ラッピングにPPF、コーティングも! 製品広がる安定ブランド「3M」
家の壁紙や両面テープなど、身近なところにも溢れるスリーエムブランド(3M)。ディテイリング関連ではこれまで、マスキングテープやコンパウンドといった資材ツールのほか、カーフィルムやラッピングにおいて定番ブランドとしてプロから高く支持を受けてきた。日本法人であるスリーエムジャパンでは、2022年から本国北米に続きペイントプロテクションフィルム(PPF)とセラミックコーティングの国内での本格販売もスタート。大手ブランドの安定力を誇る製品がディテイリング業界でも広がりつつあります。
疎水性に優れる新型登場! 拡充するPPF
スリーエムジャパンはこのほど、「スコッチガード™️ペイントプロテクションフィルム・プロシリーズ」において、先立って販売していた「Pro4」に加えて「Pro200Gloss(200グロス)」をリリース。11月16日には、3M製品(PPFやラッピングなど)の施工や事業者向けへの販売・講習を手掛けるワイエムジーワン(山家一繁代表、東京都墨田区)で200Glossのプロ向け製品説明会を開催しました。
今回新発売した200Glossは、無色透明(グロス)タイプでPPFとしてはオーソドックスな製品。先行販売中のPro4でも無色(グロス/マットの2種類)の展開でしたが、200Glossでは大きな特徴として表面トップコートに優れた疎水性が付加されています。
元々PPFの表面は撥水というより親水に近い特性の製品が多く、ボディコーティングが一般的に普及する日本では“水弾き”を求めてPPFのさらに上にコーティングを施すケースも増えてきています。200Glossでは表面トップコートに疏水性能を付加されているため、追加施工のコーティングいらずで高い疏水・防汚性をもたらしてくれるのです。
このほか、飛び石や擦り傷からの保護能力や、経年・紫外線などによる黄変・変質への高い耐久性、微細な擦り傷の自己修復機能など、PPFとしての基本的な機能・品質も充実。元々3Mでは、自動車用製品をリリースする以前の1960年代から米軍航空機の長寿命化を果たす目的でPPRの開発をスタートしており、以後軍用機やレーシングカー、一般車両とPPFに関して業界でも頭抜けた長い歴史と豊富な実績を有しています。
なお200Glossでは、グロスボディを艶消しに仕上げてくれるマットタイプも近々追加予定。このほか従来のPro4に比べて粘着層も改良され、プロ施工者がより施工しやすい仕様にブラッシュアップされています。
ちなみに200Glossは製品名称通り200μm(粘着層含む)の膜厚で、先行販売中のPro4も同様。
現在流通するプロ用PPFの主流は、メーカーによって細かくは異なるもののおおよそトップコート(約13μm≒0.5mil)、ポリウレタンフィルム(約150μm≒6mil)、粘着層(約38μm=1.5mil)の3層で構成されており、フィルム単体で約150μm、3層合計で200μm程となっています。
PPFを施工したり専門店で説明を受けたりした経験があるカーオーナーの中には、「PPFは150μmが標準モデルで、厚めの200μmは下回りやサーキット走行などに特化した高価なタイプ」と聞いた人もいるかもしれませんが、ここでいう150μmはフィルム単体の数値。3M製品の200μmは、粘着層を含む数値のためPPF製品の中でも厚めタイプではなく標準的な膜厚といえそうです。
「スコッチガード™️ペイントプロテクションフィルム・プロシリーズ」は文字通り業務用。スリーエムジャパンでは、プロ向けの技術講習と合わせて「4スター」という名称の独自の施工技術者認定制度を設けており、カーオーナーは同社ウェブサイトから認定施工者を簡単に探せるようになっています。
元々カーラッピング用にスタートした制度ですが、今年のPPF販売とともにPPF版4スターもスタートしています。
また説明会では、同じく3Mが今年から国内で販売を開始した「セラミックコーティング」も披露されました。
塗装面に化学的に結合してコーティング被膜を形成するプロ用のボディコーティング剤で、光沢や疎水性、防汚性や対薬品性といった効果を発揮。ボディに加えてホイールやウインドウ、バイザーなど幅広い素材(ゴムを除く)に対応しているのも特徴で、説明会では塩ビ素材のラッピングフィルムへの施工も実演されました。
ラッピングフィルムは、雨や各種汚れ、紫外線など外的要因での劣化が避けられず、使用・保管の状況次第では1年も保たずに傷んでしまう場合も。コーティング自体はボディ用として先行販売される本国米国でも高い評価を得ている製品ですが、より長期間ラッピングを楽しむためのアイテムとして、ラッピングとセットでの施工を取り扱いショップに相談してみるのもアリでしょう。
今回、製品説明会の会場となったのはワイエムジーワンの本社機能を備えるカーラッピングセンター。3M特約販売店でもある同社では、従来からフィルムの印刷・加工や施工、事業者への製品販売・技術講習などを手掛けており、特にカーラッピングについては「LAPPS(ラップス)」の名称で「カーオーナーを対象とした施工サービス」「事業者を対象とした技術・ビジネス講習」の両面で市場拡大に尽力。22年10月に各事業を統合した同センターをオープンしました。
大型の出力機やプロッターなど、様々なフィルムの印刷・加工に対応する機器を取り揃えたセンター。3Mブランドの発信拠点として全国のプロディテイラーを支援するとともに一般カーオーナーへも高品質な施工を提供しているので、3Mのラッピング・PPF施工などを検討中のカーオーナーは一度訪れてみてはいかがでしょうか。
