施工だけでなく特定整備やプロの支援も! 時代とともに進化続ける『フィット』…埼玉県三郷市
技術・製品へのこだわり、クルマ・モノへの愛、カーオーナーへの想い…。お店選びの参考に、はたまたディテイリングの奥深い世界に触れるだけでも、全国津々浦々、多彩なショップを覗いてみてはいかがでしょうか。
整備や車両販売などと異なり、届出や免許など許認可が不要のカーディテイリング業。ただここにきて(特に24年に入って以降)、特定整備の認証を取得するプロショップも出てきています。
埼玉県三郷市で創業30年を迎えた施工ショップ「フィット(矢野貴司代表)」は23年、自社の隣接地に白基調の内装と高度な整備機器を備えた第2施工場を開設。コーティング施工(塗布)場とエーミング作業場を兼ねたスペースを新たに構築し、24年1月には特定整備(電子制御装置整備)の認証を取得しました。
先進運転支援システム(ADAS)を装着した車両が広く普及し、車両の高度化が進む今日、長年にわたりコーティングやカーフィルム、ガラス関連の施工サービスを提供してきたディテイリングショップも、その車両の安全機能を担保しつつサービス提供するプロショップへと進化しつつあります。
- カーフィルム:IKCS(シルフィード・ルミクールなど)/ブレインテック(ゴーストシリーズ)/リンテック(ウインコスシリーズなど)/…など
- コーティング:自社オリジナル/FEYNLAB…など
- ガラス交換・修理・リペア、エーミング
- その他:ヘッドライト復元/ペイントプロテクションフィルム(PPF)/ラッピング…など各種施工/積載車あり/代車あり/特定整備認証取得
ガラス交換はエーミングもワンストップ
1994年に創業したフィットは、今年30年を迎える老舗の施工ショップ。定番のボディコーティングやカーフィルムを中心に、一般カーオーナーから国産高級車ディーラーまで幅広い顧客に支持されています。
中でも同社が得意とするのが、カーフィルムやガラスの磨き・リペア・修理など、自動車ガラスに関連した施工サービスです。90年代から2003年の規制強化まで同社の黎明期を支えたカーフィルムは、今でもゴーストフィルムや保安基準に即した測定器(PT-500)による可視光線透過率測定など最新のサービスをラインナップ。また、頑固なウロコなどを除去しクリアな視界を復元するガラス磨きは、自社製造のケミカル・ツールを用いたこだわりの独自手法で、同業プロも師事を仰ぐクオリティです。
そして、「ガラスに関連するものは全てカバーしたい」との想いで2000年代中盤から手掛けるガラス交換も主力サービスの1つ。飛び石などによるひび割れの修理、遮熱性能やドレスアップ効果を備える社外品への交換などその施工実績は豊富で、矢野代表は「特にコートテクト(金属膜がコーティングされた熱反射ガラス)への交換実績は発売当時から業界有数と自負しており、近年ではトヨタ・ハイエースの運転席・助手席のサイドガラスを、ゴーストフィルムとセットで高透過率ガラスに交換するサービスも好評」と、人気のガラス関連サービスについて説明してくれました。
また今般、同社が特定整備(電子制御装置整備)の認証を取得したのも、このガラス交換サービスの事業拡張の一環です。
特定整備は、衝突被害軽減ブレーキやレーンキープシステムといったADAS搭載車の普及を背景に、2020年に改正された道路運送車両法に基づく制度。対象の車両・装置についてセンサー・カメラ類の脱着・調整などを電子制御装置整備と規定し、認証事業者のみが行える作業としてます。この電子制御装置整備はカメラやレーダー自体に加え、それらを備えたフロントガラスやグリル、バンパーなどの脱着も対象。これまでは無資格・個人でも行えたこれらの作業が、対象車両・装置の場合は特定整備認証事業者しか行えず、交換後にはエーミング(装置の校正・調整)も必要となっているのです。
フィットでは、新設した第二施工場に専門の講習を受けた整備士や対応の整備機器、一定のスペースなど電子制御装置整備を行える環境を一から構築。主にガラス交換を行った車両を対象に必要に応じてエーミングを実施しています。
エーミング用に新設した整備機器は、カメラ・センサー類の補正のみならず四輪アライメントの測定・調整も可能なアライメントテスターで、交換したガラス周辺だけでなくそもそも車両のタイヤ・足回りが適正な状態であることを確認できる優れモノ。加えて様々なメーカー車両・モデルに対応したスキャンツール(故障診断機)や、作業中に安定した電圧電流を供給できるバッテリーチャージャーなどと合わせ、幅広い車両を素早く作業できる環境を整えています。
矢野代表はこの大掛かりな設備投資について、「クルマのガラスで困ったカーオーナーがウチに来てくれれば面倒なく解消できるようにしたい、というのは昔から変わらない考え。外注を挟まないワンストップのサービスは、納期でも価格でもお客様にメリットになる。せっかく設備を整えたので、ディテイリングショップや鈑金工場など近隣でエーミング作業を必要とする事業者がいればそのサポートも今後はしていきたい」と今後の展望も含め話してくれました。エーミングの実施に際しては、カーオーナーに対して入庫前にその必要性や費用を接客時に案内。メーカーや車種、内容によっては全てのエラーを解消できるわけではないことなども含め丁寧に説明し、法制度としても作業内容としても透明性のあるサービスを提供しています。
業界を30年生き残る柔軟な事業展開と強い探究心
