【イベントレポ】JCWA主催ラッピング大会、川上氏が3連覇!S&Dショウ2022

PPF・ラッピング

日本カーラッピング協会(JCWA、苅谷 伊会長)は9月1〜3日、カーラッピングの施工技能を競う「FESPA World Wrap Masters JAPAN2022(WWM JAPAN)」を開催しました。会場は東京ビッグサイトで開催されていた「サイン&ディスプレイショウ2022(S&Dショウ、主催:東京屋外広告美術協同組合)」内で、3日間をかけた勝ち抜き戦の末、神奈川県のヤマックス川上裕貴氏が見事優勝。JCWA主催のラッピング大会で3連覇を果たしました。

肌で感じる“プロの技術” 

WWMはカーラッピングやフリートマーキングの施工技能を競う世界的な大会で、日本では2回目となる今回は37人のプロが参加。同一車種4台を対象に制限時間内に規定箇所へ決められたフィルムを貼り、仕上がりの綺麗さやトラブル(空気の混入、浮きやシワなど)の少なさを審査。一部種目ではクーラーボックスへのフィルム施工を通じ、クリエイティブ性も競われました。

3日目に行われた決勝では、大阪リンダファクトリーの林田希氏、トレンゴブ海氏、東京ラップギアの岡部和彦氏、神奈川ヤマックスの川上裕貴氏の4人が登壇。制限時間80分をかけて車両のサイド片面(フロント・リアフェンダー/前後ドア/A・Cピラー/サイドスカート)を施工。決勝に残るトッププロでも、貼り始める場所やフィルムカットの方法など細かな作業手順は各々異なり、プロの施工者が参考になるのはもちろん、素人目でも見応え十分な激戦が繰り広げられました。

  • WWM JAPAN 2022の様子
  • 決勝を戦った川上選手

4人とも、プロでも驚異的な「80分でサイド片面全部」を制限時間内に貼り終え、その仕上がりは素人目ではどれも十分に綺麗に見えるレベル。その中でも、フィルムの貼り付け位置(印刷されたロゴなどのデザインが水平かつ綺麗な位置にあるか、など)や細部の処理(パネル端の巻き込み部の綺麗さなど)などのわずかな品質の優劣を、JCWA理事らが務める審査員が厳正に採点し、川上氏が優勝に輝きました。優勝者には2023年にドイツ・ミュンヘンで開催される「FESPA WWM FINAL2023世界選手権」の出場権利と渡航費の一部負担金の副賞が贈呈され、川上氏は今後世界のトップをかけて競うことになります。

実は3連覇の川上氏のほか、リンダファクトリー林田氏も前年のS&Dショウ内で開催されたJCWA主催の大会(全日本カーラッピング選手権2021)で3位の成績を収めており、「プロの中でも技量の高い人は安定している」ことが窺えます。素人のDIYだと「たまたま上手く貼れた/貼れない」の偶発的な要素も少なくないですが、熟練の施工者の場合、そうした偶発的な要素は極力排除され、「貼る綺麗さと時間をともに高いレベルで安定させている」、つまり再現性がとても高いのがトッププロの1つの特徴といえそうです。1回きりの施工が「上手い」ことはもとより、その「上手い貼り方」を限られた時間かつ繰り返し再現できる、そんな“プロの技術”を目の当たりにする大会でした。

  • JCWA理事らによる厳正な審査。ハンガリーから特別審査員も来日
  • 表彰式の模様

▼参考リンク…決勝登壇選手の所属ショップ
1位:川上裕貴氏…神奈川県ヤマックス
2位:岡部和彦氏…ラップギア(LAPPS講師)
3/4位:林田優希氏/トレンゴブ海氏…大阪府リンダファクトリー

カーラッピング協会とは?

WWM JAPANを主催したカーラッピング協会(JCWA)は2017年に発足した一般社団法人で、カーラッピング・PPFの施工ショップや製品サプライヤーらで構成されています。協会の目的は「日本カーラッピング業界の発展と市場拡大」。それに向け、施工者の技術向上や認知拡大に取り組んでいます。

今回のWWMのような競技会の運営もそうした取り組みの一貫。実は日本は、ラッピングに関して欧米などに比べると施工技術、市場形成などの面で普及が遅れているといわれており、その中で2018年、JCWA理事も務めるワイエムジーワンがスリーエムの協賛の元、ラッピング施工技術コンテストを開催。翌19年にJCWA主催で「第1回WWM JAPAN」を名古屋モーターショー会場内で開催しました。WWMは印刷に関する国際的な協会団体FESPAが主催する世界有数のラッピング競技会で、自身もラッピング施工者として海外の大会で戦った経験を持つ苅谷会長の働きかけもあり日本大会が実現。またJCWAではラッピング以外でも、今年3月には国内で初めてというPPFの競技会「第1回全日本PPF選手権」も実施しています。

