誰でも名乗れる時代にプロとは? “PRO”品質を下支えする老舗スクール・カービューティープロ

コーティング

例えばライターやデザイナーなども同様ですが、名称・業務独占資格がなく、本人がプロを名乗れば営業できてしまうカーディテイリング。近年ではECや動画共有サイトを通じて資材も技術も独学で手軽に入手できるため、特に洗車・コーティング関連ではサイトやSNSで映える画とともにこだわりを謳っていても中身は…といったケースも。

もちろん独学でも確かな品質を提供するプロディテイラーもいる一方で、カーオーナー目線で困るのが、その品質の良し悪しを見極める術が乏しいこと。コーティングにしても各種フィルム施工にしてもサービス品質に明瞭な基準がない(一部資格制度などもあるが普及は限定的)ので、プロの看板が“確かなモノ”か“名ばかり”かが特に判別しにくいサービス種別と言えます。

そうした業界で、長年「専門スクール」という形でプロを育成し続けているのが「カービューティープロ(CBP、世田谷区上野毛/古賀大介代表)」です。1984年の発足以降、約40年にわたり2400人以上のプロ施工者を輩出。現在は全国で約350人の同スクール卒業者が腕を奮っています。特に90年代は、同種の「ディテイリング技術スクール」の看板や雑誌広告も珍しくなかったものの、時代の流れとともに減少し、CBPのように今なおプロ育成を専門に掲げる事業者はとても稀有な存在。脱サラ起業を志す異業種従事者やクルマ好きの個人、ディテイリング事業の内製化・強化を図りたい中古車販売店や鈑金塗装工場など幅広く技術・資材を提供し、アマチュアとの境界線が不明瞭なディテイリングの世界における“プロ品質”を支え続けています。

幅広い施工技術も店舗経営も 

カービューティープロ(CBP)では現在、「カービューティーコース」をはじめカーフィルム、ラッピング、ウインドウリペアの全4コースのスクールを展開。中でもボディコーティングやルームクリーニングを学べるカービューティーコースは、受講者全体の約8割が選ぶ同社の看板コース。14日間にもおよぶ集中講習を通じ、車内・ボディ・エンジンルームのクリーニングや磨き・コーティングなどの施工技術から、コート剤や塗装に関する知識、税務や営業、集客など店舗経営に関する知識まで、プロディテイラーとして必要な基礎的なノウハウを講習しています。

  • カービューティープロ
    講習会場でもある都内のCBP

また講習者は受講後、同社の独自ブランド「PRO」を冠する様々なプロ用カーケア用品を購入でき、技術・アイテムの両面で高品質なディテイリングサービスを提供できるように。近年では、洗車・コーティング・ルームクリーニングといったカーケアに限らず、ラッピングやペイントプロテクションフィルム(PPF)、ウインドウプロテクションフィルムなど需要高まるサービスの技術講習も拡大しており、資材もPROブランドに限らずエイブリィ・デニソンや3M、ARMORTEK(旧P-Shield)など厳選した資材を通じて進化するカーケアを提供しています。エイブリィ・デニソンや3M、ARMORTEK(旧P-Shield)など同社本部が厳選した資材を提供しています。

実は「PRO」ブランドは、1935年設立のアメリカ・カリフォルニア州の老舗ケミカルメーカー「BAF Industries」の専門部門。全世界のプロディテイラーに向けて自社製造のワックスや研磨剤、クリーナー、コーティング剤など各種カーケア製品を販売しており、日本のCBPが1984年、BAF社と契約を交わして国内への輸入を開始。国内で展開するにあたり、製品販売だけでなく講習を主軸とする形態をとり、現在に続いています。

  • カービューティープロ
    BAF社製品はじめCBP本部が厳選したプロ用資材


元々ディテイリング業は明確な定義がないものの、中古車販売における下取り車両の再商品化や納車前仕上げが業の成り立ちとなった部分も大きく、また今なおプロの仕事の割合として多いと見られている業務です。近年でこそ、ディーラー店頭で普及した新車時のコーティング施工オプションや、動画などで映える1台の個人車両の丹念な洗車の存在感が強まっていますが、「販売車両にいかに付加価値をもたらすか」という外注請負業務が多いのも実情。長い歴史・豊富な知見に基づくCBPの講習・資材は、単純に「クルマをキレイにする」施工術だけでなく、納期・時短作業が優先される車両販売店への対応や一般個人オーナーに向けた宣伝方法など、幅広くビジネスとして成り立つことを支援してくれるのも1つのポイントと言えそうです。

実際、全くの未経験の受講者はもとより、独学でディテイリング業を始めた施工者や、業務でコーティングを手掛ける鈑金塗装職人の受講も珍しくなく、「心構えから改心した」「やり方を抜本的に見直すきっかけとなった」といったコメントも挙がるそうで、受講後3年以内の事業継続率も95%ということからもその講習内容が実践的であることが窺えます。
現在、講習を卒業した専門事業者(プロファミリーとも呼ばれる)は延べ約2400人に上り、全国に約350人、400店舗が事業を営んでいます。それらプロファミリーを通じてカーオーナーや自動車販売店(新車ディーラーや中古車販売店)などにプロ品質のディテイリングサービスが提供されているほか、例えば東京モーターショー(現ジャパンモビリティショー)での展示車両の仕上げや大型スポーツイベントの装飾車両へのラッピング施工など、大規模・高品質が求められるシーンで全国のCBPファミリーが一手に施工を担うなど、目につきにくい水面下でもCBPのネットワークが活躍しています。

