すぐ再発は避けたい! プロでも差があるヘッドライトの白濁・黄ばみとり

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ガラスからポリカーボネート素材に変わってから久しく、経年による黄ばみや白濁はカーライフにおける定番悩みネタの1つ。それを表すように、ウェブ上には数多くの情報が出回っています。
2015年には車検の光軸・光量に関する検査基準が厳格化され、劣化したヘッドライトでは見た目を損なうばかりか車検不適合となる恐れも。その一方でヘッドライトユニットのLED化・高機能化が進み交換費用が高価になり、交換ではなくリペア(復元)へのニーズが高まっています。

そこでさらに頭を悩ますのが、「どのリペア手段が間違いなさそうか」ということ。現状(元の素材特性や劣化の進行具合)と要望(仕上がりの綺麗さや耐久性)によって最善策は異なるものの、一番避けたいのは「せっかくお金をかけてリペアしたのに希望する効果ではなかった」というケース。特に近年では、「プロにお願いしたのに短期間で黄ばみ・白濁が再発してしまった」ということも増えてきているそう。

なぜそのようなことが起こるのか。ディテイリングショップをはじめ幅広いプロに対し、独自のヘッドライト復元アイテムを提供するリアルテックサービス(埼玉県三郷市)矢野貴司代表にヘッドライトリペアを取り巻く現況を教えてもらいました。

▼現在の主なリペアの情報

  • 劣化の原因
    経年/太陽光(紫外線・熱)/コーティング関連などの溶剤付着
  • 劣化で起こる問題
    光量不足に伴う夜間の視界不良や車検不適合
    美観を損なう
    劣化の一層の進行(症状は自然回復しないため)
  • 主な復元方法
    DIY:市販の復元キットの使用/耐水ペーパーなどでの研磨
    プロ:研磨/研磨+専用溶剤の活用
  • 主な復元後の仕上げ・劣化予防策
    DIY:市販コート剤の塗布/ウレタンクリア塗装/市販プロテクションフィルム(PPF)貼付
    プロ:専用コート剤の塗布/ウレタンクリア塗装/プロ用プロテクションフィルム(PPF)貼付

現在ある復元・仕上げ方法は、概ね「仕上がり品質」と「コスト(費用)」は相関関係にあり、価格は安く済むが手間や時間がかかるDIYは「相応の仕上がりで耐久性は低め」、相応の費用がかかるが頼むだけのプロへの依頼は「キレイに仕上がり、耐久性は高め」といった傾向。ただ、カーオーナーにとって悩ましいのはこの品質と費用の相関がキレイに可視化されていないこと。

特に品質については、DIY用製品でもプロショップでも基本的に「キレイになる、耐久性に優れる」と謳っており、施工後にどのぐらい綺麗が続くかは経年してみないと判別できないなど、“品質の良し悪し”を判断しづらい特性があります。
そして、プロでも品質の差があるのが現状のようで、「DIYで失敗した」という例はもとより、「プロに依頼したけど黄ばみがすぐに再発した」といったカーオーナーが別のショップに依頼するケースも珍しくないそう。中には、同じプロ用復元アイテムを使用してしても、その技術の差によって仕上がりの綺麗さや耐久性に差が出ていることもあるそうです。

  • 劣化で白く曇ったり黄変が発生してしまうポリカーボネート製ヘッドライト

再発は不十分な下地処理のせい

では、その「品質の差」はどうして起こるのか。矢野代表によると「下地処理」の一言に尽きるとのこと。実にリペア作業工程の9割を占めるのが研磨で、コーティングなどで仕上げる前段階のこの下地処理をいかに適切に施工できるかが、仕上がりの綺麗さやその持続性を左右するそうです。

そもそもヘッドライトの劣化は、新品時にヘッドライト表面に施されているハードコートが劣化して剥がれかかったり、ポリカーボネート自体に細かなクラック(亀裂)が生じて発生します。なので、ヘッドライトのリペアではこのクラックを研磨作業で除去します。

ただ、このクラックの厄介な点は、粗いものならまだしも細かなクラックになる程、肉眼では確認しにくくなること。技術を有するプロではクラックが残らないよう綺麗に磨き上げますが、技量の乏しい施工者の場合は致命的なクラックが残ったまま仕上げ(コーティングやクリア塗装など)に入ってしまうケースがあるそうです。

そしてクラック除去が不十分な場合、リペア時の残留成分が残ったクラックから後々ガスとなって放出され、仕上げのコート層(もしくはフィルム層)に悪影響を与えてしまいます。実はポリカーボネートは、素材内に吸水された水分などが後に気泡などで放出されるアウトガスという素材特性があります。なのでクラックを除去しきれずそこからアウトガスが発生した場合、コーティングはもとより、相応の費用で耐久性に優れるウレタンクリアやプロテクションフィルムで仕上げていたとしても、“短期間で黄ばみなどが再発”という事態が起こってしまうのです。

  • 白濁・黄ばんで見える要因が、劣化で生じた細かなクラック(亀裂)

均一品質を図るシステム化されたリペア工程

この「研磨不足」が起こってしまう理由の1つが、プロにおいても研磨作業の工程・品質が均一化されておらず、施工者自身の経験値に依拠して作業している部分も少なくないことです。
そこでリアルテックサービスがプロ用資材として提供している「ヘッドライトリファイン」では、大きく2つのプロセスで“磨き品質の均一化”を図っています。

