【IAAE2024】モノも技術も! 躍進するアジアの勢いを実感
オートアフター関連のビジネス情報が集う「第21回国際オートアフターマーケットEXPO2024(IAAE2024、主催:IAAE実行委員会)」が3月5〜7日の3日間、東京ビッグサイトで開催されました。過去最大の415社(2月19日時点)が出展し、3日間合計で前年比約20.8%増の1万7097人が来場登録。会場も例年の西展示棟ではなく南展示棟1・4階の2フロアで構成され、コーティングやペイントプロテクションフィルム(PPF)・ラッピングなどのディテイリング関連は1階の一部エリアに集約していたものの、4階の海外出展者が集まる一角にも目を見張る展示がありました。
中でも当編集部が注目したのが、415社のうち214社を占めた海外企業の出展。特にプロテクションフィルムを中心としたアジア勢の出展ブースでは、展示されている商品をはじめ、実演で披露されていた施工技術、果ては海外のビジネススタイルまで、一部ではカルチャーショックを感じる程の海外のトレンドを窺い知ることができました。
世界に広がるアジアのモノづくり力
海外企業・ブランドの出展は、商流の点で大きく2つのタイプに大別されます。1つは、すでに国内に日本法人や総輸入代理店が設けられ、製品も流通しているケース。もう1つが日本未上陸の現地法人が直接出展しているケースで、後者の場合総輸入代理店を募集するなど日本での展開を模索しています。
そして、並行輸入されている商品を除き国内に流通する商品・情報が限られるため、今回のIAAE2024でも大きなインパクトを放ったのが後者の現地法人の出展。中国を中心に以下のようなフィルム関連企業が様々なペイントプロテクションフィルム(PPF)やラッピングフィルム(WRP)などを展示していました。
・Quanjiao Guangtai Adhesive Products/MOSIN(PPF)など/中国
・CARLAS INTL Auto Parts/CARLAS(PPF、WRAP、WPF)など/中国
・Guangzhou Shengrui Auto Supplies/KKVINYL(WRAP、PPF、WPFなど。PPF関連はHyperPro)/中国
・Guangdong BOKE New Film Technology/MODU、XTTF(PPF)など/中国
・E&B/Ushield(WPF、PPFなど)/韓国
※企業名/商品ブランド名/拠点国
将来的に日本国内で商品が流通するか不透明ですが、これらの展示ブースで印象的だったのが「商品ラインナップの豊富さ」と「高い価格競争力」の2点です。
商品ラインナップについては、現状PPFの主流はクリア・マットタイプで、まだ新しい素材のカラーPPFは取り扱っていないメーカーも少なくありません。また、少なくとも国内のプロの間ではPPFとラッピングそれぞれ専用ブランドが支持されている傾向にあります。その中で前述のアジア企業は、自己修復機能や耐黄変性といった今やオーソドックスとなった機能を備えるクリア・マットはもちろん、そのクリアでも厚さの異なる複数の商品タイプを揃えていたり、カラーPPFやWPF、塩ビ素材のラッピングフィルムまでカバーしていたりと、とにかく取り揃える商品ラインナップが幅広い企業が多く見受けられました。
ちなみに上記企業の多くは2000年以降の創業で、中には2010年代に設立された企業もあるなど素材メーカーとしては比較的新興企業です。歴史こそ浅いものの、逆にフィルム生産に必要な大掛かりな製造設備は新しく、欧米などのフィルム製造先進企業の製造設備が一定の年数を経てきている中、この積極的な投資を受けた先進的な製造設備は優位で、世界各国のフィルム市場へのOEM供給も拡大しているそうです。
そして、商品の品揃えに加えて価格の安さも衝撃的でした。全ての展示商品をチェックできたわけではなく、日本未上陸の業販価格の話なので詳細は割愛しますが、上記ブースの1つでは、PPF1台分の材料費が現在国内でプロが使用している商品と比べて1/5程というものも。
また、とあるブースでは「決済や物流が進化した今は、本国でも販売店を介さずにメーカーから施工ショップに直接販売している。海外展開でも、現地に総輸入代理店1社を定めて特定のブランド名称で展開するのではなく、製品素材だけをOEM供給して自由なブランドで販売してもらう形態を推し進めている」と、素材メーカーの商流として新たなスタイルも教えてくれました。
もちろん、これらプロテクションフィルム関連の製品は商品だけで完結せず、施工技術を伴ってサービスとして成り立つもの。また商品も、実際にクルマに施工する際の施工性や仕上がりの質感、施工後の耐久性・耐候性といった品質は展示会の場で確認し切ることは難しいところ。
それでも、豊富なラインナップや高い価格競争力といった商品のパフォーマンスをはじめ、売り方への取り組みを見ても、“アジアメーカーの躍進”をまざまざと目の当たりにする機会となりました。
脱着せずともここまでキレイに!
