【業界の本音?的こぼれ話vol.05】技術認定や資格は参考になる?

認定制度のイメージ写真
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当メディア記者がカーオーナー目線で気になった、編集会議や取材時の記事にはできないこぼれ話”の一端をお届け。今回は当メディア記事でプロ用製品・ブランドを紹介する際に出てくる「認定制度」について「実際どこまで参考になるのか」、自動車アフターサービス全般の資格体系と合わせて長南代表に教えてもらいました。

当サイトもオープンしてから半年程が経ち、コーティングや各種フィルムを中心に様々なディテイリング関連の「製品ブランド」を紹介してきました

そうだね。ちょっとここ数日、サイトの内部更新作業でとどこってしまったけど、
まだまだ色々なプロ用アイテムはあるからこれからもどんどん紹介していきたいね。

製品ブランドもそうですが、それに付随した認定制度も色々ありますよね。記事で発信しておいてなんですが、カーオーナーとしては「認定制度」を調べたり知っておいたりした方がいいんでしょうか?

正直にいうと、お客様側がそこまで知っている必要はほぼないと個人的には思っている。実際、僕のショップに来るお客様では「ブランド指名」みたいなのもほぼないし、あっても大手ブランドの名前がたまに挙がるぐらい。資格や認定も同様で、クルマの預け先を選ぶ上で判断材料の1つにはなるけど、そのウエイト自体はそんなに高くないのではっていうのが本音かな

「技術認定」とか「資格取得」といった文字を見ると、一定の品質が担保されているような印象を抱くのですが、そうではないのでしょうか?

そもそも認定制度の類は、ショップ(法人)とスタッフ(個人)それぞれで大まかには以下のようなタイプがあると思うんだけど、ディテイリング業界の認定の多くが3番目の企業独自制度なんだ

  • 1:法律に基づく認定(国家資格、営業許認可など)
  • 2:官公庁や第三者機関による認定
  • 3:企業独自の認定・加盟制度

例えば自動車のアフターサービス関連では、自動車整備業は国家資格である自動車整備士の資格保有者でなければできない業務で、ショップを営むには一定数の整備士資格者を置いて地方運輸局の認証を得る必要がある。だから自動車整備士は、国家資格の中でも業務独占資格であり設置義務資格でもあるんだ

ほかのアフターサービス関連だと、鈑金塗装やタイヤ交換などは資格不要ですよね

うん。でも鈑金塗装は車体整備士、タイヤ交換はタイヤ整備士という特殊整備士の国家資格がある。その資格保有者でないと業を営めないってわけではないけどね。ガラス修理も資格不要でこれに関しては国家資格もない。その代わりではないけれど、鈑金塗装やガラス修理に関しては近年、テュフラインランドというドイツ発の第三者認証機関の日本法人が認証を展開していて、ショップの一定の品質目安になりつつあるようだよ

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企業独自基準の“物差し”を読み解けるかどうか

テュフは先の3分類でいうと2番目に類する認定ですね。
で、ディテイリング関連では1・2の認定がない、と

全くないわけではなくて、厚労省管轄の技能検定としてガラス用フィルム施工技能士(建築・自動車というのがあって、まさにカーフのィルムを対象とした国家資格だよ。ただ、建築の方は入札案件で資格を必要とされたりという場合があるけど、自動車の方は…。国家資格だから「ガラス用フィルム施工技能士」を名乗れるのは資格保有者だけだけど、「持っていないとできない作業」はないし、逆に「資格をもっていなくてもトラブルリスク抑えて綺麗に貼る施工者」もいるから、フィルム施工店を選ぶ際にどの程度の判断材料になるかは…

ディテイリング関連の国家資格はそのカーフィルムだけですか?

そうだね。そもそも国家資格はスタッフやお客様の安全性、お客様側の不利益の抑制といった観点で、その事業の最低限ラインを担保する意味合いもある。一方で2、3のはそれがなくても事業を営める中で、「より高い品質を可視化」するなどのプラス要素を含んでいる。その点では、元々趣向性の強いディテイリングサービスはどうしても国家資格から縁遠いものになってしまうんだ

第三者機関の認定資格もないのでしょうか?

コーティングや洗車関連だと協会としての技能検定がいくつかあるけれど、資格取得者の数や認知度といった点で有効に稼働しているかというと…。ラッピングやPPF関連はそういった協会の技能検定もなくて、メーカーや販売店の独自制度ばかりだね。コーティングも多いのはこの独自制度だよ

先の分類でいう3番目のものですね

そう。ただ独自制度の場合、いくら「高度な技術・知識を認定〜」や「厳格な試験を通じ〜」などの文言が並んでも、その高度とか厳格が一企業の独自基準でしかないから、品質の目安になるかという点では1、2に比べて疑問の余地が残ってしまう。しかもその基準自体も、プロの間で「⚫️⚫️社の認定は厳格」とか「⚫️⚫️認定はお金を払えば誰でも取得できる」とかの情報が交わされていたりするけど、一般カーオーナーがそれにアクセスするのは現実的ではない

企業独自の認定制度は、ユーザーに対して品質を担保するというよりも、メーカー側が自社資材を使用するショップの集客を支援するといったようなマーケティング的な側面も強いですよね。「認定」というよりフランチャイズの「加盟」に近い性質というか…

うん。これはディテイリングに限らないと思うけど、認定マーク自体が「品質の見える化」の役目と同時に、「ブランド看板を生かしたマーケティングの一手段」という側面があることは消費者側としても押さえておきたいところ。単独企業ではなく協会などが実施する資格でも、純粋な品質認証ではなくそうしたビジネス的側面が強い場合もあるからね

色々な業界で「資格ビジネス」なんて言葉で、資格とか認定をビジネス化されていますもんね。それを推進する「〜協会」自体も営利的だったり…。
では、ディテイリングショップを探す際に「認定取得」とかの文言は全く参考にならないのでしょうか?

全く参考にならないというのではなく、例えば飲食店1つ決める際もメニュー・価格帯や口コミ、立地といった様々な判断材料を総合して決めると思うけど、そうした材料の1つとして見てもらえればいいんじゃないかな。認定や資格といった言葉が目についた場合は、その認定の中身も少し調べてみるといいと思う

「この認証マークはこういう品質の証」みたいのがあればわざわざ調べる必要もないと思うんですけど、今のディテイリング業界ではそれがないってことですよね

残念ながら…。だから今のところは、
・数ある判断材料の1つとして捉える
・しっかりコミュニケーションを図るスタッフを探す
ことがお店選びでは大事だと思う。当サイトでは認定制度も含めて様々なメーカーや製品、ブランドを紹介しているけど、「どれが良い、どれだったら間違いない」という比較的な見方よりも、「そういう素材・技術・サービスがあるんだ」という入り口として見てくれると嬉しいかな

比較は共通の物差しがあってはじめて作用しますもんね。技術などに強いこだわりを持つ職人が多いディテイリングの世界では、その共通の基準・物差しを作ること自体が難しいようで、コーティングでもPPFなどでも業界団体や業界共通の認定資格を作るのが困難という声も聞いたことがあります。
逆にいうと、良い・悪いだけの単一物差しでは測れないのもディテイリングの1つの魅力、ということで、これからも色々な物差しを探していきたいと思います!

CARDE編集部

90年代前半から東京都下でショップを営むプロディテイラーと元業界紙記者のコンビ。“現場のリアルな視点”と“客観的な情報編集力”でカーユーザー第一の情報をお届...

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