洗車用品とは別の顔! PPF筆頭に業界で存在感増すソフト99AS

ソフト99オートサービス
PPF・ラッピング

「フクピカ」や「ガラコ」といった多くのカーオーナーが一度は使ったことがあるであろうカー用品を製造・販売するソフト99コーポレーション。その洗車関連用品とは一線を画すディテイリング業界で、グループ会社である「ソフト99オートサービス(甲斐康之社長、大阪府大阪市)」の存在感が年々高まってきています。ロングセラー商品を大規模に販売する親会社と比べると、ラッピングやペイントプロテクションフィルム(PPF)を中心にむしろベンチャー企業のようなスピード感ある事業展開を進める同社。老舗有名ブランド「ソフト99」を掲げながらも、業界への新たな風となって市場を創出しています。

ソフト99オートサービス(以下AS)では現在、4都府県に7事業所を構え、車両への施工とプロ向け製品販売という2つのアプローチでディテイリング事業を展開しています。施工では一般カーオーナーや高級車ディーラーなどが、製品販売ではディテイリングショップを中心とした施工事業者がその対象。特筆すべきは、取扱アイテムの豊富なラインナップで、直近では3MのPPFやゴーストシリーズを含めたカーフィルムも加わり、ディテイリングサービスとして一層強固な事業基盤を築き始めています。

美観保護もカスタムも 多彩な施工サービス

現在、ソフト99ASの施工サービスで主力なのが、ディテイリングの中でもPPFやラッピングといったボディフィルムです。特にPPFでは、同社が国内総代理店を務める米イーストマンの「V-KOOL(Vクール)」や仏「HEXIS(ヘキシス)」、自社ブランドの「CLIMAX(クライマックス)」をはじめ、「3M」や「XPEL(エクスペル)」、「STEK(エステック)」といった有名ブランドまで幅広くラインナップ。フィルムタイプだけでなく、スプレーで塗装する高価高品質なPPF「fenix ScratchGuard(フェニックス・スクラッチガード)」の施工までをも手掛けています。

▼主要取扱ブランドの特徴
V-KOOL(Vクール)
米テネシー州に拠点を構える世界的な化学メーカー「イーストマン・ケミカル」のフィルムブランド。元々はスパッタという特殊な薄膜製造技術を用いた高性能カーフィルムが有名で、近年注力するPPFは、国内では23年1月からソフト99ASが正式に取扱を開始。耐衝撃性や自己修復、防汚性といったフィルムの高い品質と、独自カットデータシステムに基づく綺麗な仕上がりが特徴で、PPFの中でも高級ブランドとして今後の展開が期待されている。
HEXIS(ヘキシス)
フランスのフィルムメーカーで、ラッピングとPPFの両フィルムを展開。ラッピングでは、フィルム自体の品質(耐久性や質感など)と、「ヘキシスにしかないカラーやデザインが豊富」としてラッピングのプロの間でも重宝されている。「ボディフェンス」という名称のPPFは標準的なクリア/マットとグロスブラックのラインナップで、一般的にPPFに備わる自己修復機能が加熱せずに常温でも作用するのが1つの特徴。
CLIMAX(クライマックス)
ソフト99AS独自のプロ用製品ブランド。PPFのほかウインドウプロテクションフィルムやボディ・レザーコーティング、カーフィルムまで幅広い製品を展開。中でもクリアタイプのPPF「フューチャー」は、国内生産による高品質と低価格の両立が魅力。現在は施工価格として他の製品と大きな差はないものの、高価なPPF施工費の一因を原料費が占めているため、今後は「より身近な価格のPPF施工」を実現するためのアイテムとして広がる可能性も。

  • ソフト99オートサービス
    PPFの中でも高級ブランドとして国内でも今後の展開が期待されているV-KOOLのPPF
  • ソフト99ASでのゴーストのワークショップ
    自社独自ブランドのCLIMAX。国産を強みとするPPFのほか内外装コーティングなど豊富な製品群
  • ソフト99オートサービス
    施工からプロへの販売まで注目高まっているWPF。プロが高く評価するP-Shieldも取り扱っている

