高価だけど無二な魅力も! スプレー式プロテクション…ソフト99ASセミナー

ソフト99オートサービス・スプレー式プロテクション・ワークショップ
PPF・ラッピング

ソフト99オートサービス(甲斐康之社長、大阪府大阪市)は11月18日、東京営業所でスプレー式プロテクション2商品を紹介する事業者向けのワークショップを開催しました。スプレー式プロテクションは、鈑金塗装ショップなど本格的な設備環境下でのみ施工できるボディ塗装保護用の特殊塗料。貼るタイプのプロテクションフィルム(PPF)を中心にプロテクションの市場が広がり始めている中、ワークショップでは実際の施工実演も交えてスプレー式ならではのメリットがアナウンスされました。

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    セミナーで紹介されたスプレー式プロテクションのSPPF

仕上がりも剥がしもキレイ! カラーチェンジも

それぞれに特性を持つフィルムタイプ(PPF)とスプレー式プロテクション。施工した時の機能面のほか、技術者が取り扱う上での違いも大きくあります。愛車に施工するカーオーナーにとって気になる機能面では、スプレー式プロテクションには大きく2点のメリットがあります。

1つは、複雑な形状でも継ぎ目なく施工でき、また施工後は塗装面と同様研磨ができるため、とにかく「美しく仕上がる」ことです。
PPFでは、フィルムの元に戻ろうとする力が作用するため、凹凸やエッジ部などではカットしたり分割して貼る必要があり、無理して1枚で貼ると後々の浮きや剥離のリスクに。また、PPFでも微細キズを復元する自己修復機能を有するタイプが主流ですが、深いキズやシミなどが付着した場合は復元が難しく、キレイさを取り戻すためには貼り替えざるを得ないケースも出てきます。
その点スプレー式は、液剤を塗布するためパーツ形状の複雑さに影響されることなくキレイな保護膜を形成可能。加えてトップコートはウレタンクリアで、研磨で軽微なキズやシミなどを磨いて除去できるのでキレイなボディを長く維持することができ、またマットクリアをトップコートに施せばマット仕上げにもできます。

そしてスプレー式プロテクションのメリットの2点目が「剥がしやすさ」です。
PPFなどの粘着剤で貼り付けるフィルム、とりわけ塩化ビニル素材のラッピングフィルムでは、紫外線などによる劣化が著しく進行してしまうと剥離が困難となるケースも。粘着剤ではなくプライマー塗料を使って塗装面への定着を図るスプレー式では、一定期間後に剥がそうとした際にPPFに比べて糊残りや塗膜剥離のリスクを抑えられるといいます。

加えてスプレー式では、ベース層とクリア層の間に好きなカラー塗装を挟むこともできます。
PPFでもカラータイプは徐々に増え始めており、ラッピングであれば塗装では再現できないデザインも演出できるほか、ラッピングの上にPPFを重ねることでカラーと保護の両立も可能。なのでカラー塗装できる点はフィルムに比べた絶対的な優位点とはいえませんが、フィルムのカラーバリエーションが限られる中で「保護と好きな色への変更を両立」できる点は、前述のメリットに加えた大きな魅力の1つです。

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    施工後のトップコート層は研磨可能
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    耐候性に優れ、剥離時のトラブルリスクが少ないというスプレー式プロテクション

専門技術・設備に脱着も必要…施工費は高め

一方で、フィルムタイプと比べてのデメリットも。特に施工価格が高い傾向にあることはカーオーナーにとってはネックとなるポイントです。

スプレー式プロテクションは先進的な特殊塗料のため、塗装経験を有する職人でも専用の講習を受けなければ取り扱えません。また鈑金塗装工場に設置されているような温度管理のできる塗装ブースなど本格的な設備も必須。加えて施工時には、塗装と同様にパーツを脱着する必要があります。そうした作業工賃なども含まれる結果、現時点ではフィルムタイプに比べて施工価格が高い傾向となっています。
ソフト99ASが自社サイトに掲載する参考価格の一例を見ると、
800〜1600万円クラス・LLサイズ(14.0〜17.7㎡未満)では以下の通りで、PPFに比べて約4割高い施工価格となっています。
・PPF(ベーシッククラス)▶️フロントフル:43万1200円〜、フル施工:172万4800円
・スプレー式プロテクション▶️フロントフル:60万3700円〜、フル施工:241万4700円
※2023年11月現在。消費税込み

