整備機器の展示会で見つけた“プロ用コーティングの進化”…オートサービスショー2025

6月19〜21日、東京ビッグサイトで自動車用整備機器の展示会「第38回オートサービスショー2025(主催:日本自動車機械工具協会)」が開催され、先進の整備機器と並んでプロ用コーティング製品も出展されました。自動運転化や電動化を目指す自動車の高度化に伴い、進化する自動車整備。整備や鈑金塗装、ディーラーなど約4万人もの業界従事者が来場する中、洗車・カーケアの分野でも従来の価値観とは異なる魅力のコーティング剤が並びました。
特に近年カーケアは、ディーラーや量販店、ガソリンスタンドなどを窓口に広くプロ施工の「ガラスコーティング」が浸透。個人の洗車用品でも、SNSなどでの情報拡散を追い風にマニア層を中心に高級ブランドが賑わいを見せています。
一方で「プロ施工店のコーティング」に絞ってみると、2010年代中盤から海外ブランドのセラミックコーティングが隆盛して以降、高単価な専門サービスはペイントプロテクションフィルム(PPF)に徐々に移行し始めるなど、製品・サービスのサイクルが成熟しつつある(=変動が少ない)側面も。そうした中オートサービスショーでは、従来のコーティングの固定観念を覆すような商品も見られ、まだまだ続く“プロ用コーティングの進化”が垣間見えました。
「コーティングはもたない」を覆す? 雪国発「AIMS(エイムス)」
石川県を本拠とするコーティングメーカー「ZERO LABO(ゼロラボ)」が展示していたのは、自社オリジナルのディテイリングブランド「AIMS(エイムス)」シリーズ。中でもイチオシは、「AIMS INFINITY(エイムス・インフィニティ)」は、今年3月のオートアフターマーケットEXPO(IAAE)で初披露したシリーズ最上位のコーティング剤です。
インフィニティは2液2層タイプで、光沢や撥水はもとより、融雪剤(=塩化カルシウム)などの薬品性に負けない強靭な被膜が強み。田中貴一代表によると、「地元石川では毎冬撒かれる融雪剤などが付着し、ワンシーズン越すとコーティングの被膜が失われ、洗車・メンテナンスをしても撥水は戻らないことが多い。カーオーナーはもちろん、新車販売時にオプションでコーティングを案内するディーラー営業マンでも『コーティングは一冬で意味なくなる』という認識が一部広がっている」と、コーティングが普及したからこその課題を指摘します。
その実情へのソリューションとして開発した、融雪剤にも負けない耐薬品性を備えるインフィニティ。インフィニティのほか、適切な下地づくりをサポートする各種コンパウンドやLEDライトなど、プロディテイラーに必要な資材を豊富に取り揃えています。すでに地元石川のほか京都や岐阜、奈良にも施工兼販売店を展開しており、今後、全国の施工ショップへの展開を推し進めていくそうです。
環境先進国からこだわり層へ ドイツの老舗「コッホケミー」
海外らしいオシャレなボトルパッケージを陳列していたのがAVAN(エイヴァン)化成のブース。同社が輸入総代理店を務めるドイツのディテーリングブランド「KochChemi(コッホケミー)」の展示です。
コッホケミーは1968年創業の老舗メーカー。洗車・下地処理用の様々な各種クリーナーからトップコート剤まで幅広いケミカルをラインナップしています。豊富な品揃えに加え、全てを自社で研究開発・製造している体制、さらには自然環境や身体的健康に高く配慮した品質も魅力で、各カーケア商品は、VDAというドイツ自動車工業会の安全性や性能を評価する規格に準拠しています。
プロ用、個人向けともに日本に輸入されている海外ブランドのカーケア商品はもはや珍しくなく、競争環境は厳しいと見えるカーケア市場。ですが、同時にボトルパッケージを詰め替えたOEM品が数多く流通し、根拠を伴わない宣伝コピーも散見される中、製造業大国とも環境先進国ともいわれるドイツのメーカーらしい品質・ブランドアイデンティティは1つの差別化ポイントに見受けられます。
また同社では、国内のカーケア市場について「競争環境は激しいが、ここ数年SNSや動画での情報拡散も背景に一般ユーザーの熱量が高まり、コーティング剤やポリッシャーなどプロの製品に関心を示すユーザーも増えてきている。メインはプロ用商品だが、カーケアにこだわる一般層にも訴求して新たな市場を掘り起こしていきたい」と、ハイアマチュア層を成長市場の1つと分析。
すでに先行してジェームスなど一部の量販店で販売をスタートしており、施工・販売を担うプロ向けへの展開はこれから本格化していくというコッホケミー。またエイヴァン化成では、同様に自社製造などの強みを持つ海外ブランドを中心に、コッホケミーに続く海外ブランドの開拓も進めていくそうです。
簡単に隙間にも吹き付け施工! クリア層を強化する「クリアベース」
プロ用・一般用ともに現在のコーティングの主流は「手塗り」。以前からプロ用の「吹き付け」タイプのコーティング剤もありますが、エアコンプレッサー・スプレーガンなど専用設備が必要で、プロショップでも取り扱っているところは限定的です。
そんな中、ワイパーブレードやケミカル製品を販売する福井県のザックジャパンカンパニーが披露したのが、「世界初」という吹き付け式コーティング「R-グラス・クリアベース」。スプレーガンではなく専用スチーマーで塗布するのが最大の特徴です。
スチーマーはヒートシリンダーを内部に備えた専用品で、施工は吹き付けと拭き上げをパネルごとに繰り返すという簡単な作業で完了。手塗りでは届きにくい隙間なども含め、施工箇所を選ばずに塗布が可能で、拭き残した残留物がムラなどになることもないといいます。
また同商品は、クリア層に乗るコート剤ではなく、塗装面のクリア層に浸透する「塗膜強化剤」という位置付け。スチーマーの熱と噴霧で塗装面に結合するというセラミックガラス層は、水シミや汚れの付着を防ぐ防汚性を発揮し、バインダー(接着剤)不使用のため適切にメンテナンスを施すことで3年以上耐久します。
キズを埋める効果はないので、施工時はコーティングと同様に洗浄や研磨といった適切な下地処理が必要。また仕上がりは強撥水ではないため、バチバチに水を弾く状態を好む場合は、公式には非推奨ながら別途コート剤を上塗りするなどの措置が必要になるそう。
ただ隙間も含めて均一に施工できる優れた施工性の恩恵は大きく、例えば表面が比較的キレイな新車では専門施工者ではなくディーラーでの内製も可能とのこと。加えてガラス面以外の幅広い素材に有効で、ペイントプロテクションフィルム(PPF)の表面保護としてもすでに活用されています。
試験的な施工を重ねて24年にトラックの展示会で披露して以降、トラックなどの商用車向け、PPF・ラッピングなどのフィルム施工車向けそれぞれに販売を展開しており、今回のオートサービスショーを1つの契機に乗用車向けへの展開も推進していくそうです。