって一段と暑さ対策の必要性が増す中、ディテイリングプロショップ界隈で注目されているのが「日射遮蔽」という機能性に優れた「コボテクトフィルム」です。「値は張っても高性能なものを貼りたい」というニーズに応えるアイテムとして、専門店でも上位メニューという形で広がりつつあります。
クリアもスモークもUV100%カット!
カーフィルムの製造・販売を手掛けるコボテクトは、2021年創業の新興企業。現在「コボテクトフィルム」という製品名称で、「クリア」「スモーク」「ミラー」の3タイプのシリーズ製品を展開。各シリーズごとに透過率の異なるフィルムが設定され、全9製品がリリースされています。
全製品に共通するのが、プロ用カーフィルムの中でも秀でた「紫外線(UV)カット」「遮熱」の性能です。日焼けをはじめ身体への健康被害の要因となるUVは100%遮蔽(250〜380nm波長域/透過率0.0%)を実現。加えて赤外線(IR)をはじめとした幅広い波長域で高い遮断率を誇っており、肌へのジリジリした熱さや車内空間の温度上昇を抑え、カーエアコンの冷房効率の向上、ひいては燃費・電費向上にも寄与します。
見た目ではなく性能重視という特性のため、売れ筋となっているのがフロント3面に施工することを想定したクリアシリーズ。道路運送車両法によりフィルム装着後のガラスの可視光線透過率が70%以上である必要がありますが、最も可視光線透過率が高いTSM-90C(89.1%)は多くの純正ガラスで貼り付け後でも70%以上を確保。UV・暑さ対策を図りたいカーオーナーから製品指名しての施工依頼も増えているそうで、特にスキンケアに敏感な女性カーオーナーからの施工依頼が多いのもコボテクトフィルムの特徴でしょう。
そもそもカーフィルムは国内ではそのサービスの歴史は長く、かつては海外製の輸入フィルムが台頭した時代もありましたが、近年はプロの間では大手国産フィルムの使用が定番となっています。その理由の1つが品質への信頼性で、フィルムという素材特性上、年単位の時間が経たないと発生しないトラブルもあるため、使用実績が豊富な大手国内メーカー品が定着している側面があります。
一方、21年から販売されたコボテクトフィルムは、もちろんメーカーでの耐久性試験は重ねられているものの市場での実績はまだわずか。その中で、専門店での取り扱いやカーオーナーからの施工依頼が増えているのは、従来品と比べてそれだけの性能差が認知されていることの裏返しともいえそうです。
なお、コボテクトフィルムのほかアヘッド(近藤正純ロバート代表、横浜市港北区)からも「アヘッドフィルム」という名称で同じ特性を持つフィルムが販売されていますが、販売チャネル・製品名称が異なるだけで製造元・製品仕様は同一です。
“体感”か“グラフを読み解く”と分かる高い性能
コボテクトフィルムの日射遮蔽性能の高さを実感するには、一般カーオーナーであれば施工ショップ店頭で体感するのが一番の近道でしょう。コボテクトでは一定の施工技術などを要件とした独自の認定制度を設けており、認定施工ショップ店頭には擬似的な熱源を用いた専用体感器を設置(認定店でなくても設置しているフィルム専門店もあります)。150Wの赤外線ランプを照射し、1分後の温度変化を数字で視認できると同時に、手をかざすことで肌でもその性能を感じることができます。フィルムを貼らない状態はもとより他社製品との比較も可能で、同社によると「製品の売り文句だけでなく、実際に遮熱性能を体感できるという声が多い」そうです。
そしてこの体感以外でも、同社が高性能を表す客観的データとして提示するのが、ホームページでも公開している各フィルムの「分高透過率」です。同社が遮熱性能を発揮する上で重要とするのが「太陽光のどの波長域をどの程度遮断するか」というもの。一般に遮熱性能の目安として「赤外線(IR)カット率」が目安として提示されていることがありますが、同社担当者は「『赤外線●%カット』という表記は実は共通の規格表記ではなく、メーカーによって計測方法が異なるのが実情。弊社では、赤外線と呼ばれる波長域(780nm〜)の中でも特に1200〜2000nmを遮断することが遮熱に効果的と考えており、コボテクトフィルムはこの波長域の広範囲を高い水準で遮断、つまり『高広域な遮断』を実現することで高い遮熱性能を発揮している」と説明。実際、流通するプロ用フィルムを見ても、カタログ表記上は高い赤外線カット率ながら狭い波長域しか遮断しておらず、体感器で試しても体感しづらい製品もあるそうです。
この理屈は透明遮熱はもちろんスモークタイプでも同様で、同じスモーク度合い(濃さ)でも遮熱性能は異なるもの。同社のスモークシリーズ(TSM-N30S/N10S)は、波長域約1000nmの時点で90%を遮断し、以降、長い波長に向けて最大カット率99%まで高い遮蔽率を実現しています。
また同社製品の中で最も遮熱性能が高いのが、ミラータイプでスモークが最も濃い「TSM-N10M」。セラミックと金属のハイブリッド3層構造と厚みのあるフィルムで、太陽光線の流入熱量を表す統一規格の「遮蔽係数」をみても0.38という優れたスペックを発揮。明るい屋外側から車内を覗くと反射して見えづらくなるプライバシー保護性も有するほか、金属使用も少量のため電波通信への影響も抑えられており、ETCやFMラジオなどへの障害も心配ないそうです。