またこれらに関連して、全国的に見ると取り扱いショップが限られる、車種によってはパーツ脱着後のセンサー類の再調整も必要、施工納期が長くなってしまう可能性もある、といった点もサービス検討時には留意しておきたいところ。カーオーナーによってはパーツ脱着自体に心理的抵抗を持つ人もいるかもしれません。

ちなみに肝心の飛び石などからの保護性能は、スプレー式もPPFもおおよそ同等の膜厚のため大きな差はないとのこと。ただ、粘着層を持たないスプレー式は飛び石などの衝撃が加わった際、保護層が塗装面から浮いてしまい、衝撃箇所が白く目立ってしまうそうです。
そういった衝撃が加わっても塗装面自体へのダメージは抑えられている場合が多く、あくまで見た目の美観上の問題で、ボディ同色のカラー層を挟むことでこの衝撃箇所を目立たせなくすることもできるとのこと。ただ、標準のクリアタイプのスプレー式では、PPFよりも衝撃箇所が目立ちやすくなってしまう可能性があることは押さえておきたいところです。

それでも、「とにかく継ぎ目などなく美しく保護したい」「長く保有したいから剥離時のトラブルリスクを抑えたい」といったカーオーナーには、フィルムタイプでは代替しづらい魅力を持ったサービス。ポルシェ911やメルセデスベンツ・Gクラスなどの高級車オーナーやカスタム嗜好の強いカーオーナーなどからの問い合わせ・施工依頼は増えてきているそうです。

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    塗装の専門技術・設備やパーツ脱着が必要で、DIYはもちろんディテイリングショップでも取り扱いは難しい

技術認定を取得した塗装工場は拡大中

今回、業界での代表的なスプレー式プロテクションとしてワークショップで紹介されたのは、フェニックスジャパン(大阪府堺市、佐藤智広代表)が提供する「Fenix ScratchGuard(スクラッチガード)」とジェットストローク(千葉県鎌ヶ谷市、佐々木裕一代表)が提供する「SPPF」の2商品。

両商品の施工に加えて事業者向けの販売・講習を手掛けるソフト99AS担当者によると、「海外塗料に似た性質のフェニックスと国産のSPPFという違いはあるが、肌感やマット度合いなどが決まってしまっているフィルムとは異なり、塗り方次第で仕上がりを調整できるため仕上がりという点では両商品で大きく差がない印象。どちらかというと規定の塗装回数・手順による作業工程・時間の違いの方が大きい」とのこと。
なので、カーオーナーがスプレー式プロテクションを検討する際でも、「どの商品」ということよりも、まずはどちらかの最寄りの取扱ショップを探してみる方が得策そうです。

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    セミナーで紹介されたスプレー式プロテクションのFenix ScratchGuard

特に近年は、先進安全自動車(ASV)の普及などを一因とする交通事故=修理の減少も相まって、鈑金塗装ショップでも修理だけでなく今回のようなスプレー式プロテクションやコーティングなどディテイリングサービスを拡充させているショップも増えてきています。フェニックス・スクラッチガード、SPPFともにそれぞれ独自に取り扱い認定制度を設けており、各社の公式ホームページから認定施工ショップを探せるので気になる人は一度覗いてみてはいかがでしょうか。

▶︎Fenix ScratchGuard認定施工ショップ一覧
▶︎SPPF認定施工ショップ一覧

CARDE編集部

90年代前半から東京都下でショップを営むプロディテイラーと元業界紙記者のコンビ。“現場のリアルな視点”と“客観的な情報編集力”でカーユーザー第一の情報をお届...

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