注目の的はカラーPPF? 多様化するボディ用フィルム@ソフト99ASセミナー

ソフト99ASのカラーPPFのワークショップ
PPF・ラッピング

ソフト99オートサービス(甲斐康之社長、大阪府大阪市)は7月16日、東京営業所で事業者向けのラッピングとカラーPPF(ペイントプロテクションフィルム)のワークショップを開催しました。これまでボディのカラーチェンジ・装飾用フィルムとしては塩化ビニル素材のラッピングフィルムが主流でしたが、近年は各国各メーカーから色・デザイン付きのPPFも登場。ラッピング・PPFの差だけでなくそれぞれで複数のブランド製品を対象にフィルム特性や施工性の違いなどが解説され、ディテイリングショップを中心としたプロが関心を寄せました。

保護力だけでなく見た目も…カラーPPF

今回、ワークショップの対象として主に取り上げられたのが以下の製品。セミナー冒頭にそれぞれの製品特性の紹介、会後半に実車を用いたデモ実演や受講者によるテスト時間が設けられ、主にラッピングではジーマイスター山口孝二代表やKPN伊藤紀章代表、カラーPPFではP-factory井上徳広代表といった業界でも有数の施工実績を持つ施工者が講師を務めました。

  • ソフト99ASのカラーPPFのワークショップ
    世界中のメーカーのラッピング・PPFを比較、解説
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    メイン講師の1人のジーマイスター山口代表

ラッピングは、従来から広く普及する装飾用の塩ビ基材のフィルム。中でも上記4ブランドは、いずれも安定した品質を誇るキャスト製法で世界的にプロが使用する定番品。ただ、見た目に分かりやすいカラーラインナップ数をはじめ、伸縮性や柔軟性、厚み、粘着性といったフィルム特性はそれぞれに異なります。ワークショップでは、比較的薄め・柔らかめなフィルム厚と初期粘着の弱さが優れた施工性を発揮するエイブリィデニソン・シュプリームラッピングフィルム、厚め・硬めなフィルム特性が優れたグロス(光沢)を演出するオラフォル・オラカルシリーズ、施工法・価格帯などオーソドックスな上にモールなどの小さなパーツやパネル端部の処理に秀でた3M・2080/1080シリーズ、国内知名度は高くないものの171色という豊富な色数と仕上がり質感が高く評価されるヘキシス・HX20000/30000シリーズと、各製品ごとの施工特性を実践的なノウハウとともに解説されました。

これらの製品は、細かな仕様変更やカラーの追加こそ随時あるもののいずれも真新しい製品ではなく、日本に上陸してから一定の年数を経ています。一方で国内では、施工ショップによっては施工フィルムが特定ブランド製品に偏ることも珍しくなく、製品の使い分けはもとより「そもそもしっかり貼れる施工者は多くない」といった見方も業界内で一部あるのが現状。それゆえに本ワークショップで披露されたラッピング施工の基本から各製品特性に応じた施工法は、終始受講者の視線を集めていました。

今回のラッピングフィルムはいずれも塩ビ素材で、上記はその中でも大手メーカー製造・プロ用の高品質なタイプ。グロス(ソリッドやメタリックなど)やマット(サテン含む)といった豊富なカラー数からカーボンや金属調といったテクスチャタイプまで多彩なデザイン性が何よりの魅力ですが、素材性質上、飛び石や衝撃からの保護能力や耐候性といった点ではPPFに譲る部分があります。

そのラッピングフィルムの欠点を補完するのが、今回のワークショップ後半で実演されたカラーPPFです。厚めのポリウレタンを基材に塗装面保護に特化したPPFは従来、無色透明のクリア(光沢あり)かマット(艶消し)が主流で、カラーPPFはカーボン柄やカラータイプを展開するエステック製品など一部に限られていました。
ただ、近年はグロスブラックを中心に徐々にカラーPPFが増加。今回紹介されたフレックスシールドやナコダは世界的にも新鋭のブランドで、PPFながらそれぞれ50色のラインナップを誇ります。また、PPFながらドライ施工(通常はウェット施工)のフレックスシールド製品や通常のPPFよりも柔軟性に富むナコダ製品の施工性も業界的に珍しく、実演デモの際は井上代表の施工・説明に対し質問も相次ぎ、先進的なカラーPPFに対してプロの関心が高い様子が窺えました。

またカラーPPFは、飛び石や擦り傷などからの保護性能だけでなく仕上がりの見た目でもラッピングに比べたアドバンテージを有します。顕著なのがグロスカラーで、ゆず肌の少ないフィルム品質と厚みが生み出す光沢はラッピングとは一線を画すキレイさ。その質感の高さは、受講したプロから「磨き(コーティングの下地処理)がいらないレベル」といった声も聞こえてくる程で、カラーPPF単体での施工はもちろん、ラッピング施工面と比べてみると一際浮かび上がって見えます。

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    FlexiShieldのコスメティックPPF(グロスブラック)

本格普及はまだまだこれから?

好きな色を選べて仕上がりがキレイで保護性能もあって…。現時点でのボディケアの理想とも見えるカラーPPFですが、デメリットもあります。

1つは施工価格が高価なこと。傾向的にラッピングやクリアタイプPPFと比べてフィルム自体が高額で、ブランド製品によっても異なりますが、カラーPPFは同じ色のラッピングと比べるとメートル単価で2〜3倍近いケースも。また新しい製品のため施工できる職人が少ない点も施工価格を押し上げています。ただ、その高価なカラーPPFの中でも今回の紹介商品、とりわけナコダは一般的なクリアPPFと比較すると同等以下の販売価格で、こうした価格競争力の高い商品の登場がカラーPPF自体の普及に勢いをつけそうです。
また、フレックスシールドやナコダのラインナップは豊富とはいえ、ラッピングに比べると選べるカラー・デザインはまだまだ限定的。加えてカラーPPF全般が先進素材のため、一定の施工実績を持つラッピングに比べると、日本の環境下における経年後の情報(劣化具合、耐候性など)が十分に蓄積されているとは言えないのも留意点の1つです。

  • ソフト99ASのカラーPPFのワークショップ

そのため、カーオーナー視点では「どのフィルム製品が一番良いか」なんてことも気になりますが、施工価格や機能・耐候性、カラーといった各要素から自分の希望に合ったものを見つけ出したいところ。と同時に、全国で見ればラッピングにしてもPPFにしても「ブランドを跨いで幅広く精通しているショップ」はそう多くないのが現状なので、それらを相談・施工できる最寄りショップをまずは探してみるのが良さそうです。

CARDE編集部

90年代前半から東京都下でショップを営むプロディテイラーと元業界紙記者のコンビ。“現場のリアルな視点”と“客観的な情報編集力”でカーユーザー第一の情報をお届...

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