まだ伝わり切らない「コーティングの魅力」を多角的に発信…施工店紹介サイト「arinomamaプロ」開設

海外ディテイリングブランドのECセレクトショップ「arinomama(アリノママ)」を運営するinsieme(インシエメ/千葉県千葉市、佐久間陽平代表)は7月31日、新たにプロ施工店の紹介サイト「arinomama PROFESSIONAL(以下arinomamaプロ)」をオープンしました。arinomamaで販売する各ブランドの特性や取り扱うプロ施工店を一挙に掲載。高級な英国セラミックコーティング「GTECHNIQ(ジーテクニック)」を筆頭に、様々なプロ用コーティングの強みが掲載され、カーオーナーは自分にあったコーティングブランド・施工店を探すことができます。
insiemeは、2021年にジーテクニックの日本総代理店としてスタート。現地で実績が豊富な海外ディテイリングブランドを中心に、プロ・一般向けそれぞれの取り扱い商品を拡大し、23年12月にECショップ「arinomama」をオープン。ブランドラインナップはプロ・一般向け合わせて20以上におよび、多彩なデザイン観やブランド性を楽しめる商品群、またその独自性は、自動車用コーティングとして後発のサービスながらプロ・一般消費者ともに高い支持を集め、急成長を遂げています。
さらに25年3月には、東京都足立区に直営の施工ショップ「arinomama Tokyo Base(トーキョーベース)」もオープン。一般カーオーナーを対象とした施工を手掛けると同時に、販売商品の検証や撮影を行うなど、マーケティングの拠点も兼ねています。
物販(事業者・一般向け両方)と施工という多角的なアプローチを通じ、コーティング事業を伸長させる同社。その背景には、カーコーティングが広く根付いた今だからこその需要も見え隠れします。
多彩なセラミックコーティングのブランド群
arinomamaでは現在、プロ施工者向けコーティング剤として主に以下のブランドをラインナップしています。
- イギリス:GTECHNIQ(ジーテクニック|認定制、ハイエンド)
- ドイツ:servFaces(サーブフェイス|認定制、ミドルクラス〜)
- ポーランド:Ultracoat(ウルトラコート|一部認定制、ミドルクラス〜)
- ドイツ:Nanolex(ナノレックス|特殊な施工性、艶・疎水性重視)
新サイト「arinomamaプロ」は、このメインの各ボディコーティングのほか、レザーコーティングやPPF(ペイントプロテクションフィルム)専用コーティングなどもカバーし、ブランド・地域別に施工店を検索できる仕組み。京都府のビーパックス(ジーテクニック)や兵庫県のkirameki(サーブフェイス)など施工店のインタビューも掲載し、プロ目線での各ブランドのオススメポイントも解説しています。
先行して展開し始めたジーテクニックは、現在全国に約50軒が認定施工店として登録。ブース照明や空調、施工実績など一定の認定要件を設けており、施工価格面でも最上位メニューに設定するショップが多いなど、arinomamaでもフラッグシップに位置付けているブランドです。その後に輸入販売し始めたサーブフェイスも、1層の優れた施工性と高い品質のバランスが魅力。ジーテクニック認定店を中心に、コスパの高いコーティング剤として拡大しています。
他方、24年から販売をスタートし、「ここ1年でもっとも急成長したブランド」(佐久間代表)というのがポーランドの「ウルトラコート」。出張作業での使用も含め、施工環境を問わない優れた施工性が特徴で、現在では70軒超の施工ショップが登録されています。
もちろん、支持される要因は施工性だけではありません。昔から重視される撥水性や、近年評価されやすいスリック性(スベスベ感)といった施工後の品質も高い評価のポイント。中でも、佐久間代表が「実質的なコーティングの耐久性に値すると思う」という耐薬品性の高さも、人気の理由の1つと見ています。
耐薬品性が引き出すコーティングの真価
arinomamaで扱う海外製コーティングは、全てセラミックコーティング。従来、日本で親しまれてきた「ガラスコーティング」とは異なる呼称ですが、佐久間代表によると「言語的な呼び名の違いに基づくもので、成分や性能の差で一律に区分できるものではない」と説明します。
その上で販売する各ブランドについては、「『セラミックコーティングだから』というわけではないが、ジーテクニックからウルトラコートまでいずれも薬品耐性が高い。 酸性雨や融雪剤といった汚れのほか、施工後のメンテナンスで使う酸性・アルカリ性の各種クリーナーにもしっかり耐えられる」とその強みを明かします。

そもそも、各種クリーナーを使ったメンテナンスはなぜ求められるのか。佐久間代表は、「今でも、『コーティング後は水洗いでOK』といったサービスの謳い文句やユーザー側の認識は根強い。もちろん、汚れが落ちやすくなるので完全なウソとは言い切れない。ただ、それでは例えどのような高性能なコーティング剤でもウォータースポット(水シミ)を防げない。定期的に酸性クリーナーなどを使うことで、水洗いやシャンプーだけでは落ちない水シミの元を除去できる」とその必要性を解説します。
