【業界の本音?的こぼれ話vol.04】暑くなる前だとお得? カーフィルム施工

カーフィルム/透明遮熱
カーフィルム

当メディア記者がカーオーナー目線で気になった、編集会議や取材時の記事にはできないこぼれ話”の一端をお届け。徐々に気温が上がりはじめ、車内で暑さを感じることも増えてくるこの季節。遮熱対策アイテムとして注目が集まるカーフィルムの“満足するための施工法”と“よくある誤解”を当メディア長南代表に教えてもらいました。

花粉もそうですが、気温まぁまぁ暖かくなってきましたね…。日中なんか汗ばむぐらいな日も…

日差しが強くなってきたね。屋外駐車していた車内が少し暑い、なんてことも

おっ、ではカーオーナー側としてはまだ知っておいた方が良いことがあるってことですね

カーフィルム自体、実はとても複雑かつ繊細な素材技術の上に成り立っているから、専門知識はメーカーさんなど詳しい識者にまた今度教えてもらうとして、施工する上では特に以下3つは押さえておくと施工後の満足度が上がるかも

  • 1:施工は暑さ本番前がオススメ
  • 2:スモーク≠遮熱
  • 3:遮熱性能はあっても断熱は…

とても複雑なカーフィルムの性能

やっぱり暑くなってきてからの方が混むんですか?

うん。ディテイリングショップへの施工依頼は、特にゴールデンウィーク明けから急増する傾向にあるよ。さらに梅雨明けになると、お店によってはもうある程度の予約が埋まってしまっているから、施工がお盆明けとか9月以降とか、2カ月待ちというのも珍しくない。
ちなみに夏前でも3月の決算期は、新車への施工が多い業界特性上需要が多いんだけど、ここ数年はコロナ禍での新車納車遅延を一因に少し落ち着いているね

暑さ対策としてお願いしたいのに施工が秋だと…。大規模なカー用品店だと混んでいてももう少し短期間でできそうですが…

うん。需要を見越して外部の職人なども含めて施工体制を整えている量販店だと、夏時期でももう少し早く施工できるね。
ただ、特に運転手にとって貼りたい「フロント3面(フロントガラス/運転席・助手席)」は、「施工を受け付けているショップ」自体がそう多くないんだ。可視光線透過率に関する法律・車検の問題があるし、運転中に視界に入るからリアのスモークを貼る時以上にゴミの混入を抑えて綺麗に仕上げることが求められる。最近は電子デバイスへの影響も踏まえて施工する技術も必要で、フロント3面はカーフィルムの中でも取り扱い難易度が高いんだよね

そもそも施工できるショップが少ないんですね。でもどうせ暑くなることはみんな知っているはずなのに暑さ本番を迎えてから施工依頼が増えるのは、まだカーフィルムが「暑さ対策になりうるアイテム」としてはあまり認識されておらず、「暑くなってから調べた結果たどり着いた」というカーオーナーが少なくないっていうことなのかな、と感じますね

うん。そのあたりはもう少し僕も啓蒙しないと、とは思っている。施工自体はそんなに時間かからないから、繁忙期でなければ当日か1泊2日で納車できるしね。一度体感してもらえるとリピート率も高いよ。
お店によっては閑散期にキャンペーンなどを実施しているケースもあるから、暑さ本番を迎える前の早めの時期に施工・予約すると、納期が早いだけでなく金額的にお得になるケースもあるかも

ちなみに暑さ対策というと、=日除け、=スモークというイメージもあるんですが、全部イコールではないんですよね?

そう。スモークの黒さは「可視光線(VL)」という目に見える光の波長領域をカットしていて、日焼けは「紫外線(UV)」という暑さにはあまり影響しない波長領域が主原因だから暑さに大きく影響する「赤外線(IR)」とは異なるんだ。大まかなイメージは、日焼け=紫外線(UV)、プライバシー性=可視光線(VL)、暑さ=赤外線(IR)だね。
ただ、可視光線も熱に全く影響を与えないわけではないそうだから、透明遮熱タイプとスモーク遮熱タイプを比べるとスモークの方が遮熱性能自体は高いケースがある。だけど、フロント3面は法律の規定で可視光線が高いタイプしか装着できないから自然と透明遮熱が選択肢になるんだ。逆にスモークだけど遮熱性能は高くない製品もあるから、そのあたりはショップに要相談だね

遮熱性能が高い、低いというのは赤外線をどのぐらいカットするか、を見ればいいんですかね?

そこらへんはかなり複雑なようなので、赤外線カット率=遮熱性能ではないようなんだよね。今度改めて専門家に聞きにいこう笑

わかりました笑
ちなみに遮熱と同じような言葉で断熱もよく聞きますよね。単なる言葉の違いのような気もしてしまいますし、実際「断熱フィルム」なんて言葉もよく目にします

そこも実際の使われ方なども含めて難しいところなんだけど、フィルムという製品における言葉の定義上は異なるね。詳しくはまた別の機会に解説するけど、簡単にいうと遮熱は「外→中への日射をどの程度遮るか」、断熱は「外→中、中→外の熱移動がどの程度されやすいか」という指標で、遮熱性能は「遮蔽係数」、断熱性能は「熱貫流率」という規格化された単位で確認できる。例えば建物用フィルムは、JIS規格で可視光線透過率・遮蔽係数・熱貫流率の3つの要素によってクラス分けがされているんだ。
でも、建物ガラスに比べて薄く作られている自動車用フィルムは、今の技術だと断熱性能(熱貫流率)をほぼ持ち合わせていない(貼っても貼らなくてもあまり変わらない)のが現実。だから、夏場の「外からの日射を遮る」のには有効だけど、冬場の「中の暖気を外に逃がさない」効果が今の自動車用フィルムにどこまであるかは…

なるほど。言葉・字面が違うだけでなく、もたらす機能も違うわけですね。実際ショップ店頭でどのように説明を受けるか次第ですが、誤った認識をしてしまうと後々「あれ」って思ってしまいそう…。
そもそもカーフィルム専門店さんは厳密にいうと「カーフィルム施工専門店」さんで、立ち位置的にはメーカーではなくベンダー、販売店的なポジションですもんね。製品に関しては、本質的には「詳しくはメーカーへ」というのが本筋なんですかね

もちろん施工ショップ側でも、貼り方だけでなくフィルムの機能なども勉強しているから、相談しやすいショップやスタッフさんがいるならまずは施工ショップに聞いてみてもらって、とも思うけど、正直なところ「施工のプロ」であって「フィルム製造のプロ」ではないところはあるかなぁ

では、フィルムの機能とか光学とか素材とかに関しては、今度メーカーの方に取材して参ります!

CARDE編集部

90年代前半から東京都下でショップを営むプロディテイラーと元業界紙記者のコンビ。“現場のリアルな視点”と“客観的な情報編集力”でカーユーザー第一の情報をお届...

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