同業のフィルム職人こそ一目置いちゃう『ファースト』…神奈川県厚木市

神奈川県厚木市のディテイリングショップ・ファースト
ショップ探訪記

技術・製品へのこだわり、クルマ・モノへの愛、カーオーナーへの想い…。お店選びの参考に、はたまたディテイリングの奥深い世界に触れるだけでも、全国津々浦々、多彩なショップを覗いてみてはいかがでしょうか。

自動車関連事業者が頼る施工品質とキャパ

コーティングにしてもカーフィルムにしても、単純な「商品」ではなく「施工を伴うサービス」なので、製品だけでなく施工技量によってもその品質は変わるもの。料理などは近いかもしれませんが、ただどんな業界でも「ウマい」か「安い」を打ち出すのがそうしたサービス店の常。そしてそれゆえに「本当にウマい店」が見つけづらいことも…。

神奈川県にあるディテイリングショップ「ファースト(山田陽一代表、厚木市)」は、特に同業や自動車販売店、カスタム・修理ショップなど業界内でその技量を評する声が多く聞こえる、まさに“知る人ぞ知る名店”。中でもカーフィルムに関しては、代表本人も表に積極的に出ない人柄ながら、プロの間ではベンチマークにしている人も少なくありません。その評判の裏付けとなる施工実績も、業界随一を自負する台数を長年にわたって施工し続けています。

同社は現在、カーフィルムとコーティングを中心に、ペイントプロテクションフィルム(PPF)やラッピング、実は専門店でも受け手が減りつつある内装クリーニングまで、一手に幅広いディテイリングサービスを提供。顧客も一般カーオーナーから車両販売店、整備・鈑金塗装・カスタムショップといった事業者まで幅広く、自社店舗での施工スタッフにディーラーやPDI(納車前整備)センターといった外部常駐スタッフまで含めると15人のスタッフが従事しています。

同社が得意とするカーフィルム1つだけを見ても、専門スタッフ3人で平均して月間200台以上を施工。国産・輸入車ディーラーからの受注はもとより、「キレイ」にこだわる複数のコーティング専門店からも依頼されていることからも、同社カーフィルムの品質の一端を窺い知れます。

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    大規模な収容力・施工キャパを備える店舗

プロでも人によって違う施工法や仕上がり

そもそもカーフィルムの施工も、コーティングと同様に施工者の技量により仕上がりのキレイさに差が出ることをご存知でしょうか。カーフィルムを貼る場合、価格やスモークの濃さ、最近では遮熱やUVカット性能、フロントに貼る際の可視光線透過率なども商品選びの判断材料になってきていますが、そもそも「キレイに貼ってもらえるかどうか」もカーオーナーにとっては重要な要素。そして指標がないので分かりづらいですが、実はこの「キレイさ」は専門店・プロによっても差があります。

仕上がりのキレイさを決める要因としては、ツノと呼ばれるシワや気泡、傷の有無といった目立ちやすいものはもちろんですが、ゴミの混入具合が分かりやすいところ。ゴミの混入は完全に防げるものではない一方で、施工の環境・技量次第でその目立ちやすさが変わってきます。
そしてこれらの仕上がりトラブルは、フィルム製品そのものに起因する場合もありますが、多くは施工の仕方で生じるもの。湾曲のあるガラス面に平面のフィルムの形状を合わせる熱成形から剥離紙を剥がして実際にガラス面に貼り付ける作業、さらにはその前後の工程のガラス面のクリーニングや必要に応じた周辺内装パーツの脱着と、一連の作業のクオリティがそのまま仕上がりのキレイさに直結します。

一方で、施工を依頼したい側にとって厄介なのが、業界的にその一連の作業の「正解」がなく、独学の若手から経験豊富な熟練職人まで判別がつきにくいこと。一般カーオーナーでは「カーフィルムをプロに依頼する」機会自体がそう多くないので「プロの品質さ」に気づきにくいですが、例えばファーストにも、一般カーオーナーからの「専門店で貼ってもらったのに見た目が汚く、問い合わせたら『カーフィルムはこんなもの』と言われた」といった相談や、新車ディーラーからの「オプションでフィルム施工した車両のクレームが多い」という問い合わせが寄せられるなど、一般・事業者問わず仕上がりに関する悩みが潜在しているのが実情なのです。

