プロの人たちも発展途上…PPF・ラッピングの世界
高級車を中心にディテイリングの世界でも存在感が高まってきているPPFやカーラッピング。最近ではそれぞれの「〇〇専門店」を掲げるショップも徐々に増え始めていますが、現状ではコーティング・カーフィルムなどを手掛けるカーディテイリングショップや、看板装飾を主事業とする企業が施工しているケースが多くあります。
ただ、いずれもコーティングなどと比べると歴史が浅く、施工実績がまだまだ小規模で“発展途上”とも呼べるサービスのため、プロの間でも技量の差などが大きいのが実情です。
少し業界内の事情をお話すると、以下のような施工に関するリスクが発生することも。
・施工技術、サービス品質が確立されていない
統一された施工技術が確立されておらず、店によって仕上がり品質にバラつきがあります。 PPFでは端部のカット処理やゴミの混入、ラッピングでは浮き、シワなど、悪目立ちしてしまう施工処理が施されることも現実にあります。
・価格相場が不安定
地域やお店により価格にバラつきがありますが、粗悪フィルムを使用した格安サービスを売りにしているお店も存在します。逆に、施工品質が確立しているわけではないので、必ずしも「高価=高品質」でもありません。
・施工から経年後のトラブルリスクがある
フィルムという製品の性質上、PPFもラッピングも、どうしても経年による変質・劣化が避けられません。各フィルムの特性に精通したプロであれば、それを見越したサービス説明やアフターケアを提供してくれますが、施工実績や知識・情報が乏しいお店では、「施工直後は良くても短期間で剥がれてきた」「経年後に剥がそうとしたら綺麗に剥がせずボディを傷めた」といったことも起こり得ています。
そうした中最近では、各フィルムメーカーや施工店が集まった協会組織などで技術講習会も以前に比べて頻繁に行われるようになり、積極的に最新技術・製品を習得しようとする専門店を中心に、プロの間でも技術研鑽・情報アップデートが進められています。22年3月には国内で初めてPPFの施工技術を競う競技会も開催されました。
カーオーナーとしては、こうしたデメリット・リスクも含めてサービス詳細をしっかり説明してくれるプロショップを見つけると同時に、プロが締め切った空間で行うといえど手作業である以上、例えば「ゴミ混入ゼロの仕上がり」が困難であることや、フィルムが進化しているといっても「少なからず経年劣化を避けられない素材」であることをユーザー側でも留意し、過度な期待を寄せないことが“高い満足度”への近道かもしれません。
窓の保護にも注目 プロテクション番外編
ボディ塗装面を保護するPPFが広がる中、最近はフロントガラスを保護する「ウインドウプロテクションフィルム(WPF)」への注目も急速に高まっています。その背景には「ガラス修理費用の高騰」と「WPFの進化」があります。
近年の自動車では、自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)をはじめとした各種ADASが備わり、フロントガラスにもADAS用カメラなどが装着されています。そのため、これまでだったらリペアが可能だった飛び石傷でもガラス交換を余儀なくされた、ガラス交換の際にカメラの再調整費用が加わり高額になった、といったケースも増えています。
そこで有効なのが、厚みのあるクリアなフィルムで表面を保護するWPF。ポリウレタン(TPU)素材が主流のPPFとは異なりPET素材を基材とする製品が中心で、従来はPPF同様フィルムが高価で施工難易度も高く、耐久性も一般的なカーライフに耐えうるものではなかったため競技車両やスーパーカー、観光バスなど一部の車両でのみ取り扱われてきました。
ただ、ここにきて製品種類が増え始め、以前よりも手が出しやすい価格になると同時に耐久性も向上。ガラス修理の費用とのバランス感を鑑みて一層実用的なアイテムになりつつあり、サーキット走行を楽しむオーナーなどをはじめPPF施工と同時に依頼するカーオーナーも増えてきています。
▼主なWPFの種類
●PET素材→熱成形が必要なため高い施工技術が必要で、プロの間でも施工できる人が少ない。ただ高い透明度が特徴で視界がクリア。
主な製品:P-Shield(Pシールド)、ClearPlex(クリアプレックス)など
●TPU素材→PPFと同種の素材で、熱成形いらずで施工できる新製品。カラーPPFを提供するSTEK社より販売されている。
主な製品:STEK Windshield DYNOflex(エステック・ウインドシールド ダイノフレックス)など
プロの間でも、取り扱う製品や施工技術にバラつきが多く、”発展途上”とも呼べる日本のPPF、カーラッピングの世界。
逆にいうと「気がついたら馴染みのコーティング店でもPPF、ラッピングをやっていた」「これまで手が出なかったけど割安キャンペーンがやっていた」「見たことない製品が登場していた」など、日進月歩で動きが活発なのもPPF、ラッピングならではです。ぜひ、そうした店舗サービスやフィルム製品の最新情報をチェックしてみても面白いかもしれません。