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鈑金屋だからこそ! 技術・設備を利活用した美装サービス拡大中…「わたびき自動車工業」埼玉県戸田市

ショップ探訪記

技術・製品へのこだわり、クルマ・モノへの愛、カーオーナーへの想い…。お店選びの参考に、はたまたディテイリングの奥深い世界に触れるだけでも、全国津々浦々、多彩なショップを覗いてみてはいかがでしょうか。

受け継がれる老舗ボディショップの技術

「餅は餅屋」のことわざ通り、「愛車をキレイにする」場合こだわる人こそ専門ショップ・プロディテイラーに頼みたいもの。一方で、別の事業をしているからこそできる美装サービスも。
創業100年を超える埼玉県の老舗修理ショップ「わたびき自動車工業(綿引大介代表、戸田市)」では、鈑金塗装やレストアといった従来から得意とするサービスに加え、ペイントプロテクションフィルム(PPF)やエンジン・下回り洗浄などディテイリングサービスを拡充させています。

ビジネス的観点からすると、衝突被害軽減ブレーキをはじめとした先進運転支援システム(ADAS)や、事故修理時に新車への買い替えを促す保険特約の普及などを一因に事故・修理件数自体が減少傾向にあり、一企業として新たな活路を見出すという側面も。
ただ、純粋にカーオーナーにとっても、熟練の修理・塗装技術と専門設備の恩恵をディテイリングサービスという形で受けられるのは嬉しいポイント。今回は、わたびき自動車で特に注力している2つのサービスをご紹介します。

  • コーティング:クリスタルプロセス/FEYN LAB(ファインラボ)…など
  • ペイントプロテクションフィルム(PPF):Fenix Scratchguard(フェニックス・スクラッチガード)/SPPF
  • 下回り・エンジンルーム洗浄:ドライアイスブラスト
  • その他:鈑金塗装/レストア/積載車・代車あり/工場見学(予約制)
  • 都内からもアクセスしやすい戸田工場

継ぎ目のないPPF、パーツに優しいドライアイス洗浄

わたびき自動車が2020年から手掛けているのが、「fenix Scratchguard(フェニックス・スクラッチガード)」というPPFです。

  • 塗装式ペイントプロテクションのフェニックス・スクラッチガード

PPFは、透明なフィルムをボディに貼り付けて飛び石や擦り傷などから塗装面を保護するものですが、フェニックスはスプレー塗装で施工する特殊なプロテクションです。
フィルムタイプと同等以上の200μmの保護膜を形成するフェニックス。その最大の利点が、フィルム型だと必ずある「フィルムの縁」が存在せず、フィルム同士の継ぎ目がないことです。施工後の美観ではなく保護機能を主目的としたPPFでは、一定の厚みのあるフィルムの縁に時間が経つと汚れが溜まってしまったり、単純に見た目としてその継ぎ目が気になることも。継ぎ目レスのフェニックスではそうした「施工後の美観」も最大限美しく仕上がるのが特徴です。

また、通常のクリア(艶あり)/マット(艶消し)仕上げに加え、フェニックスの保護層の間にカラー層を挟むことで好きな色へのカラーチェンジも可能。すでに色をついたフィルムを使用するのではなく塗装のため、調色することで文字通り「好きな色」を演出できます。また、ボディに加えてヘッドライトやホイール、内装パネルなどへの施工も可能で、ホイールやブレーキキャリパーは微細傷からの保護とカラーチェンジというカスタム的な楽しみ方もできます。

このフェニックス、鈑金塗装で使用される専用ブースで塗装と同じように施工するため、専門設備と塗装職人が不可欠。設備はとても高価で、職人の技量は長年の経験に基づくため、鈑金塗装という本業があるからこそ実現できる側面も。また施工の際には塗装と同様にパーツを脱着するため、特に電子装置満載の近年の車両に施工する際はそれらへの対応ノウハウも必要となります。

そのため、確かな保護力と綺麗な仕上がりが魅力のフェニックスですが、ネックとなるのが施工価格。PPFの中でも高価格帯で、車両サイズやパーツ点数などにより異なるものの1台フル施工すると200万円を超えるケースも。
また、弾力性に富むポリウレタン素材のPPF(フィルムを貼るタイプ)に比べ、施工後に付着する飛び石などの傷が目立ちやすいのも1つの傾向。もちろん塗装面自体はしっかり保護されているのですが、飛び石を受ける走行が多く保護膜の見た目も気になる人は事前に確認してみると良いでしょう。

  • フェニックスの施工ではパーツ脱着を要するためその技術ノウハウも不可欠

そして今秋、同社に新たに加わった美装サービスが「ドライアイスブラスト」です。
ドライアイスの-79℃という低温度による熱収縮と、昇華する際の約750倍にもおよぶ体積膨張を活用した洗浄サービスで、主に下回りやエンジンルームなどを綺麗に仕上げることができます。

水を使わず、気体となって残らないドライアイスのパワーで洗浄できるので、不要な残留物がないのが特徴。そのため、水を使用しての洗浄が難しく手作業での清掃となるエンジンルームなども、コンピュータなどの電装品やハーネス、ゴム・樹脂系パーツへの負荷も最小限に抑えながら綺麗に仕上げることができるのです。
また、単純に「付着している汚れを落とす」ため、艶出し剤などを使用した際に起こりがちな”不自然な綺麗さ”がなく、オリジナルに近い状態に“戻る”のもこだわるオーナーにとっては嬉しいポイントでしょう。