今回のWWM JAPANを終え苅谷会長は、「特に決勝に残った4人は本当に素晴らしく、19年や昨年の大会と比べてもグッと成長し、世界と戦っていけるレベルの仕上がりだと感じた」として、世界レベルの施工者育成というJCWAの活動意義とその手応えを改めて説明。その上で「出場選手や優勝選手が次の世代を引っ張る上げる役目を担ってほしいというのと同時に、いつか世界チャンピオンになってくることを願っている」と出場選手を讃え、大会を締めくくりました。

  • 大会を締めくくる苅谷会長(写真右)

JCWAでは競技会のほか、定期的にプロ向けの講習会を実施したり、ラッピング作業に特化した独自の保険を新設したりと、プロの施工作業を日々サポートしています。もちろん協会に所属していなくて高品質な施工を手掛けるショップも数多くありますが、施工の上手い下手や実績、各種サポートの有無などは一般ユーザーではなかなか判別しきれないところ。1つのお店選びの参考として協会会員ショップを覗いてみてはいかがでしょうか。

▶︎参考リンク:JCWA会員一覧

S&Dショウ会場で見かけたプロのツール

今大会の会場となったS&Dショウ2022は、その名の通り屋外広告や施設案内表示に関する各種資機材が集う展示会。看板やデジタルサイネージなどの資機材が並ぶ会場内には、JCWAのほかにもカーラッピングにまつわるブースがありました。

カーラッピング・PPF関連用品のオンライン専門ショップ「PPF SHOP(運営:デザインラボ)」のブースでは、スキージー(フィルム用ヘラ)を中心に様々なツールを展示。職人ツールながら、熟練職人はもとより若手や女性までもがつい使いたくなるような色鮮やかでデザイン性の高いツールも多い同社のラインナップ。最近では、ゴムモール部のカットや入れ込みに最適な自社オリジナルの差し込みツールなどが人気とのことです。

  • PPF SHOPブース

また、ドイツのフィルム施工工具メーカー「イエローツールズ(日本代理店:キャル)」のブースには、新製品のスキージーの姿が。各辺に異なる形状を設け1つで様々なボディ形状・場面に対応できるプロラップ360や、細部への施工に重宝するピック型ブレードなど、どちらも1つでマルチに活躍するツールで、それぞれカーラッピング(ドライ貼り)、PPF(ウェット貼り)各施工に適した素材・柔らかさの異なるラインナップが用意されていました。

  • イエローツールズのブース

両ショップとも、プロはもとより一般ユーザーでもオンラインで簡単に購入できるので、DIYで挑戦してみたい、カーラッピングはしないけどスマホ画面など身近なモノに綺麗にフィルムを貼りたい、という方は一度覗いてみてはいかがでしょうか。

▼参考リンク
ラッピング・PPF関連用品専用ショップ:PPF SHOP
イエローツールズ製品専用サイト:キャルストア

ツールのほかドイツフィルムメーカー「オラフォル」のブースも。同社のカーラッピングフィルム「オラカル」シリーズは、プロの間でも「フィルム表面の質感・見た目が上質で、同じ色でもオラカルを使う」という声が聞こえる程。ブースには、そんな主にカラーチェンジを目的に複雑な曲面にも綺麗に貼りやすい柔軟性や空気抜きに優れたカーラッピング用から、トラック・バスなどの車両広告などを主目的とした耐候性に優れるフリートマーキング用まで多彩なフィルムを展示。中には新製品として、PPFと同じポリウレタンを基材(主なPPF製品よりは膜厚が薄め)とするラッピングフィルム「オラジェット3971RA+プロスライド」も展示されていました。

  • オラフォルのブース

プロによる施工がメインのラッピング・PPFの場合、一般ユーザーがすぐに新製品を試したり目に触れたりする機会はそう多くありません。ですが、国内はもとより世界的にもフィルムの製品機能や施工技術は日進月歩。気がつけば近所のプロショップに新製品・新技術が導入されていて目の前の愛車の楽しみ方が変わる、そんな日もそう遠くなさそうです。

CARDE編集部

90年代前半から東京都下でショップを営むプロディテイラーと元業界紙記者のコンビ。“現場のリアルな視点”と“客観的な情報編集力”でカーユーザー第一の情報をお届...

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