スモーク・ミラータイプはフロント3面へは施工できず、リアガラスなど法規制を受けない部分への施工になりますが、「同じスモーク(見た目の濃さ)でも遮熱性能も追求したい」という人はコボテクトフィルムは一考の価値あり。逆にドレスアップ効果だけを求めてカーフィルムを施工する場合は、コボテクトフィルムは割高な選択肢なので避けた方が無難です。
ちなみに透明遮熱タイプは、ドレスアップどころか肉眼ではむしろ貼ってあること自体がほぼ分からないレベルのクリアさ。逆にいうと、施工後でも運転への支障リスクを極力抑えた鮮明な視界を確保できます。
余談になりますが、光の波長域に関しては現在進行形で科学研究が進む先端分野であり極めて複雑な領域。一般カーオーナーはもとより施工ショップやメーカーサイドでも、様々な見解や指標が繰り広げられているのが実情ということだけ補記しておきます。
例えば先に遮熱性能の目安として記した「遮蔽係数」も、一律の計測規格として製品比較の目安にしやすい一方、「目安にはなるが、計測する波長域の都合で遮蔽係数に表されない遮熱性能もある」というのが同社の見解。また、同社製品の強みの1つである「紫外線100%カット(透過率0.0%)」に関しても、そもそも光の波長域とその区分に明確な定義がなく業界・規格により異なるというのは押さえておきたいところ。コボテクトが測定方法で基準としているJIS A 5759:2016(建物窓ガラス用フィルムに関する規格)やISO9050:2003(建築用ガラスに関する規格)では紫外線は「〜380nm」と定義されている一方、同じJISでもJIS L 1925:2019(繊維製品の紫外線遮蔽評価)や環境省の紫外線環境保健マニュアル2020では「〜400nm」を紫外線と定義されています。なお、コボテクトフィルムはTSM-90C以外の製品では〜400nmの波長域でも100%遮蔽しているそうです。
プロ用製品の中でも高級品 他社製品との組み合わせも
プロ用製品の中でも高性能を強みとする一方で、カーオーナーにとって1つのハードルとなるのが価格です。DIY用はもとよりプロ用フィルムと比べても高価で、施工ショップでも上位メニューに位置付けられていることが多いコボテクトフィルム。実際の施工価格はショップごとに異なるためあくまで参考目安ですが、大手メーカー製品と比べて1.5倍程度の施工価格を掲げるショップもあり、フロント・リア全面を施工すると20万円を超すケースもあります。
ただ、例えば「乗車頻度が高いフロント周りだけにコボテクトフィルムを施工し、リア周りは他社製品を組み合わせる」「子どもを乗せるリア周りをUV100%カットのコボテクトフィルムにし、ほかは他社製品にする」など、予算を抑えながらも高性能を体感する方法もあります。コボテクトは新興メーカーのためカーフィルム施工店で同社製品のみを取り扱っているケースは稀。多くが複数のメーカー製品を取り扱っているので、予算に合わせた施工製品の組み合わせはショップと相談してみるのがオススメです。
また、施工ショップはコボテクトのホームページから認定施工店を探せるものの、まだ全国的に軒数が少なく、都道府県によっては認定施工店がないところも。ただ、カーフィルム施工者であれば技術的にはコボテクトフィルムの施工自体は難しくないので、もし自宅近所に認定店が見つからない場合は近くのフィルム施工専門店に取り扱ってもらえるかを相談してみると良いでしょう。
認定店以外に相談する際は、特にフロント3面に施工する場合は施工実績が豊富な専門店を見つけたいところ。というのも、フロントガラスは運転中に常時視界に入るため、フィルム施工時に混入してしまったゴミが目につきやすいからです。ゴミの混入をゼロにするのは難しいものの、施工者の技量や設備環境によって異なるため、せっかく施工するからには実績豊富なショップで綺麗な仕上がりを望みたいところ。
加えて近年のクルマは、フロントガラス下部に電子デバイスが満載で、これも慣れていないショップ・施工者だと施工液の混入などで無用なトラブルを起こしてしまうことも。また、道路運送車両法で規定されているフロント3面へのフィルム施工は、現時点ではフィルム装着車の車検を巡ってカーオーナーが不合理な不利益を被るケースもゼロではないのが実情。施工・取り扱い実績が多い施工ショップ(コボテクト認定店含む)であれば、車検時に適切な対応・サポートをしてくれるケースもあるので、より安心して愛車を預けられるでしょう。
折しも今年、コボテクトがブース出展した東京オートサロン初日の1月13日、国土交通省が指定工場(いわゆる民間車検場)におけるフィルム装着車の車検に関する事務連絡を発しました。事務連絡自体は従来からの規定を変更するものではないのですが、フィルム装着の車検の方法について改めて統一見解が示されたことで、フロント3面へのフィルム施工とその装着車の車検がより円滑になることが期待されています。
これまで長い間、スモークフィルムに代表されるように“カスタムパーツ”・“アフターパーツ”・“カー用品”といった趣向的なイメージが強かったカーフィルム。生活者にとって暑さ対策・省エネ工夫が欠かせなくなってきた今こそ、“生活アイテム”としてカーフィルム施工を検討してみてはいかがでしょうか。