元広告デザイナーが脱サラ CBP向井の場合

「洗車が好きでいつか自分の店を持ちたかった」といった個人をはじめ、様々なバックグラウンドを持つ人がいるプロファミリー。現在、東京都小平市で施工ショップ「カービューティープロ向井」を運営する向井朋也代表も、クルマ好き・洗車好きが高じて脱サラ、プロ施工者になった1人です。

  • カービューティープロ向井
    小平市あるCBP向井/画像提供:CBP向井

CBPに入校したのは35歳の時。元々クルマが好きで愛車のフォルクスワーゲン・ゴルフをチューニングしたり洗車したりとカーライフを楽しんでいた向井代表。知らないうちに行っていた雑な洗車でボディのソリッドブラックがくすんでしまい、それを甦らせるべく客として駆け込んだ近所のプロショップがCBPだったそうです。

そこからしばらくは大学時代から続けていたグラフィックデザインの仕事に従事していましたが、1つの転機となったのが東日本大震災。働き方や将来性への疑問と同時に「好きなことで独立したい」という想いも強まる中、近所のCBPショップオーナーから講習や居抜きでの店舗譲渡の話を受け、「深く考えておらず、根拠もなかったがこれならできそうと思ってとりあえず動いた」とディテイラーとしての道を歩み始めました。
その後、会社に在籍しながらCBPのカーフィルムコース、カービューティーコースと続けて受講。一通りの基礎技術を習得し、受講後4カ月で自身のショップ開業に至りました。

ただ、技術にしても集客にしても、講習やCBPの看板(ブランド力)だけでは万全でない実情もあったそうで、「実際にショップ開業後は、様々なメーカー・車種が入庫し、硬い・柔らかいといった性質の異なる塗装への対応や、フィルム施工時の内装パーツの脱着など、講習で修得しきれなかった疑問・課題に日々直面する。お客さんも看板を出したら勝手に集まるわけはなく、SNSやブログでの情報発信にひたすら取り組んだ」と開業当時を振り返ります。

特に施工技術面では、日々の実務の中からスキルアップし続けている部分も少なくないそうで、「独立してから施工の仕事がないとその経験・技術が積めない。CBPのブランドは、今でこそ知名度がとても高いわけではないが、自動車業界内や一般のクルマ好きには知られており、特に異なる業種業界からの参入など後ろ盾がない人ほど仕事を取る上でCBPの看板は有効では」とも教えてくれました。
そして向井代表自身が上手くいったと見るウェブ・SNSでの情報発信についても、「個人ショップなのでクルマ・仕事以外の事柄も載せて店主の人柄が伝わる工夫などもした。お陰様でクルマ好きなカーオーナー様など一般個人客がほぼ100%で、クルマ談義なども交えて楽しく日々仕事させていただいている」と、CBP講習からスタートしたプロディテイラーとしての仕事に高い満足を示しています。

水面下で拡大続けるPROブランド

いわゆる“高級洗車”や“職人の磨き”のような見栄えのする作業だけでなく、車内清掃に始まる中古車の再商品化のような事業者相手の仕事の仕方や店舗運営の基礎的知識など、目に見えにくいけどプロとして必要なノウハウを提供し、日本のディテイラーを下支えする「PRO」ブランド。向井代表の言葉にもあった通り、かつては自動車専門誌などメディア露出が多く、PROステッカーが貼られた施工車両もよく見かけるなどブランド認知が高かった時代もあり、その時代と比べると一般的なブランド認知は少し鳴りをひそめたようにも。

ただ、実は今なおPROブランド・製品は拡大し続けています。
日本のCBPは2021年、自動車部品の老舗専門商社SPKが全株式を取得し、グループ傘下に入りました。SPKが事業展開する自動車の整備・補修の領域で、高い品質・確かな実績を持つカーケア専門ブランドとして、今後はその整備・補修関連の事業者にディテイリングビジネスを提唱すべく、現在は事業の連携が模索されています。

  • カービューティープロ
    国内でも一定の年代では特に高い知名度を誇るPROマーク

ただでさえ独学・セミプロが成り立ちやすいディテイリング業で、ウェブ・SNSを背景に有象無象が今まで以上に増えたようにも見受けられる今日。日本でも世界でも、長い歴史と伝統を持つPROブランドが広がる背景には、そうした時代だからこそ理論的な基礎と豊富な実績に裏打ちされた技術・製品を求めるニーズがあるのかもしれません。

CARDE編集部

90年代前半から東京都下でショップを営むプロディテイラーと元業界紙記者のコンビ。“現場のリアルな視点”と“客観的な情報編集力”でカーユーザー第一の情報をお届...

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