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    仕上がりを左右するゴミ噛み(赤丸)

そしてそれゆえに、作業クオリティの違いがわかる同業プロこそ、ファーストの存在や施工法に関心を示してしまう部分も。

同社では、「フィルム施工自体が好きなのかもしれない」と語る施工歴25年超の山田代表自身がいまだにフィルム施工者として現役。ここでは細かな手順ノウハウは割愛しますが、同氏が経験で培った独自の技術はスタッフにも伝授され、ショップとして高品質なフィルム施工を提供しています。
施工の一連の手順もさることながら、仕上がりのチェック方法やどの品質をOKとするかも独自基準でなおかつ厳格。ツノやシワといった目立つトラブルはもちろん、ゴミ噛みに関しても「100点=完全にゼロは実現できないため、スタッフには90点で仕上げて納車するように伝えている。ただ、この90点も客観的な指標がなく、主観で左右されてしまう。だから最終的には自分でプライドを持ってその『90点』を決めるしかない。弊社ではそれを踏まえつつ、私の経験なども踏まえた『ファーストとしての90点』をスタッフにも伝えている」と山田代表は自身のこだわりを語ります。

また、この“同社でいう90点以上の仕上がり”を保つべく必要というのが内装の脱着。メーカー・車種ごとに脱着ノウハウが必要で、近年では搭載される電子デバイスも増えてきて故障・トラブルリスクも増加。基本的に施工者にとって内装脱着は手間でありリスク要因ですが、山田代表は「全く内装脱着を行わないプロもいますし、正解はないと思う。ただ弊社は、ゴミ噛みの抑制や細部の仕上がりを追求すると外して作業するのがベストと考えている」と自社のスタンスを説明。山田代表が発起人の1人となった同業者グループでの情報交換なども通じ、新たな車種の情報も随時アップデートし、“リスクを抑えつつ必要最小限”な部品脱着を実施しています。

これら作業自体へのこだわりに加え、「顧客に対して事前にゴミの混入がゼロではないことなどを伝え、実際にフィルムを貼っている代車なども通じて目で理解してもらうようにしている」(山田代表)といった取り組みも同社が心がけているポイント。こうした作業品質と顧客コミュニケーションの積み重ねが、年間2000台以上を施工してもクレーム・問い合わせが1件あるかないかといったレベルのサービス品質を作り上げています。

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    ボルボやアウディなど輸入車ディーラーからの信頼も厚い同社

こうした話も伝わってか、施工の手間・品質の違いが分かるプロ施工者ほど「ファーストのフィルム施工ってどんなもの?」と業界内で気にされている同社。国内のみならず、山田代表が2019年にアメリカのフィルム関連メーカー主催の施工技術コンテストに参加した際も、惜しくもトーナメント途中で敗れてしまったものの、その技量は現地施工者から注目を浴びたそうです。
最近では、カーフィルムの取り扱いを開始した大手サプライヤーが技術講師に同氏を起用。山田代表自身は決して自ら表に立って発信するタイプではないものの、むしろその姿勢も相まってか本人が図らずとも周囲の高い評価を呼んでいます。

飾らず実直、それゆえに高コスパ

もちろん仕上がりのキレイさだけでなく、カーフィルムの施工時にポイントとなる製品ラインナップもスモーク、透明遮熱から発色系まで幅広くカバーしています。実は製品によって厚みや接着性、熱成形の度合いなど特性や施工性は異なり、プロでも「このフィルムは貼りづらい、仕上がりづらい」というのがあるもの。その点ファーストでは、幅広いフィルムを「山田代表基準のキレイさ」で貼ってもらうことができます。

施工だけでなく近年一段と話題になっている保安基準への適合にも積極的に取り組んでおり、今年には保安基準と同一規格で可視光線透過率を測定できるPT-500を導入。「糊・フィルムの厚みが一般的な国産カーフィルムと異なり、キレイに貼れる自信がない(あくまで山田代表の基準で)」と導入を逡巡していたゴーストフィルムの取り扱いも開始しました。

