アーネストワークス田中代表が悲願の初優勝! 業界の底上げ促すJCWA全日本PPF選手権2024

JCWA主催第3回全日本PPF選手権
PPF・ラッピング

日本カーラッピング協会(JCWA、苅谷伊会長)は6月12〜14日の3日間、その施工技能を競い合う「第3回全日本ペイントプロテクションフィルム選手権2024(PPF選手権)」を開催しました。会場は大阪南港ATCホールで同期間に開催された広告資機材の展示会「SIGN EXPO2024(サインエキスポ、主催:近畿屋外広告美術組合連合会)」内で、前回大会から約6カ月と比較的短い間隔だったものの全40人(うち1人欠員)の選手がこれまで以上に高い水準の施工技能を披露。第1、2回大会の優勝者2人を含む4人で争われた決勝戦では、アーネストワークス田中文太代表(川崎市中原区)がボンネットをはじめ一際キレイなフロントフル施工を実演し、初優勝を飾りました。

3日間にわたる競技は以下の通り。いずれも実際の車両を対象(第4R除く)に、規定の時間・パーツにフィルムを施工して仕上がり(=トラブルの少なさなど)を採点する方式。PPF施工でオーソドックスなプレカット施工(事前にパーツの形状にカットされたフィルムを貼る方法)を中心に、今大会ではバルク施工(フィルム貼り付け時にカットする方法)や純粋にカッターによるカット技術を競う種目も導入。使用フィルムもXPEL(エクスペル)3MFlexiShield(フレックスシールド)の3種類が種目ごとに指定され、PPF施工者として幅広いスキル、対応力が求められる大会となりました。

▼3日間の競技内容
・1日目
ラウンド1(40人/6分):Fフェンダー片側(プレカット)
ラウンド2(40人/6分):ボンネットハーフ(プレカット)
R1・2合計点の上位24人が2日目のR3に進出
・2日目
ラウンド3(24人/15分):Fバンパー片側(プレカット)
ラウンド4(24人/5分):アフターカット
R3・4合計点の上位8人が3日目のR5に進出
・3日目
ラウンド5(8人/20分):ボンネットフル(バルク施工)
決勝(4人/80分):フロントフル(ボンネット、Fバンパー、Fフェンダー、ミラー/ボンネットはバルク施工)

▼決勝戦の結果
1位:田中文太氏…神奈川県アーネストワークス
2位:井上睦基氏…神奈川県P-Factory
3位:松下祐也氏…神奈川県P-Factory
4位:磯真仁氏…東京都Rocky shore

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    4人で争われた決勝戦

“3度目の正直”を手繰り寄せた若き経営者 

優勝した田中文太選手は、川崎市でPPF施工専門店「アーネストワークス」を営んでおり、現在は施工者というよりも店舗運営など経営者としてその手腕を奮っています。2018年にPPF施工者として独立し、21年に26歳の若さで自社店舗をオープン。今年4月には横浜市に新工場もオープンするなど、若いながらもPPF事業の実績豊富で勢いに乗る新鋭の経営者でもあります。

PPF選手権には2022年の第1回大会から参戦。業界内の前評判では優勝候補の呼び声も高かったものの、第1回は2日目で敗退、23年の第2回は3日目第4Rで5位と惜しくも決勝進出を逃していました。

大会後、田中氏は「第5ラウンドまでを終えた時点で井上睦基選手(第1回優勝者)や磯選手(第2回優勝者)との点数の差を受けて気持ち的に萎えていた。優勝したことに僕が一番ビックリしている」とコメント。
前回、前々回の大会結果も含めて「大会で結果を残せていなくても普段の実務(施工サービスの品質)には自信を持っていて、こだわりを捨てきれない部分がこれまでの競技の点数に響いていたと思っている。今回の決勝戦でも、バンパーを貼り終えた時点で4人の中で一番遅れてバンパーを施工している中、観戦する仲間から『早く進めないと貼り切れないよ』と声を掛けられ、その一言で吹っ切れた。加えてJCWA苅谷会長が全選手に呼び掛けた『最後まで諦めるな』の一言は胸に響いていたし、それがなかったらどこかで諦めていたかもしれない」と回想。今後はスタッフ育成など経営に注力することから次回大会の出場は見送る意向を示しつつ、「PPFを約10年やってきた集大成を見せたいという気持ちもあったので、有終の美を飾れて嬉しい」と悲願の初優勝に素直な感情を吐き出しました。

