メーカーでどれだけ違う? ソフト99ASセミナー「PPF徹底比較」

ソフト99オートサービスによるPPF比較
PPF・ラッピング

ソフト99オートサービス(甲斐康之社長、大阪府大阪市)は4月15日、東京営業所で複数メーカーのペイントプロテクションフィルム(PPF)を比較する事業者向けワークショップを開催しました。同社独自ブランドCLIMAX(クライマックス)の新製品の発売や、2022年10月から開始した米大手メーカー・イーストマンケミカル「V-KOOL」の輸入販売を契機としたもので、同社で取り扱うPPF製品のラインナップはここにきて一段と拡大。
従来も日本では国内外様々なメーカーのPPFが販売されていたものの、認知度やプレカットデータシステムの有無、販売体制などを要因に大手メーカー製品に需要が集中している側面がありました。同社では同日からプロ向けPPF販売/一般向けPPF施工の特価キャンペーンも実施しており、ラインナップ拡大と合わせて国内PPF市場拡大の追い風の1つとなりそうです。

PPFは製品・メーカーによって何が違う?

カラーやデザインタイプを除き、PPFの基本製品であるクリアタイプは無色透明で、なかなかメーカーや製品ごとの違いは分かりづらいところ。今回のワークショップでは、そうしたPPFの製品ごとの差異を座学、施工実演・施工体験を通じて説明されました。
同社が製品比較として提示したのが以下の項目。業務用製品のため価格に関する項目はここでは控えますが、実際に同社が各製品を施工した自社検証の結果としてそれぞれの特性が解説されました。

ソフト99オートサービスによるPPF比較
PPFの比較項目:艶肌(粗さ・平滑性)/マット感(マット・サテン)/初期粘着(弱い・強い)/巻き込み(弱い・強い)/フィルムの硬さ(柔らかい・硬い)/水弾き性

こうした製品差がある中、同社が新発売したクライマックス・IDEAL(イデアル)は、表面の優れた平滑性が1つの特徴。日本製のTPU(熱可塑性ポリウレタン)基材と米国製の粘着剤を使用した高品質・低価格を強みに「コストパフォーマンスが高くミドル層のカーオーナー市場の創出に有効」と提案されました。

カーオーナーが気にすべきは製品より施工者?

同じクリア・マットでもメーカー・製品ごとに差があるPPF。ただ、現時点ではカーオーナーが気にすべきポイントは恐らくマットを施工した際の艶消し度合いぐらいかもしれません。
グロスタイプでは隣同士のパネルで異なるPPFが施工されていてもなかなか視認しづらいですが、マットに関しては艶消し度合いが強いものから半艶(サテン)に近いものまで製品差を視認できるところ。単純な見た目の好みに加え、例えば事故修理などで部分的に再施工する際に異なるメーカーPPFを使用すると違和感の原因になってしまいます。

  • ソフト99オートサービスによるPPF比較
    PPFの製品差が素人目線でも分かりやすいマットの艶感度合い

一方で、それ以外のメーカー・製品差はカーオーナー側ではそこまで気にしなくても。
というのも、粘着など施工に関連する項目は施工者の技量によって左右する要素。なので、「巻き込みしやすく初期粘着が強いPPFでも、技量が不足していて捲れてきてしまう」こともあれば、逆に「粘着性が弱いタイプを使用しても相応の施工法でキレイに仕上げられる」施工者もいるので、カーオーナー側では「どのフィルムを貼るか」も無視はできないものの、「どのショップで貼るか」の方が直接の仕上がり・満足度に影響するウエイトは大きいのではないでしょうか。

また、現時点ではそもそも全国的にPPF施工ショップ自体がそう多くなく、コーティングのように「A社PPFは●円、B社PPFは●円」といった価格メニューを設定していることも稀。加えて使用するPPFの種類を固定しているプロも少なくないので、カーオーナー側で希望のメーカー・製品があったとしてもその取り扱いショップが近隣にない場合も少なくないでしょう。
ちなみに施工後に見た目で分かる撥水性も、近年はPPF対応のコーティング剤も出てきているので、どうしても気になる場合はPPF自体ではなく施工後に対応してもらうのも手です。