一方で、「耐薬品性の低いコーティング剤の場合、クリーナーでコーティング被膜も除去してしまうことがある。いくら『長い耐久年数』を謳っていても、クリーナーを使わなければ水シミの発生は避けられない。『被膜は残っています』といってもキレイでない状態では、カーオーナーからしたら満足できない」と佐久間代表。
佐久間代表が「耐薬品性が実質的な耐久性」とするのも、こうした施工後のケアを含めた理屈に基づいています。
toB、toCの両面で促す施工後メンテ…開拓目指す潜在需要
「施工後のメンテナンスが大切」は、海外製のセラミックコーティングが台頭する前のガラスコーティングの世界でも言われ続けてきた言説でもあります。ただ、佐久間代表の「水洗いでOKの認識が根強い」という言葉の通り、例えば年に1回の施工店でのメンテナンスや、毎月のカーオーナー自身でのセルフケアが根付いているとは言い難い状況です。
その中でarinomamaでは、施工店、一般消費者それぞれへの物販を通じ、施工後メンテをサポートしています。
新潟県の施工店では、施工時のコーティング剤に加え、顧客に手渡す施工後のメンテナンス剤でもウルトラコートやナノレックスの酸性のシャンプーやクイックディテイラーを採用。雪や融雪剤(塩化カルシウム)にさらされる地域柄、特に施工後メンテナンスの重要性が高く、海外製の高品質なカーケア用品を通じてカーオーナー自身によるケアをサポートしています。
この一般カーオーナーが直接使えるカーケア用品の幅広いラインナップも、arinomamaの強みの1つ。事業者向け(toB)と消費者向け(toC)それぞれで豊富なディテイリングブランド・用品を取り揃えており、コーティング施工後の手入れに最適なクイックディテイラーをはじめとした多彩なカーケア群は、こだわりを満たす嗜好性や楽しさという付加価値をもってセルフメンテを促しています。
佐久間代表は現在のコーティング市場について、「ジーテクニック認定店のような設備・実績が充実する専門店が、今後爆発的に増える見込みは薄い。また一般のカーケア市場も、コロナ禍以降に巣ごもり需要を追い風に受けていたが、競合製品が増え、アウトドアさながら一過性のブームとして落ち着きつつある様子」と冷静に分析。
その上で自社事業の展望について、「ただオートアフター業界全体で見たら、耐薬品性に優れたセラミックコーティングや、より輝きを維持できる施工後メンテのことは、まだ全然認知されていない。逆にいうと、その魅力を知ってもらえる余地は大きい。洗車マニアや実績豊富な施工店では一巡した需要も、例えばオートサロンに来るようなカスタム寄りのクルマ好きや、新規参入したディテイラー、整備、自動車販売、鈑金塗装といった隣接事業者に目を向ければ、まだまだその魅力を届ける余地がある」と潜在需要の開拓に意欲を示します。
実はコーティング施工が抱えるジレンマ…
今や定番の「ガラスコーティング」が普及し始めて20年以上、その前のポリマー時代を含めると、コーティングが身近なカーケアとなって30年近くが経ちます。そして、広く普及したからこそ浮かび上がる「施工後のメンテが行き届いていない」という実態…。
実はこの背景には、コーティング施工というサービスが抱える1つのジレンマがあります。コーティングは、「どのぐらい持つのか」という質問が絶えない程に「耐久性」が重要視されるサービス。一方で施工店の収益モデルは「新規の施工」が収益の柱で、佐久間代表も「施工後のメンテナンスは、作業時間に対して収益性を高く設定できないことが多く、それも施工店が施工後メンテに注力しにくい要因の1つ」と分析します。つまり、本当に長持ちしてしまうと事業者側の収益を圧迫してしまうという、カーオーナーと施工店側で利益が相反する構造を抱えているのです。
このカーオーナー(消費者)と施工店(事業者)の利益の二律背反は、施工店にコーティングを卸す業務用コーティングメーカーも同様。適切な施工後メンテナンスが施され、謳い文句通りに5年、7年と長期に美観が維持されてしまうと、施工店も液剤メーカーも収益柱(新規施工)を減らしてしまいます。その業界の構造上、事業者側は「コーティングは普及しても施工後メンテナンスは普及してほしくない」側面も持ち合わせているといえます(個々の施工店のスタンスは別として)。
そのようなジレンマを抱えるカーコーティング。一見、鮮やかな海外ブランドを揃えて華美に見えるarinomamaですが、事業者・消費者の両方を顧客とする同社だからこその多角的なアプローチには、このジレンマを打破してカーオーナーの高い満足度に貢献したいという誠実な想いが見受けられます。
ちなみにコーティングをはじめとしたカーケアでは、長い歴史とマニアックな世界ゆえに常日頃から「こうあるべき」論も局所的に繰り広げられがち。一方で、「洗車や美観をどう楽しむかは所有者の自由。アリノママにカーケアを楽しんでほしい」(佐久間代表)というのがarinomamaの事業名称の由来。
昨今では、新たなカーケアとしてペイントプロテクションフィルム(PPF)も台頭中。arinomamaの中には、近々でPPFを販売予定のブランドもあるようで、今後もカーオーナーの満足を最優先に柔軟な事業展開を続けていくそうです。