トレンゴブ海氏がラッピングに続き二冠! JCWA全日本PPF選手権2025
日本カーラッピング協会(JCWA、苅谷伊会長)は10月22〜24日の3日間、施工技能を競い合う「第4回全日本ペイントプロテクションフィルム選手権2025(PPF選手権)」を開催しました。広告資材の展示会「第66回サイン&ディスプレイショウ(会場:東京・有明GYM-EX)」内で実施され、同協会が運営する競技会史上最大となる67人の競技者が参加。
3日目の決勝戦は、第1、2回大会の優勝者2人を含む4人で争われ、大阪リンダファクトリーのトレンゴブ海氏が初優勝を飾りました。海氏は、5月に開催された「第2回全日本カーラッピング選手権」でも優勝。ラッピング、PPFの二冠を飾りました。
繊細さ求められるPPF施工
競技は、全てクリア(グロスタイプ)のペイントプロテクションフィルム(PPF)が対象。規定時間内に規定メニューを貼り上げ、その仕上がりを点数化して上位が勝ち抜けていく仕組みで、以下の全6ラウンドが繰り広げられました。
▼3日間の競技内容
初日(1・2R):Fフェンダー/ Rドア(全て片側)
3R:Fバンパー片側/Fドア・ミラー(片側)
4R:ボンネット(半面)
5R:ボンネット(全面)
6R(決勝):ボンネット、Fバンパー、Fフェンダー片側
▼決勝戦の結果
1位:トレンゴブ海氏…大阪府リンダファクトリー
2位:井上睦基氏…神奈川県P-Factory
3位:磯真仁氏…東京都Rocky shore
4位:鬼塚翔輝氏…大阪府TNK
特に人数が8人に絞られた3日目の5Rからは審査も一段と厳格になり、競技以上の時間をかけて入念に審査員がチェック。パネル際の処理はもとより、パネル面に貼り付けた際に透明なPPFだからこそ生じる糊ズレなどの接着層のエラーなどもつぶさに減点対象とされ、準決勝、決勝はシビアな競技時間内で仕上がりのわずかな差を競う激戦となりました。
見事優勝したトレンゴブ海氏は、ラッピング・PPF施工を手掛けるリンダファクトリーで、若いながらもPPF部門を取り仕切る熟練施工者。5月のラッピング選手権優勝も含め、過去JCWA競技会では数多くの表彰・入賞実績を誇る上位常連でもあります。
優勝を決めた後、海氏は「他の選手たちが上手くキレイに仕上げるのも知っているし、貼り付け面にできてしまった筋などもチェックされる点では、PPFはラッピングよりも繊細さを求められ気を遣う。もちろん5月のラッピング大会での優勝も嬉しかったが、普段の業務がPPF施工で前々から出場し続けてもいたので、PPF選手権で勝てたのは心の底から本当に嬉しい」とコメント。続けて、苅谷会長が「世界の大会では『1回の優勝はマグレかもしれず、2回優勝したものが本当の実力者』という見方がある」と競技会を締め括った言葉に応える形で、「次も出場する。2回優勝して、本当の実力を示したい」と、若手施工者として力強いビジョンを示しました。
安定した上位者に台頭する若手
前回の1.5倍以上の選手が出場した今大会。それでも、優勝したトレンゴブ海氏を含め、2位のP-Factory井上睦基氏(第1回優勝者)、3位のRocky shore磯真仁氏(第2回優勝者)と過去大会の実力者が上位を独占しました。
中でも井上氏は、第1回大会の優勝以降、第2回、3回、今回と3回続けて準優勝。特に今回は、競技車両が背の高いSUVで、女性で小柄な同氏にとって不利な要素もあった中で、本人としては悔しい表情を浮かべつつも見事な成績を納めました。3位の磯氏含めた上位常連者は、タイトな制限時間や初見のフィルム・車両・施工メニューという特殊環境ながら、番狂せを許さない安定した結果を残し続けており、彼らの技能や所属ショップの品質が安定して高いであろうことを窺わせます。
また、そうした実力者が揃った決勝戦で、唯一初出場だったのが大阪・TNKの鬼塚翔輝氏。2日目の第4Rでは井上睦基氏を抑えてトップ通過し、観覧者からも「無駄の少ない落ち着いた施工で、スピードが早い」といった声も聞こえてくるなど競技会を通じて注目を集めました。