ディテイリングショップでの特定整備の認証取得は、主に2つの理由で現状ではまだ進んでいるとはいえない状況です。1つが小規模・個人事業が多くスペースや整備機器、工員(整備士資格)などの整備環境を揃えるのが容易ではないこと、もう1つが特定整備に該当する作業を行わず認証を必要ないと判断するケースもあることです。
では、特定整備認証を取得したフィットがディテイリングショップとして稀有かというと、実はショップのルーツ的には業界の王道的な側面も…。
矢野代表がフィットを創業したのは29歳の時。会社員だった矢野代表は怪我での休職中、自動車雑誌を眺める中でふとコーティング業の独立開業スクールの広告に目が留まったそう。「漠然と自分でビジネスを、とは考えていて、結婚して子どももいたから『30歳を迎える前に』という想いで踏み切った」と脱サラ当時を振り返ります。基礎技術をそこで学んだ後に創業し、近隣の国産車ディーラーなどを主な顧客にして1997年には法人化。
90年代に業界大手の講習から足を踏み入れ、2000年代前半まで流行っていたカーフィルムで繁盛した点は、まさに“日本のプロディテイラー”の王道パターンの1つといえるような軌跡です。
一方で、その繁盛の源だったカーフィルムの規制強化による需要減、続く2011年の震災に伴う消費の冷え込みなど、2000年代以降の逆風を受けて閉業に追い込まれることが珍しくなかったのも国内プロ業界の定型パターンの1つ。事業環境が変化するこの30年間を続けてこれた国内プロショップは、統計こそないものの決して多数派ではないようです。
その中でフィットが今なお事業拡張を続ける背景には、単に施工サービスが顧客に支持されているのみならず、矢野代表の柔軟な発想・事業展開も大きく寄与していそうです。矢野代表はカーフィルムの規制強化後、需要の冷え込みを受けてコーティング、カーフィルムに次ぐ事業柱として本格的にガラス修理を発足。同時期には、業界では先駆けて自社ホームページも立ち上げ、ディーラーなどからの下請けが主だった中で一般カーオーナーに向けたサービス提供にも取り組み始めました。
こうした各施工サービスに加え、2015年にはケミカル製造メーカー「リアルテックサービス(RTS)」も設立。矢野代表が「特にガラスに関する知識・技術はその人がいたからこそ」と語る今は亡き師の想いを継いだ形で、岡山県にある自社工場でコーティング剤や研磨剤といった各種ケミカルを製造・販売しています。
中でもプロの間で重宝されているのがヘッドライト復元キット「ヘッドライトリファイン」。プロ用にマニュアル化された劣化確認と研磨・クラック除去手法、復元・保護を図る独自の蒸着溶剤は、くすんだライトをキレイに蘇らせて長く維持できるとして前述の通り全国のショップで使用されています。このほか、ガラス用の研磨剤・パットやプロショップ向けの純水設備、さらには純水に関する知見から生まれた除菌・抗菌剤の銀イオン水など、様々なプロダクトを開発、全国のプロショップや商業施設に導入されています。
自社での施工だけでなくプロ向けの資材開発・販売まで一手に取り組む矢野代表。「自分は無類のクルマ好きでもディテイリングの仕事が特別好きというわけでもない」と自身の仕事観をぶっきらぼうに言い放ちます。
一方で、油分で誤魔化さずボディを磨き上げたいと開発した水性研磨剤、地元の産業用水処理装置メーカーと独自に掛け合って業界でも早くに取り入れた純水洗車、ケミカルと磨き方を掛け合わせたアプローチで劣化再発を防ぐヘッドライト復元剤など、これらは全て既存のプロ用資材に満足できなかった矢野代表が、クルマをキレイにする術を一心に追求した結果生み出したプロダクト。素材成分から作用・効果、その検証に至るまで積み重ねられた思考・試行錯誤はプロの中でも稀有なレベルで、同氏の並々ならぬこだわりの表れともいえます。そんな製品に限らず、センス良くドレスアップされた積載車や、デッドニングやレカロシート、ボディダンパーなどで快適仕様に仕上げられた社用ハイエースだけを見ても、同氏の「好きじゃない」という言葉が額面通りでないことは明らか。「価格を超えた過剰なサービスもしないけれど、お金をいただく以上はその価格で最大限に満足してもらう、驚いてもらえる品質を提供したい」とも語る矢野代表の矜持はまさに“プロ”を感じるもので、ディテイリングショップながら特定整備に対応することも同氏にとっては特別なことではないことが窺えます。
なお、20年の特定整備制度の施行以降、従来から行っていた作業に限り未認証でも継続作業できる経過措置が設けられていましたが、それも24年3月で終了。4月以降は対象車両の作業に関しては認証工場で行うことが定められています。
洗車やコーティング、カーフィルム、プロテクションフィルム(PPF)など直接的には特定整備を行わないディテイリングサービスが多いものの、パーツ脱着してのラッピング・スプレー式プロテクションを施工していたり、カーセキュリティなど電装品の取付を得意とするショップなどでは徐々に認証取得ショップも増え始めてきています。車両が高度化し整備制度も変わった今、ディテイリングサービスにおいても自身のクルマや作業内容を預け先ショップに確認してみてみてはいかがでしょうか。
ショップ名 | フィット |
住所 アクセス | 〒341-0027 埼玉県三郷市笹塚30 首都高速/常磐自動車道・三郷IC東出入口より約2.5km 外環・三郷西ICより約2.0km JR三郷駅より徒歩約22分 |
電話番号 | 048-952-6584 |
営業時間 | 火~金 10:00~19:00 土日祝日 9:00~18:00 |
定休日 | 毎週月曜日・第1、第3火曜日 |
ウェブサイト | https://www.fit-net.co.jp |