PPF・ラッピングのほか、スポーツ走行の車両などで徐々に需要高まってきているウインドウプロテクションフィルム(WPF)も機能・耐久性や価格の異なる複数の製品を用意。親会社ソフト99コーポレーションが展開するプロ用コーティングブランド「G’ZOX(ジーゾックス)」や内装レザーリペアなどの施工サービスも扱っています。
取扱ブランドの豊富さはカーオーナー側にとっても大きな利点で、機能や価格、見た目の質感など重視するニーズに応じた選択肢になってくれます。依頼側はこれら個別のブランド製品の特性や差異を把握しておく必要もなく、車両の状態や要望に応じて同社が適切な製品・施工サービスを提案してくれ、一般カーオーナーから新車ディーラーまで施工の依頼は年々増えているそうです。

拡大する施工依頼に応える形で施工体制も強化しており、22年には東京営業所内に大規模なフィルム施工専用ブースを新設。
また、同社では元々基幹事業として鈑金塗装も手掛けているため、分解整備業を含む部品脱着や事故修理、カスタムなどもお手のもの。レーシング車両のボディ修理とラッピングを一手に引き受けていたり、近年ではBMWを中心としたチューニング・ドレスアップパーツのメーカー「3DDesign(3Dデザイン)」と協業してカスタムも手掛けており、愛車を楽しむ、個性を演出するためのサービスを一括で依頼できるショップになっています。

もちろん、PPFフル施工やラッピング+カスタムのような高額なメニューだけでなく、「ヘッドライトへのPPFのみで入庫してくださるカーオーナー様も増えてきている。最初は一部分だけにPPFやラッピングを施工した方がそれを魅力に思っていただき、何度も追加施工をご依頼いただくケースもある」そう。入庫車両もスーパーカーや高級車が多いものの、例えばスズキ・ジムニーやトヨタ・GRヤリスのような“車体価格は高くないけど熱量高めな車種”の入庫も少なくないそうです。
同社ホームページでは目安の施工金額を確認できる簡易的な見積もりフォームも用意されているので、ショップが近くにある人は一度覗いてみてはいかがでしょうか。

▼施工受付ショップ

大阪本社〒540-0038 大阪市中央区内淡路町3-1-3
東京営業所〒135-0062 東京都江東区東雲2-11-12
京都営業所〒614-8171 京都府八幡市上津屋尼ヶ池33-1
  • ソフト99オートサービス
    東京営業所(江東区東雲)
  • ソフト99オートサービス
    日本に数台レベルの希少車やスーパーカーの入庫も珍しくない同社ファクトリー

技術講習を通じて施工サービスを全国へ

施工サービスのみならず、施工ショップなどに対する製品の供給もディテイリング関連の主要事業となっています。
製品のみならず講習を通じて施工技術も提供。特にPPFでは、フィルムや施工技術に加え、事前に車両の形状に合わせてカットするプレカットシステムも施工での必要度合いが高く、Vクール公式の高精度な「CORE(コア)」やコスト面で有利なACCカットなど、国内では同社しか扱っていないシステムも用意。単一ブランドサプライヤーが展開する技術講習・システムに比べ、「施工事業に基づいた現場レベル」かつ「製品ジャンルやブランドを横断した」ノウハウが提供されるのも同社ならではです。プロの世界の内側の話なのでなかなか一般のカーオーナーが知り得ることはありませんが、「実は近所のショップがソフト99オートサービスの技術講習を受けていた」なんてこともあるかもしれません。

2022年には、同社独自の認定施工店制度を発足。製品ブランド問わず「PPF」「WPF」「ラッピング」の3つの施工サービスについて、同社の講習受講歴や一定の技能を基準に独自に認定(カーフィルムの講習・認定制度も追加予定)。ソフト99ASの店舗が近くにないカーオーナーでも、同社のノウハウを受講した認定施工店で各種施工サービスを受けられる環境を構築しています。

▶︎認定施工店一覧

1点留意しておきたいのが、認定施工店の全てが「熟練技術をもっているマイスター店ではない」こと。ラッピングにしてもPPFにしても施工には高い技術力が必要で、施工した台数(経験)によって上積みされる部分も大きく、「当社の短期間の講習を受けただけで経験豊富な施工者と同クオリティの施工をできるわけではありません」とは同社自身の弁。そのため同社認定店の中には、技術競技会で日本一を輩出した熟練ショップもあれば、始めて間もない新興事業者も混在しているため、自身の望む施工内容や予算を叶えてくれるかは直接近隣ショップと相談を重ねることが大切です。