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    優勝したアーネストワークス田中文太氏

個人大会ながら“ショップ力”も垣間見えた大会結果

田中文太氏がチームワークを勝因の1つに挙げたように、3回目を迎えた今大会、強く見受けられたのが在籍ショップの同僚や社外パートナーといった“日常的に施工を共にするチーム”の存在感です。田中氏を優勝に導いた競技中の声掛けや競技前後の情報共有といったチーム内サポートもあってか、PPF選手権はあくまで個人単位での出場ですが、今大会では上位陣を特定のショップ・チームが占める結果となりました。

決勝戦を見ても、Rocy Shore磯真仁氏は今回こそフィルム破断により4位となってしまったものの前回大会の優勝者。そして普段は、フリーランスのPPF施工者として田中氏が営むアーネストワークスのサポートに入っており、同じ会社在籍ではないものの1つのチームで実務に当たっています。

そして、惜しくも準優勝で涙を飲んだ井上睦基氏は初代王者で前回大会も準優勝と、田中氏もコメントしていた通り大会参加者の中でも圧倒的な実力の持ち主。その彼女が在籍する施工専門店「P-Factory」は今大会、松下氏が3位に輝いたほか井上博統氏も8位と上位成績者を多く輩出。決勝戦では、隣り同士で施工する井上睦基氏と松下氏の一部シンクロする洗練された動きに観戦者から感嘆の声も挙がり、実況からも「高校でいうと甲子園常連校」といったワードが飛び出すなど、“ショップとしての施工力の高さ”を強く示しました。

もちろん、時間や使用フィルムに制限がある大会競技と実務では異なる部分も少なくなく、優勝した田中氏も「大会で結果を残せていなくても実務の品質には自信を持っていた」という通り、「大会成績=ショップのサービス品質」とは言えません。
ただ、回を重ねるごとに上位陣の在籍施工ショップが常連化しつつあり、今大会第4Rのような新種目が登場しても大きな番狂せなく上位陣が順当な結果を残したあたり、PPFの施工技能は、個人の能力やその場の運などもあるものの、その施工者が身を置く日常の実務やその環境、その品質に依拠する部分が多いことが窺えます。

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キャリアの浅い施工者も急成長中

上位常連選手やその在籍ショップの底堅い施工技量が示された第3回PPF選手権。一方で、そうした上位成績者に引っ張られる形で実務歴の浅い若手や初出場の施工者らが躍進する姿も見られました。

施工後の仕上がりを評価するPPF選手権の各種目ですが、その時間設定はシビアで、前回大会までは各ラウンドで「時間内に貼り終えられない(=採点対象外)選手」もちらほら。ただ今大会では、初日第1ラウンドからほぼ全ての選手が規定メニューを完遂。前回大会よりも好成績を納めた若手施工者も多く、特に過去のPPF選手権に参加経験のある施工者においては「他の選手を見て吸収した施工ノウハウ」を糧に着実に技能を向上させているようです。

また、選手の中には上位常連ショップに直接出向いて技術講習を受けた施工者もいたそうで、実際に強豪施工店P-Factoryで講習を受けて今大会に挑んだいくつかのプロショップからは、「スタッフを講習に行かせて良かった。心構えから実際の施工仕上がりまで、行く前と後では大きく変わった」「実務でPPFを施工する中で、どこまで仕上がりを追い求めるかなど自社だけでは解決できない課題に行き詰まっていた。細かなことまで疑問を解消できた」と、プロ施工者でもショップの垣根を超えて日々技術研鑽を重ねていることを明かしてくれました。

全大会でメイン審査員を務めたJCWAの鈴木敦氏、井上徳広氏の両理事も「第1回はもとよりわずか6カ月前の第2回大会と比べても、明らかに参加者のレベルが上がってきている」と総評。「上位陣も大会慣れなどもあってより良い施工を見せているが、これまで結果を残せていなかった若手選手たちが急激に成長している」との見解を見せており、PPF業界(少なくとも大会参加者)においては、その施工技能は着実に底上げされてきているようです。

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    第1回大会からメイン審査員を務める鈴木理事

CARDE編集部

90年代前半から東京都下でショップを営むプロディテイラーと元業界紙記者のコンビ。“現場のリアルな視点”と“客観的な情報編集力”でカーユーザー第一の情報をお届...

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