IAAE2024のPPF・ラッピング関連では、商品展示だけでなく実演を通じて施工技術を披露しているブースも。日本で現地法人や総代理店を構えるブランドのブースで、そしてここでも中国のフィルム商品が存在感を放っていました。
中国のフィルムブランド「RWF」日本総代理店のデザインラボと、日本のラッピング大会で上位常連を輩出する施工店リンダファクトリーの共同ブースでは、3日間にわたってラッピングの施工を実演。2019年に上海で設立されたRWFは、「Revolution Wrap Film(レボリューション・ラッピング・フィルム)」の名前の通り「次世代型」を謳う商品で、塗装表面を高い水準で再現した質感が特徴。スーパーカー・高級車のモデル名を冠したフィルム商品の質感は数あるラッピングフィルムの中でも独創的で、リンダファクトリーの熟練スタッフの細やかな技術と合わさり、車両を短時間で美しくイメージチェンジするラッピングの魅力を存分に発揮していました。
また、高品質・廉価なカラーPPFを販売する中国のフィルムブランド「NKODA」(2023年からソフト99オートサービスで取り扱い開始)も、日本法人NKD JAPAN(エヌケーディージャパン)が施工実演を披露しました。このブースでは、現地中国から来日した1000台以上へのPPF施工実績を誇るという施工者が実演。商品の高い質感もさることながら、その高い施工技術にも注目が集まりました。
特に目を引いたのが、展示会場という限られた環境下、車両パーツの脱着もしない中で極めて高いクオリティで仕上げられていた点。ボディと異なるカラーのフィルムを貼り付ける場合、ボディ塗装色をしっかり隠したりフィルムの継ぎ目箇所を抑えるといった目的で、パーツ脱着が少ないPPFでもドアハンドルやミラーなど細かなパーツを、またラッピングではバンパーやフェンダーといった主要パーツまでをも外してフィルム施工するケースも珍しくありません。
そうした中、今回のNKODA現地の施工者は、ドアハンドルといった細部パーツも外さずにフィルムを貼り付け。その上で、パーツ端部の凹凸部でも下の塗装色が見えないようにキレイに処理し、やむを得ず生じてしまうフィルムの継ぎ目も目立たないように納めていました。またパネル面のゴミの混入も抑えられており、IAAE来場者はもとよりPPF・ラッピング関連の他社出展者からも「実演の技術レベルがとても高い。水や施工液の使用量も限られるこの特殊環境下で、面も細部もとてもキレイに貼り付けている。日本国内でこの水準でカラーフィルムを貼れる施工者は多くないのでは」といった声も聞こえてきました。
国内では2020年から、ADAS(先進運転支援システム)の機能保全を図る目的で整備制度が変更されており、新たな特定整備制度では、対象車両のADASセンサー類を備えたバンパーやグリルの脱着は認証を取得した事業者が行うこととなっています。ただこの認証取得には一定の人材・設備が要件となっており、ラッピング施工店を含む多くのディテイリングショップでは対応していない・できないのが実情。またこの整備制度に限らず、高機能化・高価化した近年の車両パーツは脱着すること自体のリスクも高まっているようで、一部ラッピング施工では「納車後、ラッピング施工時に脱着したパーツが不具合を起こしたことでトラブルになった」といったケースも起こっているそうです。
こうした事業環境の変化も相まってか、プロの注目を集めた中国人施工者による「パーツ脱着を伴わずにキレイに仕上げるフィルム施工」。衆人に意識を奪われず1人黙々とフィルムを貼り続けるその真摯な姿勢も目を奪われたポイントで、勢いづくアジア企業の優れた商品・高い技術力が国内プロに与えた刺激は少なくなかったようです。