  • ソフト99オートサービス
    プロ向けに実施されている製品販売・技術講習

オートアフター事業の“再定義”を提唱

PPFを中心としたディテイリングの施工・業販や鈑金塗装事業など、ソフト99グループのサービス部門を担うソフト99AS。ただ、そのルーツはオートリース事業で、2020年に代表を退いた小宅一現相談役が2002年に創業したことに端を発します。
元々リース事業企業に勤めていた小宅相談役が、自動車の施工事業を模索していたケミカルメーカー・ソフト99コーポレーションからの協業打診を受けてスタート。当初こそグループ企業アスモの一事業でしたが、徐々に事業成長し、2006年に今の社名に変更しました。

その頃に「親会社から要望されたクルマを直接イジる仕事」として発足したのが鈑金塗装事業。後継者不足に悩むショップとの資本提携などを重ねると同時に、「当時は旧態依然だった」という労働環境の改善にも取り組み、労働環境とサービス品質の両面で上場企業グループとしての事業基盤を構築。今ではメルセデスベンツやBMW、ミニ、ボルボ、ポルシェといった多くの輸入車メーカー・ディーラーのオフィシャルな修理工場(各認証や指定などの取得工場)として、電子制御も構成素材も高度化した最新車両にしっかりと対応する高品質な修理を手掛けています。
一方、ディテイリング事業の発足は2010年代に入ってから。「今後の自動車ケアの柱」として着目したカーラッピングが始まりで、業界内で見ると後発といえるタイミングでした。それでも、「ラッピングでもPPFでもまだ全国的に施工店が少なく、弊社だけでは施工台数に限りがある。施工店の拡大を通じて国内市場を作っていきたい」(小宅相談役)という想いから、自社での施工に加えてプロ向けの製品販売・技術講習を発足。塗装から各種フィルム施工まで器用にこなす熟練スタッフとともにディテイリング事業を発展させ、今ではカーオーナーのみならず多くのプロが同社のサポートを頼りにしています。

これらの事業変遷を一手に舵取りしてきた小宅相談役。「修理(鈑金塗装)と異なり、コーティングもPPFも本質的には『必要ではない』もの。だからこそサービスとしてもビジネスとしてもおもしろい。そしてそれは、熱烈なファンを抱える小規模な個人ラーメン店がチェーン展開すると離れられてしまうように、スモールビジネスだからこそ成立しうる部分がある」とマーケット規模に依存しないディテイリングビジネスの魅力を語ります。

  • ソフト99オートサービス
    基幹事業でもある鈑金塗装。年々ディテイリング事業の比率は高まってきているそう

その上で同氏が言及するのが「業界における変化の必要性」です。
「今は高級アパレルブランドとして定着しているエルメスも馬具工房がルーツ。自動車の普及とそれに伴う馬車の衰退を見越し、皮革製品に事業をシフトさせ、今では高級装飾品という『必要ではないもの』を通じて顧客に価値を提供している。ブランド思想の1つに『職人技の伝承』があるそうで、それはまさに今の鈑金塗装業界においても同様の変革が迫られている。人や技術を継承させつつ、今の時代に価値を提供できるよう事業を再定義しなければならず、その1つとして小規模でも成立し、かつ必要性のない『ディテイリング』が秘める可能性は大きい」と、国内自動車市場におけるディテイリングサービスの有用性を示唆。実際、同社から製品・技術の供給を受けてディテイリングサービスを拡大させている老舗鈑金ショップも出始めています。

実は業界内の小噺として、小規模事業者の多いディテイリング業界内では、「ソフト99」という大手の看板が、地方の商店街の衰退を招いたとされる大型ショッピングモールの進出さながら、身構えた見方をされることも。
それでも、自動車アフター市場を取り巻く環境は保有・販売台数の減少や車両の高度化に伴う事故・修理件数の減少、平均所有の伸長など、変化し続けているのも事実(残念なことに多くが後ろ向きな変化)。そうした国内市場で同社は、自社での施工や講習受講ショップを通じて着実にPPF・ラッピングの魅力を普及させてきました。今般、新たにラインナップにカーフィルム(ピュアゴーストなど)を加えるなど、一層の変革を遂げ続ける同社。この次、どのようなサービスを通じてカーケアを彩ってくれるのか楽しみです。

▶︎ソフト99オートサービス公式サイト

CARDE編集部

90年代前半から東京都下でショップを営むプロディテイラーと元業界紙記者のコンビ。“現場のリアルな視点”と“客観的な情報編集力”でカーユーザー第一の情報をお届...

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