惜しくも4位となった鬼塚氏は決勝戦後、「初めての出場だったので、とにかく緊張感との闘いだった」と吐露。続けて「これまで画面越しにライブ配信で観戦したことはあったが、正直その時は『なんでできないんだろう、もっと早く貼れるのに』と思っていた。ただ、実際に出場するとその難しさが分かる」と初参戦を振り返りました。
鬼塚氏が所属するTNKは、ガラス修理をメインに手掛ける施工ショップ。大手ショップで経験を積んだPPF施工歴約8年の鬼塚氏は、PPF事業の強化を図る同社の部門統括者として入社したばかり。「例えば決勝の施工メニューは、通常の業務なら倍以上の時間をかけている。競技のような短時間で貼れるのが分かったし、あとは顧客に提供できる品質に近づけるブラッシュアップをすれば、業務を大幅に効率化できる。それに気づく、目指せる良いきっかけになった」と鬼塚氏。これまで競技への出場には積極的ではありませんでしたが、「とても良い経験。次回も出場したいし、同業の知人・仲間にも出場を勧めたい」と、今後の展望とともに大会の意義を語りました。
フィルムも選手も! 海外交流加速させるJCWA
本大会では、フィルムメーカーの協賛、選手の出場の両面で海外との交流も図られました。
フィルムメーカーでは、中国「GSWF」、イギリス「MC Films」といったメーカーが初めて協賛に加わり、競技にフィルムを提供。またアメリカ「TERMIAX(ターミナックス)」も、PPF選手権の隣にブースを展示しました。
いずれもJCWAがドイツ競技会への遠征時などに交流を持ったメーカーで、まだ日本での商品流通は限定的なブランド。ただ、独自品質のクリアPPFや多彩なカラーPPF、窓用も含めた豊富なラインナップなど、既存ブランドとは異なる強みをそれぞれに持っており、今後の日本での展開が期待されます。
選手では、今大会の選手67人のうち6人がアジア各国から参加。中でも中国から参加したリェン・チュアン・チー氏は、鬼塚氏同様に始めての競技参加ながら7位で終え、敢闘賞も受賞しました。
28歳の若さながらフィルム施工歴10年、5年前からは安徽省で自身のショップを営むリェン氏。中国国内で約300人が加盟する同業者コミュニティ「中国スーパーフィルム技師クラブ(日本語訳)」に所属して日々研鑽を重ねており、初参戦で海外からの挑戦というアウェー環境下ながら3日目まで勝ち残った結果には、順位以上の施工技能の高さを窺わせます。
興味深いのは、リェン氏がPPF施工を手掛ける中国の市場。リェン氏によると、「中国では、新車にオプション施工するカーケアとしてはPPFが主流で、コーティングはもう古い。街中を走るクルマ10台のうち2〜3台はPPFを施工している。通常のセダン1台のフル施工の相場も約10000元(約21万円)程で、日本のように高額ではない」といい、PPFの普及が日本よりも相当に進んでいる模様。また、それゆえに施工ショップの軒数も多く、自国にPPF製造メーカー・ブランドも多いため、「固有のPPFブランドのみを扱う施工店ももちろんあるが、車両や顧客、ニーズに合わせてフィルムを使い分けるショップも多い」と、施工ビジネスも先行しているといいます。
そんなPPF先進国から来日し、「自国も含めて初めての競技会への挑戦で、とにかくルールへの対応と緊張が自分の中で大きかった」と感想を漏らすリェン氏。一方で、「日本人選手の細やかさには驚いた。中国では施工者が皆同じような貼り方をするが、日本人は選手ごとに違う手順・工程で施工していた。施工液1つとっても、私は常に2本だけを使う方法しか知らなかったが、多くの種類の施工液を使い分ける日本人のやり方は印象的だった」と、PPF先進国の施工者でも“日本のPPF施工シーン”から学ぶことが多かったことを明かしてくれました。


