プロ御用達の業界定番アイテム ラッピング/カーフィルム
PPFとセラミックコーティングという新製品の本格的な国内展開がスタートした3M。今後の展開が楽しみな一方で、カーラッピングとカーフィルムにおいては同ブランドはプロ用製品として主要なポジションを築いています。
カーラッピングでは「1080/2080」という名称のラップフィルムシリーズがプロ御用達アイテム。“塩ビ素材のカラーフィルム”自体は3M製に限らず珍しいものではありませんが、豊富なカラーラインナップに加え、キレイな仕上がりを助けるノウハウが凝縮されています。
粘着層1つとっても、初期粘着時に位置決めしやすい(くっつき過ぎない)ようにガラスビーズを含有し、膨れを防止する空気抜け溝も設置。2019年に8年ぶりのモデルチェンジとして登場した新製品「2080」では、フィルム表面に元々透明な保護フィルムが装着(一部カラー除く)され、保管・施工時のフィルム汚損を防ぐ工夫もなされています。
こうした施工性と品質の高いバランスがプロに高く支持されており、国内カーラッピングにおける定番ブランドの1つといえるアイテムとなっています。
ちなみにラッピングでは、フィルム自体に加えて3Mのナイフレステープもプロ施工者愛用アイテムの1つ。カッターの刃でボディを傷つけるリスクがなく、安全かつ綺麗なラッピング施工をサポートしています。
また、ラッピングやPPFに比べて業界の歴史が長いカーフィルムにおいても、3Mはプロ用アイテムとして一定の支持を得ています。
カーフィルムは「3M™️スコッチティント™️オートフィルム」の名称で、用途・機能に応じて細かく製品をラインナップ。可視光線透過率規定のあるフロント3面(フロントガラス・運転席・助手席)用には「ピュアカット」や「クリスタリン(スモークもあり)」、後部座席用のスモークタイプとしては「パンサー」や遮熱効果(IRカット剤)を付加した「スモーク」と各シリーズを展開。中でもクリスタリンは、薄膜積層技術を活用した200以上の多積層フィルムで、金属膜を使用せず(電波干渉を起こさず)に暑さ対策を図れる技術的に秀でた逸品。
クリスタリンに限らす各シリーズともに、カーフィルム専門店などプロショップをはじめ、新車ディーラーのオプションとしても導入されているなど、幅広く採用されています。
ラッピング(塩ビ系装飾フィルム)やカーフィルム(PET系透明機能フィルム)に限らず、より身近なところでは建物の内装壁紙(ダイノックフィルム)や建築用ウインドウフィルムなど、世界のあらゆるところで豊富な使用実績を持つ3M製フィルム。工業系、消費財形の両面で素材から完成品までも提供し、プロ・アマ問わず高く支持を受ける背景には、世界的な化学素材メーカーとしての優れた技術ノウハウがあることが実績1つからも窺いしれます。
ブランド料? 見えない品質担保する信頼性
PPF・ラッピングからカーフィルム、コーティングまで一通りのプロ用製品のラインナップが揃った3Mブランド。
ただ、例えばPPF1つ見てみると、200μmのクリアタイプはすでに他社製品が多く流通しており、メーカーによっては色・柄付きPPFを揃えていたり、充実したプレカットシステムを強みにしていたりと、単純なプロダクトだけを見ると他社の方が先行している部分も。またラッピングやカーフィルムでも、一見すると同じような色合いやスモーク度合いの他ブランド製品も数多く、3M製品より安価な場合も少なくありません。
それでも、一部のプロが同社製品を使用する理由の1つには、安定したブランド・製品への信頼があるように思われます。特に製品品質と供給の2点における安定性は3Mならではでないでしょうか。
品質の面では、特にフィルムが「経年しないと品質差が表出しづらい」という素材特性を持っていることも一因にあります。実際プロ用フィルムだけでも、OEM品も含めると数え切れない製品が流通していますが、パッと見や短期的には問題なさそうでも時間を経たら想定しえない劣化(フィルム自体の変色・変質や劣化、剥がれなど)が起きてしまったというケースも、特にラッピングやPPFでは決して珍しいケースではありません。
他方、品質にこだわるプロ施工者でも、時間をかけなければ判別できないそうした品質を製品ごとにテスト・検証するのは限界があり、メーカー・ブランドやその製品の使用実績が一定の信頼の証となっています。
また、供給に関しても、特に近頃の原材料や輸送コストの上昇、円安などを受けてラッピングやPPFは価格上昇傾向にあり、加えて一部では品薄という事態も。特にラッピングフィルムは、豊富なカラーラインナップの分だけ製造・在庫する都合もあり、オーダーが入ったけどフィルムが届かなくて貼れないなんていう自体も発生しています。
そうした中、日本法人であるスリーエムジャパンをはじめ、特約店であるワイエムジーワンなどがしっかりと流通・在庫管理し、安定的に製品を供給している3Mの各種フィルム製品。「3Mブランド」の裏にある“見えない品質”の安定性は、現場や消費者には一見わかりづらい要素ですが、各種フィルム製品が先端化学素材で不安定な品も横行している現状を踏まえると、決して高くないブランド料といえるでしょう。
他に代替品がないわけではないけれど「3Mだから安心できる」。もし愛車を飾るアイテムでもそんなポイントを重視したい場合は、3M取り扱いショップを探してみてはいかがでしょうか。