メーカーも普及に本腰! IKCS、フロント用遮熱フィルムFGR-900UVを新発売

IKCS
カーフィルム

カーフィルムを製造・販売するIKSC(成瀬基樹代表、大阪市東淀川区)は6月1日、新たにフロントガラスへの施工を想定した新製品「FGR-900UV」を発売しました。87%という高い可視光線透過率を保ちつつ、透明遮熱タイプとしては高い遮熱性能を発揮。同社では2022年、測定器の種別や法規制を解説した製品カタログも新規に制作、配布しており、フロント3面へのフィルム施工普及に向けた取り組みを強化しています。

高機能ガラス時代に貼りやすい新製品

細かな仕様変更を除き、プロ用カーフィルムでは新製品やモデルチェンジは数年スパンというのが珍しくありません。同社でも長い間、透明遮熱の主力製品としては「FGR-500」を販売してきました。
そうした中で登場した新製品「FGR-900UV」は、高透明を維持しつつより高い遮熱性能を追求したフロントガラス用フィルム。フロントガラス・運転席・助手席ではフィルム装着状態での可視光線透過率70%が保安基準で規定されていますが、同製品の可視光線透過率は87%(3mmのフロートガラス貼り付け時で85%)。従来品のFGR-500を若干下回るものの、特に純正ガラスの透過率が比較的高いフロントガラスでは幅広い車種に保安基準の適合範囲内で施工できるといいます。

この高い透明度の一方で、遮熱性能の指標となる遮蔽係数も0.8(FGR-500は0.89)を発揮します。1500〜2500nmという幅広い波長域の赤外線を高い水準で遮断することで、透明遮熱タイプのカーフィルムとして比較的高い性能を実現しました。

IKCSの新製品FGR-900UVの遮熱性能

同社では従来、フロント3面への施工を想定した透明タイプとして、前述のFGR-500のほか「FGR-700」「UV-8000」をラインナップ。UV-8000は有意な遮熱性能をもたずUVカットに特化しているため、透明遮熱はFGR-500(透過率90%)とFGR-700(同81%)の2製品でした。
ただ、純正ガラスの高性能化とともに可視光線透過率の低下が進み、特に運転席・助手席ではガラス単体でも透過率が70%ギリギリの車両が増加。特に透過率が低いFGR-700は施工できるシーンが減ってきているのを受け、FGR-700より透過率が高くFGR-500よりも遮熱性能が高い新製品の販売に至りました。
また、紫外線をより長い波長域である400nmまでカットすること、ロール幅が1220mmで大型のフロントガラスやサンルーフにも施工しやすいこともFGR-900UVの利点。従来品に比べてより多くの車両・場面での活用が期待される製品となっています。

純正ガラスの透過率にもよりますが、サイドガラスの透過率が低いことが多い高年式車の場合、フロントガラスにFGR-900UV、サイドガラスにFGR-500といった使い分けをすることで、保安基準の範囲内で効果的に遮熱・UVカット機能を付加することができます。ただ、実際の可視光線透過率は車種・フィルムの組み合わせで単純に判明するわけではなく、搭載するガラスの種類やその状態によっても左右されるので、詳しくはプロショップなどに相談しましょう。

IKCSの透明遮熱タイプのカーフィルム

国交省通達に先立ちPT-500活用を訴求

同社では今回の新製品発売に先立つ2022年、フロント3面施工に特化した自社製品カタログを新規に制作しました。従来から販売してきたFGR-500/700、UV-8000を「フロントシールズ」と名付けて押し出すとともに、可視光線透過率70%以上を保ったフィルム施工が合法であることや紫外線・熱の遮断の有益性、ETCなど電子機器への電波干渉リスクがないことなどを改めて解説。加えて法規制に関しても、関連法規やそれに準拠する可視光線透過率測定器PT-500の情報を掲載し、フロント3面フィルム施工の普及に本格的に乗り出しています。

田中二郎取締役・営業本部長はこの取り組みについて、「数年前から社内でも、日本のフロント3面のフィルム装着車を取り巻く環境に改めて疑義が生じた。特に可視光線透過率測定に関してを中心に実態を調査するとともに、他のフィルムメーカーとも法規制や光学への情報交換を重ね、それらを盛り込んだ昨年のカタログ発行に至った」と経緯を説明。実際、測定器PT-500の販売や積極的な情報発信は、フィルムメーカーではブレインテックに次ぐ形で、大手メーカーの中では同社がいち早く取り組んだ格好。加えて今年1月には、国土交通省からもPT-500を車検時の参考機器として提示する同様の内容の事務連絡が発されています。

