ラッピング、プロテクションの熟練ショップはこんなフィルムを使っている! 大会上位者の御用達ブランド…『JCWA News』より

日本カーラッピング協会(JCWA、苅谷伊会長)が2025年4月に発行した会報誌『JCWA News vol.3』にて、『大会上位ショップに聞いた。使っているフィルム、使っている理由』と銘打ったコラムが掲載されました。ラッピング(WRP)、ペイントプロテクションフィルム(PPF)それぞれの施工技能を競う大会で、過去に優秀な成績を収めたショップ6軒(WRP3軒、PPF3軒)の普段メインで使用しているフィルムブランドとその理由をまとめた内容。
現在、国内・海外製合わせて数えきれない程のフィルムが流通していて、少しインターネットで調べただけでも大手・有名どころからマイナーなものまで色々なメーカー・ブランドが出てきます。貼るプロ施工者はもとより、愛車に貼ってもらうカーオーナーとしても「どんなフィルムがいいの?」というのは気になるところ。それぞれの選択の理由とあわせ、熟練プロの回答を参考にしてみてはいかがでしょうか。
「施工性」ではなく「仕上がり」を追求…6ショップの回答
【WRP部門1】G-Meister(ジーマイスター/ヤマックス)
- メインの使用フィルム:オラフォル(グロス)/エイブリィ・デニソン(マット)
- 月々の施工台数:約30台(内ハーフやフルは約10台)
神奈川県厚木市にあるラッピング専門店ジーマイスター。現在は退職していますが、長年在籍した川上裕貴氏(施工歴約10年、関連記事:ラッピング施工で掴んだ「日本一」と「家庭」…ジーマイスター川上裕貴)は数々の競技会で優勝。世界大会でも上位の成績を収めるなど、フィルム施工において国内の絶対王者として君臨していました。
その川上氏を育て輩出したジーマイスターでは、ラッピングでは主にオラフォル社の「オラカル」シリーズを使用することが多いとのこと。同じ塩ビ素材の自動車用ラッピングフィルムの中でも厚みがあり、接着層で起こりうるトラブルが表面に出にくく、結果的にグロス(光沢あり)カラーではキレイに仕上がるそうです。
【WRP部門2】リンダファクトリー
- メインの使用フィルム:テックラップ(グロス)/オラフォル(マット)
- 月々の施工台数:約30台(内ハーフやフルは約10台)
大阪府門真市にあるリンダファクトリーは、代表の林田優希氏(施工歴約18年)が数多くの表彰台・入賞実績を誇るほか、若手スタッフのトレンゴブ海氏も上位常連で直近の第2回全日本カーラッピング選手権では優勝するなど、競技会の強豪ショップの1つ。WRPだけでなくPPFの競技でも好成績が多く、一般カーオーナーのほかディテイリングショップなど同業プロからの施工依頼も多いなど、WRP・PPF問わず関西圏でフィルム施工の受け皿となっているショップです。
リンダファクトリーでも、同じく「材料のキレイさ」を重視してフィルムを選択。グロス(光沢あり)の「テックラップ」は、キレイな表面で近年使用するプロが増えているブランド。マットはジーマイスターと同様にドイツの老舗ブランド「オラカル」を使用するケースが多いとのこと。また、カラーPPFの取り扱いにも積極的で、ルーフやボンネットなど劣化が激しい箇所では塩ビ素材のWRPに代わってNKODAなどのカラーPPFを提案することも多いそうです。
【WRP部門3】LAPPS(ラップス/ワイエムジーワン)
- メインの使用フィルム:スリーエム
- 月々の施工台数:約20台(フリートなど含む)
カラーチェンジ・フリート(企業広告)問わず多数のラッピングを手掛ける東京の大手施工ショップLAPPS。同社で施工や技術講師を手掛ける施工歴約26年のベテラン岡部和彦氏は、直近で開催されたWorld Wrap Masters(WWM) JAPAN 2024で川上氏を押さえて日本人最上位、25年5月にドイツで開催されたWWM EUROEでも同じく日本人最上位の3位に輝きました。
そのLAPPSでは、大手フィルムメーカーである「スリーエム」の販売店ということもあり、施工でもメインはスリーエム。施工者の岡部氏の視点では、仕上がり含めて基本的なフィルムの品質が安定して良好とのこと。伸縮性やヒーティングなど適切に貼り上げるには、プロとしての相応の技術が必要とのことですが、逆にスリーエムのフィルムを扱える技術があれば他社製フィルムもしっかり貼ることができるそうです。
【PPF部門1】P-Factory(ピーファクトリー/いのうえ)
- メインの使用フィルム:レジェンド
- 月々の施工台数:約30台(内フル施工5台)