1つがクラックの可視化。マイクロスコープを使用し、実際のクラックを視認するとともに、ハードコートの材質とクラックの程度に応じた研磨工程を体系化。経験値豊富な磨き職人はもとより、経験の浅いプロでも“劣化状況に応じた適切な研磨”を選択できます。

  • マイクロスコープを使用し、クラックの詳細を視認

そして2点目が磨き作業自体の手順化です。目の前の傷に対してどの資材でどう磨くかは職人の腕の見せ所でもあるのですが、裏を返せば施工者の技量でバラつきが生じるということ。ヘッドライトリファインでは、使用する資材(サンダーやパッド、ペーパー)やその使用法を細かくマニュアル化しており、ポリカーボネートへのダメージを最小限にしつつクラックを効率的かつ綺麗に除去できる均一的な研磨作業をサポートしています。

  • 機材や研磨剤の番手、サンダーの動かし方まで手順化し一定品質を実現

加えて、リペア工程の最後となる研磨後の仕上げ作業として、独自の「蒸着処理」というプロセスを採用。一定温度に温めたスチーム状の特殊溶剤を吹き付けることで表面を整えるとともにコート層を形成します。
この蒸気を吹き付けて瞬時にクリアになる様は圧巻ですが、矢野代表によると「蒸着する前の下地処理が本当に大切で、蒸着時点でリペア工程の9割型は終えているようなもの。見た目が派手な蒸着処理も、腕に左右されやすい研磨での仕上げに比べ、高い品質を均一的に実現できるために採用した」とその機能性を説明します。

なお、蒸着後に塗布する最終仕上げ(劣化予防策)としてヘッドライトリファインでは専用コーティング剤を設定。ただ、施工後の持続性を最優先に求める場合は、施工ショップで取り扱っている場合に限りますが、耐擦傷性や耐紫外線に優れるプロテクションフィルムもオススメとのことです。

  • 最終工程の特殊液剤による蒸着処理。瞬く間にクリアになる

ヘッドライトリファインはプロ向けのキットなので、研磨プロセスや蒸着処理の詳細は企業秘密。例えばマイクロスコープでのクラック視認自体は機材を買えば誰でも可能ですが、「見えたクラックがどの程度のものか」を判断できる知見があって初めて機能するもの。矢野代表は元々、自動車用の各種コーティングやクリーナー、コンパウンドなどプロ用資材の製造・販売を手掛けており、前述の「高効率で均一的な研磨プロセス」は長年の開発経験から生み出された“プロのノウハウの結晶”とも呼べるものなのです。
液剤自体よりも“資材も含めたノウハウ”に品質の秘密があるヘッドライトリファイン。そのため現在はプロ相手にも資材だけの販売は行っておらず、メーカー公認の技術講習を受けたショップのみが取り扱いショップとなっています。ユーザーからすると、どのショップに依頼しても一定の品質が担保されている安心材料でもあります。

▶︎ヘッドライトリファイン施工ショップ一覧

また現在、マイクロスコープに加えてクラックを可視化(検査)する独自システムと、より耐久性を高めた新トップコート剤を開発中で、完成次第リリース予定とのこと。良好かつ均一なヘッドライト復元をサポートすべく進化を続けています。

ユーザーの利点を第一に! 時には交換も推奨

高品質なリペアを実現するヘッドライトリファインですが、いかなる劣化でも復元できるわけではありません。

というのも、あまりに深刻なクラックの場合、クラック除去に膨大な研磨時間(=作業工賃)が発生して結果的に部品交換と比べて金額差がなくなってしまったり、長時間の研磨でポリカーボネート自体にダメージが蓄積して耐久性が損なわれてしまうなど、トータルで見た場合にユーザーメリットが失われてしまうからです。
なので施工ショップでは、「“どんな傷も直せます”というのは一見プロのように見えるが、最終的な顧客の利益を考慮して現実的な選択肢を提示するのが本当のプロの仕事だと考えている」という矢野代表の考えの下、あまりにクラックが深刻な場合には交換という選択肢を顧客に提示するようにしているそうです。

  • クラックが著しい場合は復元ではなく交換を提案する場合も

もちろん、経験値に頼った研磨作業の一切がNGなわけではなく、腕一本でクラックを極力残さずに磨ききる熟練職人や、場合によっては本来は交換推奨レベルのクラックでも頑張って研磨で対応してくれるケースも。馴染みの相談しやすいショップがあれば、「ヘッドライトリファイン」の使用有無に限らず相談してみても良いでしょう。

ただ、根本の課題は冒頭で述べたようにカーオーナー側で「リペアの品質」を判別しにくいところ。「短期間での再発は最大限避けたい」と思うのであれば、システム化された復元技法を使っているショップを頼ってみるのが近道かもしれません。

▶︎ヘッドライトリファイン公式ホームページ

CARDE編集部

90年代前半から東京都下でショップを営むプロディテイラーと元業界紙記者のコンビ。“現場のリアルな視点”と“客観的な情報編集力”でカーユーザー第一の情報をお届...

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