同社によると、「PPFは一昔前によく見られたような粗悪品が少なくなり、施工後の見た目に繋がる要素はもとより、保護性能に直結する耐衝撃性や耐久性といった基本品質も製品差は少なくなってきている」そう。その背景には格段に進歩しているフィルム素材の開発・製造技術があり、例えば海外の高級自動車メーカーが昔から今なお純正採用しているストーンガード(透明の塗装面保護フィルム)と比較しても、フィルムの柔軟性や耐候性、黄変への耐久度などあらゆる点で現在のPPFの方に分があるとのこと。”メーカー純正品”ということに価値を求める場合以外は納車直後に貼り替えるケースも増えてきており、そのぐらい昨今のPPF素材の進化は目覚ましいものがあるそうです。

近くのショップで安くなる可能性も 業販キャンペーン

先進の素材技術に由来するPPFですが、カーオーナーからするとネックなのがどの製品・ショップでもまだまだ施工価格が高いこと。現状では多くの国産車であればPPF施工するよりもバンパー交換してしまった方が安く、「飛び石から愛車を守りたい」という想いだけでは乗り越えられない価格差です。
ただ、今回ソフト99オートサービスでは、カーオーナー向けの施工特価キャンペーンと同時にプロ向けのPPFプレカットの特価キャンペーンも実施。国内でも徐々に施工価格が落ち着いてくる兆しが見えてきました。

そもそもPPF施工は現在、ショップによって大きく3パターンに施工法が別れています。
1:ロールのPPFを仕入れ、施工する際に手でカットして施工(バルク施工とも)
2:ロールのPPFを仕入れ、車両・パーツの形状に合わせてカットしてから施工(プレカット)
3:最初から車両・パーツの形状に合わせてカットされたPPFを仕入れて施工(プレカット)

国やショップによって手法は異なるものの、現在日本で主流となっているのが2・3のプレカット。そしてこのプレカットが、高価な施工価格の一因になっています。
PPFを継続的に多くの台数手掛けている施工店では自社に専用設備を導入し、割安なロールで仕入れてカットする2の手法をとっていますが、ソフト99ASによると、初期導入費が高額なためプロショップの中でも少数派。一方、多くの施工店が利用する「必要な時に必要なプレカットフィルムをメーカー・販売会社から仕入れる」3の手法は、車種・パーツごとの形状データ自体が1つの知的財産な上、カットして発送する手間も含まれるため、ロール販売に比べて割高。同社によると、ロールとプレカットをm単価で比較した場合、2倍近い業販の価格差があるそうで、施工価格を押し上げる要素となっているのです。

  • ヘッドライトプロテクション
    技術料のウエイトが高いPPF施工。面積の小さなヘッドライト1つでも凹凸・曲面が多く技量を要する

今回ソフト99ASが実施したキャンペーンは、このプロ向けのプレカットフィルムを大幅にディスカウントするという内容。対応車種やフィルムなど一定の制限はあるものの、施工ショップによっては原材料費を抑えられる有効な手段になります。
もちろん「PPF施工価格」の内訳は、原材料だけでなく専門技術を伴う工賃の割合も高いので「すぐさまに全国プロショップのPPF施工費が劇的に下がる」というのは見込みづらいですが、「プロテクションフィルム市場の顧客層を広げるため」という同社の想いがどの程度広がるか、大衆車カーオーナーの1人としても楽しみです。

CARDE編集部

90年代前半から東京都下でショップを営むプロディテイラーと元業界紙記者のコンビ。“現場のリアルな視点”と“客観的な情報編集力”でカーユーザー第一の情報をお届...

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