「潮目が変わった」…JCAA、フロント3面カーフィルム施工の普及が新たな局面に

JCAA2023年度総会
カーフィルム

カーフィルム専門店らで構成される日本自動車用フィルム施工協会(JCAA、濱田浩光会長)は5月25日、都内で2023年度総会を開催しました。決算の承認や役員の選任といった代議員総会に加え、フィルムメーカーであるブレインテック宮地聖代表を招いての講演も実施。冒頭に濱田会長は、国土交通省が1月に発したフィルム装着車の車検に関する事務連絡について、事業者間で様々な情報・見解が飛び交う現状に対して「フロント3面のフィルム施工の普及において潮目が変わった」と言及し、今後の一層の普及に向けて業界団体として適切な理解を深めることの必要性を訴えかけました。

プロでも浸透していない法規への理解

講演は「フロント3面の正しい施工とは? 可視光線透過率測定に関する専門知識とは?」と題され、専門店目線で「どのように顧客に伝えるか」を焦点に話が進みました。

冒頭、濱田会長(福岡市の貼りアップ代表)はこれまで使用してきた測定器の変遷をはじめ、太陽光と体感器で遮熱性能の感じ方が異なることの事前説明や、車検時の入庫先の事前確認など、フロントフィルムを円滑に施工するための実際の自社店頭での取り組みを説明。続けて道路運送車両法などフロント3面へのフィルム施工に関する規定を改めて解説しました。

その後、JCAAで測定実行委員長を務める井上和也氏(京都市のビーパックス代表)が登壇し、指定工場や運輸支局においてフィルム装着車の車検に対する理解が進まない現状に触れつつも、「我々業界側も勉強不足だった」と発言。従来、JCAAでは協会独自の可視光線透過率測定結果証明書を発行し、毎年国土交通省に提出するなど、合法的なフィルム施工の普及を独自に推し進めてきました。これは2016年にJCAAが各運輸支局にとった「測定器の指定はない」という言質を根拠に進められた取り組みです。
一方で、今年1月の国交省事務連絡では、フィルム装着車の車検時の測定器として保安基準に準じたPT-500を参考提示。井上委員長はこの事務連絡やそれを受けて一部指定工場などで情報が錯綜する現状を受け、協会員へのPT-500の導入促進や測定器の公差を許容する測定運用を働きかけていく方策を提案。ただ、「事務連絡の受け取り側がPT-500に引っ張られすぎている」との見方も同時に示し、車検での簡易測定器の活用策も検討する取り組みの1つとして呼びかけました。

  • JCAA2023年度総会
    濱田浩光会長

「一番の被害はカーオーナー」

こうした国交省の通達やJCAAでの検討よりも以前から、PT-500の使用したフィルム施工を提唱してきたのがブレインテックです。ゴーストシリーズを筆頭にフロント3面に施工することを想定したフィルムを販売する同社。今回の総会では、フィルムメーカーではなく可視光線透過率測定器PT-500の販売者として宮地代表が参画しました。

宮地代表は、カーフィルム施工をルーツにする自社の変遷を紹介。規制強化などを受けて建築用フィルムの販売に事業の軸足を移しつつも、2015年頃から自動車用フィルムの開発に着手。光学研究や法規対応を進める最中、当時、運輸局も含めて車検が適切に行われていないがために車検不適合に陥る国内のカーフィルムの実態を目の当たりにしたそうです。
宮地代表はこうした国内カーフィルムの市場について「海外では8〜9割のクルマがフィルムを貼っていて、その多くがドレスアップや外から見えなくすることが目的ではなく、暑さ対策や快適性向上のため。日本でこの健康で安全なフィルムを貼れないことで一番被害を受けているのはユーザー」と明言。続けて、「プロが合法との認識で非合法な施工をしてしまうのが一番怖い。透明だから大丈夫といった法的根拠のないロジックでは、コンプライアンスに厳しい大手企業などでは扱えないが、逆にいえば法的根拠をもって正しく啓蒙すればカーフィルムの潜在市場はある」と、日本でのカーフィルム普及に前向きな見解を示しました。

JCAAでは、国交省の通達やそれを受けた指定工場の対応変化、PT-500の活用を推し進める見解など一連の流れを受け、総会開催時点では業界団体としての統一見解・方策は提示しないものの、その確立に向けて今後検討を進める方針です。

JCAA2023年度総会
可視光線透過率測定器の販売者として登壇したブレインテック宮地代表

フィルム普及を目指すJCAAとは

そもそもJCAAは1995年、「日本ウインドウ・フィルム工業会」の自動車用フィルムを担う賛助団体として設立。調査や研究、厚生労働省指定の技能検定試験を行う工業会はフィルムメーカーらで構成されているのに対し、JCAAはフィルム施工を手掛けるディテイリングショップやガラス専門店で構成。5月時点での会員数は全国97社に上ります。
JCAAでは、前述の可視光線透過率や法規に関する理解醸成をはじめ車検への対応方法や施工技術、販売手法など事業者同士で継続的に情報を交換。加えてカーフィルムに関する唯一の国家資格であるフィルム技能士の資格取得サポートや国土交通省への働きかけなど、カーフィルムの健全な発展に向けた多岐にわたる活動を実施しています。

JCAA会員ショップでなければカーフィルムを合法施工できない、キレイに貼れないというわけでは決してありません。ただ、カーフィルム施工業が資格不要で営業でき、フルスモークなど保安基準に適合しない施工も技術的には難しくない中で、健全なフィルム施工業を営んでいる(少なくとも営みたいという意識を持っている)ショップを見つける1つの目安になるのではないでしょうか。

JCAA2023年度総会

地域差大きいフィルムの車検対応

今回の総会でフィルム施工のプロ、中でもJCAAに加盟しているような意識が高めの専門事業者でも、改めてカーフィルムを取り巻く法規への理解を図っている状況。フィルム専門ではないディテイリングショップや整備工場、ディーラーなどでは、なおのこと理解が進んでいない側面がある現状も総会の一部では語られました。また、窓口(運輸局、指定工場など)だけでなく地域・県によってもフィルム装着車の車検に対する姿勢・温度にバラつきがあるとのこと。

なので現時点では、カーオーナーとしても“円滑にフロント3面にカーフィルムを貼る”のは簡単とはいえないところがあります。
その中で車検での面倒といったリスクを抑えて円滑・健全にフィルムを貼るためには、「自動車業界のプロ(フィルム専門店含め)が言うことが必ずしも正しくない場合があること」を前提に、見聞きする情報が「国交省ホームページ掲載の関連法規など、一次情報もしくはそれを参照した情報かどうか」を見極めて施工ショップ選びをする必要も。JCAAやリーガルゴーストショップなど専門的な理解醸成を進めているショップでは、保安基準に適した貼り方をしてくれるとともに、そんな面倒を乗り越えてまでもフィルムを貼る理由(メリット)も教えてくれるはずです。

CARDE編集部

90年代前半から東京都下でショップを営むプロディテイラーと元業界紙記者のコンビ。“現場のリアルな視点”と“客観的な情報編集力”でカーユーザー第一の情報をお届...

プロフィール

関連記事一覧