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    スモークから透明遮熱、発色系まで幅広いフィルムのラインナップ

山田代表の品質へのこだわりはカーフィルムだけではなく、ディテイリングの定番サービスであるボディコーティングでも同様。単純に高単価なハイエンド製品を、というのではなく、「どうしても専門店のコーティングというと輸入車中心で高価なものというイメージがつきつつある。ただ、弊社はコーティングをかなり安くオプション設定している中古車販売店さんなどとも付き合いがあり、廉価なコーティングにも相応の価値があると思っているし実際に提供している。一般カーオーナー様でも同様で、「高い=良い」ではなく、まずは予算や希望を聞いて適切なサービスを提供するように心がけている」と、店名同様にあくまで“顧客ファースト”な姿勢。それもカーフィルム同様、施工前の顧客コミュニケーションがサービス品質・顧客満足に不可欠と考えているからにほかなりません。

元々山田代表は、18歳で働き始めて以降、当初こそ内装クロスの仕事に携わっていたものの、結婚を機に家庭を持てる労働環境を求めてディテイリングの世界に。入社前からクルマ好き仲間のクルマにカーフィルムを貼っていた経験も買われ、入社3週間で出張施工なども任されたそう。そこからカーフィルムに加えコーティング技術も修得しつつ、1999年に23歳の若さで独立。エアロメーカーでの副業アルバイトやPDIセンターへの常駐、ディーラー・中古車販売店への出張施工など多岐にわたる経験を経て2006年に現店舗設立に至りました。
実はその長い施工経験の中で大きなクレームや仕事上のトラブルはなかったという山田代表。それでも、クレームに繋がるサービス品質を避けるべくひたすらにキレイな仕上がりを追求する姿勢は、本人のこだわり・気質に由来するようです。

ちなみに、ファーストのような「キレイに仕上げてくれるショップでカーフィルムを貼りたい」と思っても、前述したようにその見極めはなかなか簡単ではありません。職人気質な施工者も多くフロント担当スタッフなどもいないショップが多い中、一般カーオーナーが「施工時に内装は脱着する?」「熱成形はドライ?ウエット?」「ゴミの混入はどの程度?」といったことは心情的にも聞きづらいもの。
その上で山田代表にお店選びのポイントを聞くと、「クルマ屋さんが信頼を寄せているショップが分かれば1つの目安になると思うし、あとはやはり口コミが参考になるのでは。それもウェブ上のではなくリアルな知人の紹介の方が信頼できると思う」と回答。最近も、1人の顧客が職場の同僚たちにも同社を紹介し、フィルムやコーティングを依頼してくれた全員がとても満足してくれたそうです。

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    フィルムと並ぶ看板サービスのコーティング。予算・希望に応じた提案力も強み

ただ、現在のファーストには、例えば新車ディーラーのような接客専用のスタッフやスペースはなく、そうした要素をお店選びで重視する人には向かないかもしれません。逆にいうと、そのような装飾的要素がない分、高い施工品質に反して価格は相場比でも控え目で、コスパ重視な厚木市付近のカーオーナーにとっては有力な選択肢の1つになるでしょう。加えて現在、近隣エリアで一般カーオーナーが入店しやすいような趣の新店舗オープンを計画中なので、店構えなども重視する人はそれを待ってみてはいかがでしょうか。
また本記事で紹介しきれなかった同社のもう1つの魅力が若手女性スタッフの活躍。それも事務スタッフではなく、磨いたりフィルムを貼ったりと一線の施工職人として山田代表の令嬢や元アパレル店員が活躍中。男性中心かつ高齢化が進行する世界でのその稀有な光景は、また別の機会にお届けします。

ショップ名ファースト
住所
アクセス
〒243-0806 神奈川県厚木市下依知11-1063
圏央道・圏央厚木ICより約1km
神奈川中央交通・追分停留所より徒歩約10分
電話番号046-245-9909
営業時間9:00〜18:00
定休日日曜・祝日
ウェブサイトhttp://first.schoolbus.jp

CARDE編集部

90年代前半から東京都下でショップを営むプロディテイラーと元業界紙記者のコンビ。“現場のリアルな視点”と“客観的な情報編集力”でカーユーザー第一の情報をお届...

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