同社ではこの事務連絡もフロント3面施工の普及に向けた追い風材料と認識。「現状、国内におけるフロント3面へのフィルムの装着割合は1%もないという見方があり、私たちもその水準だと感じている。正しい施工・測定をしていながら車検不適合となった場合の保証制度なども含め、適切な情報・施工法、高品質な製品とともにまずは5%程度の装着率にまで押し広げていきたい」(田中本部長)と市場拡大に意欲を示します。

IKCSの製品カタログ
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プロ定番の老舗2ブランド ルミクール/シルフィード

そもそもIKCSはカーフィルムのプロの間では定番的なメーカーです。2022年に企業グループ内の組織改変として産業資材を取り扱うショウワと合併し現IKCSとなりましたが、それまでは長らくアイケーシーの企業名で「ルミクールSD」「シルフィード」の2ブランドを展開。同じく国内メーカーのリンテック「ウインコス」シリーズと並んでプロ御用達カーフィルムとして親しまれてきました。

ルミクールとシルフィードは、どちらも可視光線が異なる7種のスモークフィルム(可視光線透過率3/7/13/20/30/46%、いずれも3mmフロートガラス貼付実測値)をラインナップしており、IR(赤外線)カット剤を含有していないのがルミクール、IRカット剤を含有した高遮熱タイプがシルフィードという位置付け。そのため、前述の透明タイプも遮熱性能が低いUV8000はルミクール、FGR-500・700や新製品FGR-900UVはシルフィードのブランド名が冠されています。
スモーク・透明のほか、シルフィードには「FM-003」、ルミクールには「MT-20」という、2021年に発売したプライバシーガラス専用のフルメタルフィルムもラインナップ。熱反射に優れる金属層とスモーク層で構成する蒸着フィルムで、FM-003では遮蔽係数0.22(MT-20も0.29)という極めて高い遮熱性能を誇っています。

また両ブランドとも、原着というフィルム製法を採用しているのも特徴の1つ。あらかじめ着色したPET樹脂を原料とする製法で、カーフィルムでは透明なPET樹脂を後から染色する染色タイプ、顔料コーティングを挟み込んだ顔料タイプ、粘着剤を着色した色糊タイプなどの製法がある中、原着タイプは高コストながら褪色や変色といった劣化が少なく、透明度も高いなど品質面で優位。加えてシルフィードは、同様に高コストなIRカット剤のITO(酸化インジウムスズ)を使用し、高い遮熱性能と透明性を両立しています。

  • IKCSのカーフィルムを施工した車両
    IKCSのカーフィルムを施工した車両
  • IKSCのプライバシーガラス用メタルフィルム
    金属膜の反射などにより優れた遮熱性能を発揮するメタルフィルム

そもそも国内では、仕上がりの綺麗さにこだわるユーザーが多い市場特性も一因に、粘着層が薄い海外製ではなく、厚い糊面でゴミを押しつぶすことができる日本特有のフィルム厚の国産製品が広く浸透しています。その中でもシルフィード・ルミクールの両ブランドは、前述の高い品質をもって“プロ用フィルムの定番”として長きにわたって業界で使用されています。

ちなみに販売数量では、IRカット機能のないルミクールシリーズの方が多いとのことで、国内カーフィルム市場では今なお、遮熱機能よりもプライバシー性が重視されている側面が垣間見られます。
またこれも余談ですが、赤外線カット機能を含まないルミクールシリーズでも、例えば最もスモークの濃いNS-003HS (可視光線透過率3%/赤外線カット率19%)の遮蔽係数は0.67で、シルフィードのSC-7030(同30%/同92%)と同等です。「スモークの濃さ=遮熱の高さではない」のと同時に、「赤外線カット率の高さ=遮熱性能の高さでもない」ことが窺えます。

ただ、実際にガラス・フィルム越しに感じる太陽のジリジリ感がどの程度抑えられるかといったあたりは、遮蔽係数以外に反射率・吸収率などによっても変わってくる部分。加えてカーフィルムは可視光線透過率も視認性も遮熱性能もフィルム単体では完結せず、元のガラス・車両との組み合わせ次第で変わってくる複雑な要素も。
それゆえカーフィルムを貼るにあたっては、製品の選び方含めて施工実績と知識が豊富な専門ショップに相談してみるのがオススメです。IKSC製品は業界の老舗定番品だけあって専門店であれば多くのショップで取り扱っていますが、もしIKCS取扱店を探したいという場合は公式ホームページを参照してみてください。

▶︎IKCS取り扱いショップ一覧

CARDE編集部

90年代前半から東京都下でショップを営むプロディテイラーと元業界紙記者のコンビ。“現場のリアルな視点”と“客観的な情報編集力”でカーユーザー第一の情報をお届...

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