ドライアイスブラスト自体はドイツのメーカー「グリーンテック」の機器で、日本ではグリーンテックジャパンが販売し、その実績も20年以上と確かなもの。ただ、これまでは大型の工場などで使用されてきましたが、近年機材の小型が進んだことでこうした自動車洗浄用への活用が広がってきているとのこと。

実はドライアイスブラストも、フェニックスと同様にコーティングなどをメインとするディテイリングショップではなかなか導入しづらいサービス。ドライアイスブラストでは、圧縮空気を動力源とする機器を動かすのに必要なエアコンプレッサーが必要で、下回り洗浄にはリフトアップするリフトも不可欠。電動ポリッシャー1つあれば成立する洗車・コーティングがメインのショップではこれら設備を保有しているケースは珍しく、自動車修理を営んでいるわたびき自動車だからこそドライアイスブラストを存分に活用できるのです。

  • フェニックスの施工ではパーツ脱着を要するためその技術ノウハウも不可欠

すでに何台もの施工実績を重ねているフェニックスの一方で、ドライアイスブラストはこれから本格的にサービス提供していく予定とのこと。
もちろん、ディテイリングの定番であるボディコーティングもこだわりあるサービスを手掛けており、コーティング専門ショップではないもののボディや塗装面を見極めるという点ではまさしくその道のプロ。最新の高級車をしっかり保護したいといった方から、クラシックカーやちょっと旧めの愛車を徹底的に洗浄したいといった人まで、一度相談してみてはいかがでしょうか。

本業の修理もたゆまず進化中…様々な認証取得

ディテイリングサービスを拡張中のわたびき自動車ですが、本業の自動車修理も進化を続けています。その一端は、同社が取得を進める各種認証からも窺い知れます。

同社は1918年(大正7年!)に千代田区麹町で「綿引エアーブラシ塗工場」の名で創業。これまで100年以上にわたり「現場第一主義」を貫徹し、鈑金塗装の高い技術力をもって高級輸入車の修理やクラシックカーのレストアなどを手掛けてきました。近年でもアルミボディの修理や水性塗料の導入、電子制御装置整備への対応など、自動車の進化や社会情勢の変化に応えた修理を提供し続けています。

その上で、近年注力している取り組みの1つがその高い技術力の“見える化”です。

同社では2020年に「TÜV Rheinland(テュフ・ラインランド)」日本法人が展開するゴールド認証とクラシックカーガレージ認証を、21年にはポルシェ認定BP工場の資格を取得しました。
テュフとはドイツの国際的な第三者認証機関で、世界中で様々な分野の品質や安全の検査機関として活用されています。テュフを冠したグループ組織自体が複数存在し、日本における自動車アフターサービス関連ではテュフ・ラインランド・ジャパンが鈑金塗装やガラス交換修理、ロードサービスなど様々な事業の監査・認証を展開。鈑金塗装に関する「ゴールド認証」と「クラシックカーガレージ認証」は、単純な修理技術に加えて設備環境や労働環境、顧客接遇、コンプライアンスなど事業として幅広い観点で厳格な品質を監査し、基準を満たした事業者のみに認証が与えられます。

テュフの制度は、BMW・MINIやヤナセオートシステムズ、SBI損保やソニー損保なども修理依頼先工場の選定で活用しており、わたびき自動車が取得したポルシェBP認定もその1つ。車両本体が進化し、ポルシェでもアルミニウムやマグネシウム、CFRPなどボディ素材の複合化が進む中、ポルシェが承認する修理設備・機器の保有、専門の知識・技術を要する作業者の在籍を通じて“メーカーが定める品質基準の修理”ができる工場を認定する制度となっており、綿引代表は「高い修理技術を持っているだけではダメで、技術やその品質を伝える努力をしなければ」との想いで取得しました。

  • 21年に取得したポルシェBP工場認定

実は鈑金塗装とディテイリングで共通しているのが「無資格で営業できる」という点。鈑金塗装でも「車体整備士」という国家資格はありますが、分解整備事業における自動車整備士とは異なり業務独占資格ではないので、鈑金事業者が必ず保有しているかというとそうではありません。

その中で、各種認証・認定取得を通じ、品質の可視化に積極的に取り組むわたびき自動車。前述の認証はあくまで鈑金塗装や修理に関するもので、ディテイリングでは同じような認証制度は普及していないのが現状ですが、「事業者として品質の可視化に取り組む姿勢」はカーオーナーがサービス品質を判断する上で役立つはずです。近年ではコーティングやPPFなどを提供する鈑金塗装ショップも増えてきていますので、「近くにディテイリングショップがないけど美装サービスをしたい」といったオーナーは、わたびき自動車のような鈑金ショップを探してみるのも手ではないでしょうか。

ショップ名わたびき自動車工業
住所
アクセス
〒335-0026 埼玉県戸田市新曽南3-17-4(戸田工場)
JR埼京線 戸田公園駅徒歩15分(送迎サービスあり)
電話番号048-441-4409
営業時間9:00〜18:15
定休日日曜・祝日
ウェブサイトhttps://www.watabiki-jidousha.co.jp

CARDE編集部

90年代前半から東京都下でショップを営むプロディテイラーと元業界紙記者のコンビ。“現場のリアルな視点”と“客観的な情報編集力”でカーユーザー第一の情報をお届...

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