神奈川県愛甲郡のPPF専門店ピーファクトリーは、JCWA主催の第1回全日本PPF選手権で同社在籍の若手女性施工者・井上睦基氏(施工歴約6年)が見事優勝を飾りました。ショップ代表の井上徳広氏は、協会やメーカーなどでのPPF技術講習の講師も務め、自社で海外メーカーPPFの輸入販売も手掛けるなど、業界内で師と仰ぐ人も少なくない国内PPFシーンのパイオニアの1人でもあります。
同社で現在メインで使用しているのは、自社で輸入販売するアメリカ製の「レジェンド」。柔軟性・粘着性に優れキレイに巻き込むことができ、マットタイプはその質感も特徴。艶感を追求する場合は同じくアメリカ製の「フレックスシールド」と使い分けていて、いずれも施工後の仕上がりを最優先して追求した結果のフィルム選択とのことです。
【PPF部門2】Rocky shore(ロッキーショア/フリーランス施工者)
- メインの使用フィルム:エクスペル
- 月々の施工台数:約9台(内フル施工2台)
第2回全日本PPF選手権で前回覇者を押さえて優勝した磯真仁氏は、東京周辺でPPFやラッピング施工を手掛けるフリーランスの技術者。PPF施工歴は4年程ですが、元々は大手の鈑金塗装・ディテイリングショップで鈑金の仕事に従事しており、現在は各種フィルム施工にペイントレスデントリペアとマルチに活躍しています。
磯氏の場合、サポートに入る元請けショップでフィルムを決めているケースが多いとのことですが、施工数が多いのはPPFのリーディングブランドである「XPLE(エクスペル)」。エクスペルの特徴であるプレカットシステムのカットデータ精度と実際のフィルムの相性が良く、PPFブランドが乱立してきた今なお、その魅力は健在とのことです。
【PPF部門3】アーネストワークス
- メインの使用フィルム:エクスペル
- 月々の施工台数:約30台(内フル施工10台)
前述の磯氏も施工をサポートすることがある神奈川県川崎市のPPF施工専門店アーネストワークス。施工歴10年、代表の田中文太氏は、第3回全日本PPF選手権で悲願の初優勝を果たしました。youtubeなどでの情報発信にも精力的で、業務のほぼ全てが一般カーオーナーからの施工依頼というのも特徴のショップです。
そして同社のメインフィルムも、磯氏と同じく「エクスペル」。理由も同様にプレカットデータの精度の高さを挙げています。加えて同社では、ミドルラインとして海外から直接輸入した自社オリジナルブランド品も扱っており、顧客の要望・予算に応じてフィルムや施工方法を使い分けてサービス提供しています。
やっぱり製品ブランドよりお店選び?
『JCWA News vol.3』では、あくまで協会会員(プロ施工者)向けではありますが、上記のショップからの回答について「全ショップともに挙がっているブランドしか扱わないのではなく、顧客ニーズやシーンに応じて複数ブランドを使い分けています。その上で回答を見てみると、『施工性(編集注:貼りやすさなど)』への言及は少なく、顧客満足に繋がる『仕上がり』を重視している傾向が窺えます。逆に言うと、顧客ニーズに適するのであれば施工性は二の次で、特性の異なる様々なフィルムに対応できる“技量の幅”があることの裏返しかもしれません」と誌面に記しています。

愛車へのフィルム施工を検討する際、有名な大手メーカーや知人から聞いたブランドなど、つい貼るフィルムブランドを気にしてしまうことも。
ただ、愛車の形状・塗装面や望む仕上がり、予算によって適切なフィルムは異なり、一律に「このメーカーなら」とはならないのが現状。さらに特にペイントプロテクションフィルムは、今まさに激しい開発競争が世界中で繰り広げられている真っ只中で、耳慣れない新興メーカーから良い製品が登場したり、数年前までは良品とされていた製品が使われなくなったり、というのも施工者の間では珍しくありません。
その中で情報が限られるカーオーナーが、「このフィルムブランドがベスト!」と決め打ちするのはなかなか難しいもの。大会上位ショップのような「色々なフィルムを使い分けられる技術があるショップ」を選んで相談するのが、自身の望む施工への近道といえるかもしれません。
ちなみに『JCWA News』誌面ではもう1点、大会上位ショップの「施工台数の多さ」にも言及。各社の回答台数はあくまで目安数値としながらも、「高い技量の裏には、『年数』よりも高い『頻度(反復性)』があるように見受けられます」と評価しています。技術の習熟には高い経験=施工量が不可欠な一方、同じ“プロ”の間でもそこには差があるようで、大会上位ショップはプロの中でも抜きん出た施工量(=台数実績)を誇っている模様。ショップ選びに困ったら、どのぐらいの頻度でWRP・PPF施工を手掛けているかという実績も1つの参考になりそうです。